第6話 マスカラ

 今日もアヤちゃんはミーティングギリギリまでマスカラを塗りようようざ。


 アヤちゃんの武器は、一目瞭然。


 群を抜いたスタイルやの。ほっせえ。長ぇ。


 そんで、目ぞ。


 ちいせえ目の周りまつ毛ビッシリで、子犬みてえざ。


 かわええの。


 お、目が合うた。ニッコリ笑いよう。


 かわええの。


 ほん、水商売なちするようには見えんざ。


「もう慣れた?」


 だ! 話しかけよる。


 小学生みていな、かわええ声じゃ。


「ずー、だいぶ」


「私オープンから3時間しかいないから、話す機会ないよね」


 笑いよう。


「3時間?! んな短ぇんけ!」


「うち親が厳しくて、大学生なのに門限10時なのよ。だから9時で上がらせてもらってて」


「ほえー、大変ずなあ」


「他のバイトじゃ3時間くらい働いても全然稼げないからね」


「それで、水商売けー」


「ん? ユイちゃん、ノーメイク?」


「ファンデーションはしちょ。アヤちゃん、マスカラ好きざなん」


「あー、やり過ぎかなと思うんだけど、マスカラしっかり塗れてないと落ち着かなくて」


「マスカラ塗ると落ち着くけ、塗っとんのんな」


「ユイちゃんみたいにノーメイクでそれだけかわいかったらいいねえ。羨ましい」


「いやーもうだうだすん、なんす。10代と美貌対決すんだチャレンジ精神なんじ、なんす!」


「えっ……ええ?」


 聞き取れんかっちようざ。


 まあええら、たいしたこたーゆうとらん。


「マスカラ、持ってないの?」


「ねえざ。んだめんどくせ」


「あげる」


 アヤちゃんが、わちゃにマスカラを差し出しんずだ。


 反射的ち受け取っちゃが。


「絶対もっとかわいくなるよ! 使ってみて」


「え、でもアヤちゃん、オープン前にもう一回マスカラ塗りようざん」


「私ポーチにあと5個入ってるから、大丈夫!」


「5個?!」


 ほん、大好きなんざやあ。


「ほな、ありがたくもらいよす。ありがとうざ、アヤちゃん」


 アヤちゃんは、またニッコリ笑ろち。


 かわええの。


「ミーティング始めまーす」


 あ、エミリさんが来ち。


 アヤちゃんからもろけマスカラを、急いでカバンげ入れに走りよう。

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