カラスとユリの花

@Huwan

第1話 その花の色は

『これは昔のお話。

とあるお城の王女様が1人の騎士に恋をしました。


その騎士は、黒く、気高く、とても強欲な者でした。

王女の周りにはいつも、品の良い綺麗な背広を着た男ばかりいたもので、王女にとって騎士の男はとても珍しい存在でした。


そして、王女が騎士に恋をして

10年程たったころ。騎士も王女の気持ちに応えるように

王女のことを好きになりました。


それから2人は────────。』



―――――――――――――――――――


「おばあちゃん、続きは?」

「ごめんねぇ、ここまでしか書いてなくてのぉ…」

「えぇー!!気になるよぅ!」

「大きくなったら、新しい本を買ってあげるよ」

「本当…!?やったー!」



7年後…。


ピピピピ…ピピピピ…

耳に痛い音で目覚める。

「んぁ………っるせ…」バシッ


瀬戸 恋 17歳

恋って書いて、『れん』って読むんだぜ

母親の可愛い名前がいいという意見と

父親の男の子らしい名前がいいという意見で

こういう名前になった。(らしい)


「ふぁ〜……まじ眠い……」


今は一人暮らしをしながら

ごく普通の男子高校生をやっている。


こんな平凡で穏やかな日常が結構好きで

ずっと続けばいいのにと思っている。


この日までは……




「いってきまーす」ガチャ

「お、恋おはよっ」

「おー要おはよぉ」


こいつは伊澄 要(いずみ かなめ)

昔から家が近く、よく遊んでた、幼馴染ってやつだ。


「なぁなぁ!昨日渡したヤツ見たか?!」

「へ?…あぁ、あのいやらしいビデオか」

「いやらしいって言うなよ。れっきとした思春期男子が見るものだぞっ」


なにドヤってんだよ。

生憎、俺はそういうの興味無いんで。


「…で、あの場面がめっちゃエロくてさぁ…」

「アーハイハイヨカッタデスネェ」

「あからさまに興味無い感じ出すんじゃねぇよ」


いや実際、興味無いし。

てかお前の性癖深すぎてよくわからん。


「…………なぁ恋」

「?なんだよ…静かになるなよ気色悪い…」

「お前って…………顔可愛いよな」

「は!!??」


おいおい、ついにこいつ頭おかしくなったか?

長い付き合いだけど、こんな手遅れな程になるとは…すまん………要……


「いやいや、無い無いキモいってマジでどうした…………。」

「ちげぇよ!ただお前が女子だったら絶対モテてたんだろうなって」

「へいへい、すいませんね男の姿だとモテなくて。」

「気にすんなよっ」


いや、俺はどうとも思ってないし

お前がこの話の切り口だからな?


俺はあまり異性に興味が無い。

だからといって同性が好きって訳でもない。

だって、考えてみて欲しい。

よく思春期のやつらは、「彼氏」「彼女」を

欲しがる。だがどうだ?何もかも

その相手と行動しなくちゃならないだろ。

もちろん、楽しいなら別だが

俺にはそれを楽しいと思うことができないからこういう考えに至る。

俺は縛られるのが嫌いだ。だから一人暮らしもしている。

全部が俺だけの時間なんだ。こんなに幸せなことは無い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カラスとユリの花 @Huwan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る