序
夕日の光は今まるでハチミツがこぼれたように、真っ白な部屋をきれいなオレンジ色に染まらせた。
光は薄いカーテンを透して、ベットに横にしている珂玲に投射する。それを受けた彼女は次第に目を開いた。
キョロキョロと周りを見回して、どこかで見覚えがあるような天井。
突然、何か気付いたように起き上がった。そうしたら、懐かしい感情が一気にあふれ出した。
(ここはどこ……なんか…先、また誰かに呼ばれた気がす……これ…布団…?)
少しに触ったら、実に気持ち良さそうな布団だった。そこで、珂玲ははじめて気づいた。今の自分が何を着けているということ。先まで着ているコスプレみたいな服装はもう着けていない。代わりに今の自分は着けているのは、灰色の長袖、白い色の袖口、あと襟元のところの薄くて明るい藍染のリボンの組み合わせだった。
(これって…まさかここは……)
未だにはまだ実感がないが、実際、珂玲はとっくに今の状況のことを、だいたい把握していたが、心の中はまだ懼れている。しかし、万が一、これは現実ではないだとしたら、そう思うと、やはり期待しないほうが正しい考え方だ。でも、これの考え方が生じたのも無理もない。
(これは実は夢とか誰かの仕掛けた罠とか、十二分にありえるな…とにかく、確認する前に油断できないわ)
この数年に積んだ経験に、珂玲の楽観的な性格をすっかり変えてしまった。別に、これはいい意味でも悪い意味でもない。ただ、今にはやはり……
珂玲はペットで座ったまま、先に開いたばっかり瞼をまた閉じ込めた。
すると、この部屋の空気の流れや部屋の外でさえ様々なものまで感じている。
(冷静にするんだ…いつも通りでやればいいのさ。)
珂玲は必死にその思いを自分に説得させる。
(感じている。本当にまだ使えるんだ。ってことは…とりあえず、まず、ここは夢じゃないんだね!でも…幻覚の可能性もないわけじゃない…)
一つのことが分かった時、外には誰ものかが通り過ぎた気がする。かつかつの靴音がだんだん近づいている。そして、その音は今、外で止まった。
(誰かを近づけている?)
と思いながら一応戦い姿勢を構えていた。
耳に入たのは久しぶりに聞いた心地よい引き戸を引いた音だった。それに伴っていたのは一人の女性の声だ。
「あら、やっと目覚めましたか。まだ起こさないとしたら、どうしよと思って。」
カーテンの向こうに、聞き覚えがある中年の女性の声は、この小さいな部屋に響いた。
それで、珂玲はついに気付いた。
ここまでは、何度も夢の中で見たあの景色。しかし、いざ目が覚めるとまた消えてしまった。この恋しい部屋の構造、宮廷の高級品でも負けてないベット。
「…帰ってきたの…私…」
白い布団を見つめたまま握りしめた。
パラと。
水がそのまま白い布団に落ちた。そして、だんだん布団を滲んでいく。
(あれ?私、泣いているの?)
珂玲は慌てて袖口で拭きぬいてきた。しかし、右に拭いたばかりに、左の方はまた勝手に流れて続く。しばらくの間、珂玲は同じような動きを繰り返していた。
「綾瀬さん、大丈夫ですか」
カーテンの裏の異常な様子を気付いた女性は、ゆっくりとカーテンを少し開いて、多少驚いた様子のままで珂玲に声をかけた。
「またどかかで具合が悪いの?それともどこかで痛いの?やっぱり両親を呼んで、連れて帰った方がいいの」
心配でいくつな質問を珂玲に聞いた女性は背を少し曲がって、そのままベットの辺りで座って、左の手を伸ばして、やさしく珂玲のとなりから抱きついた。
何も答えないとまずくなっただけと思った珂玲は必死で、首を横に振って、すすり泣きながら、あのまだはっきり発音できない声で返事した。
「…大丈夫です、ただ…よくない夢を…見ただけ…」
「そうですか…それは…」
一安心した女性は珂玲の肩を軽くて叩いて、薄い笑顔を顔に浮かべた。
「それも…よかったとは言えないですね…でも、よかったね、目覚めて。ああ、そうだ、何か食べたほうがいいね!おなかすいたでしょう」
カーテンを開いて、すぐに机に向かって、引き出しをひきながら楽しそうに言う。
「綾瀬さんはお昼ご飯をまだ食べないでしょう、食堂なんて特に休んでいるし」
「えー」
まだ目覚めたばかりのせいか、先から相手が言っていることはひとつもわかりもしなかった。
「晩ご飯の時間まであとちょっとだけど、体力を回復するのも必要からね!とりあえず、これで我慢しましょう」
女性は取り出したのは馴染んでいる青い鉄の箱だ。普段から甘いものは珂玲の目に入らないが、それは甘いものが嫌いではない。ただ、わざわざスーパーにお小遣いを払うまで購入したい程度ではないだけだ。それに、買わなくても、家にも定期的に補充する人がいるから。
「はい、どうぞ!」
「あ、ありがとうございます」
(チョコだけじゃなくてよかった!そういえば、この先生…名前なんだっけ?記憶はまだ曖昧のままで、よく思い出せないけど、大丈夫かな?)
女性に言う通りはおなかすいたか、それとも久しぶりにの味のせいか、好物ではないものなのに、珂玲はサクサクと、すぐに一本のチョコを食べ終わった。
「もう一本はどう」
女性は親切で一本のチョコを取り出して、渡すつもりだったが、さすがに甘いものを次々に食べるとはちょっと食べすぎだと思う珂玲は丁寧に断った。
「そう?」多少がっかりした女性は渡すつもりだったお菓子の包み紙を逆回って、開けた。
「…私も普段ではあんまりチョコを買わないだけど、どこでもも割引きだからね、ついつい買っちゃって…」
「……そう…ですか」どうでもない話しを適当に答えた珂玲は食べ終わったチョコの包み紙を細い棒の形で、リボンのように結んだ。
「綾瀬さんは甘いものは苦手ですね」
「えっ」
「おなかすいたでしょう?それで一個しか食べないなんて…」
「そういうの……」
(あれ?なんか先に似たようなことは聞いていない?)
先まではまったく気づいていないだが、今は思えばいくつ変なところを気づいていた。
確かに今の光線からに考えれば、今は間違いない、放課後だ。どうしてそんなに決めつけた
(どうしよ?聞いたほうがいいかな?それともそのまま家を帰る……いや、帰る前に、はっきり理由を作ってなくちゃん!そもそも、今日何日?仲介屋は多少時間差があるってどれくらいなの!)
「………ん、綾瀬さん」
「…ぁ、はい」
「先からぽっとしてるけど、大丈夫ですか?顔色がちょっと…」
「い…いえ、大丈夫です。本当に」
「そう?先は電話が通じなかったから諦めたけど…もしまだ具合が悪いとしたら、両親を呼んで迎えに来た方が……」
「い、いいです。自分で帰れます」
珂玲は慌てて断ったのは別に親との関係が悪いとかそういうではない。ただ今の状況にまだはっきりしていないからだ。
(なんかこのまま帰ればいろいろバレそうなぁ、母さんに…もう少しでここに休憩しようかな…なんかあっちに残しすぎて、こっちの記憶がもう……そういえば、今は何時だったけ?)
時間を確認するため、珂玲はざっと一周見回った。結局時計を見つけられなかった。本来なら直接にこの保健室の先生に聞けばよほど早いかもしれないが、万が一とっくに下校時間に経っていると気付いたら、そのまま家に帰るとすすめるかもしれない。仕方なく、あちらの世界から持ち帰ったスキルを使うと思いきや、突然一人はともかく、人の目の前にはさすがに無理だと思い出した。それによって、先ほどみたいに感覚を頼るしかないのだ。実際、向こうから帰ってきたとしても、あちらで訓練した敏感さと変わらないことは先はもう確認したからだ。
しかし、どんなに集中しても、外の廊下もグランドの騒音も限られている。つまり、普通の生徒の下校時間からかなり経っていた。
(えっと…今は冬だから、下校時間は二時半だったけ?まずい、あっちに止まりすぎてこっちの記憶はだんだん曖昧になっていた…そういえば、今日の日付はなんだっけー)
いろいろ考えすぎて、もはや本来の目的すら忘れていた珂玲はひたすらにベットの上に座りながら悩みこんだ。ようやか、あることに思い出した。
(ああ!そうだわ!なんでこんな大事なことさえ忘れたの?私は学校に倒れたなら、母さんよりまずあいつに知らせるに決まっているから!)
「あぁ、あの…」そうお思って、珂玲はついに自ら口を開いた。
「うん?」
「あの…私はどうやってここに……」
「ああ、それは綾瀬さんのお兄さんよ」
(やっぱり!)
「私も誰さんから聞いたけれど、確かに昼間に階段の踊り場で倒れて、友達は綾瀬さんのお兄さんを呼んで、そのままここまで運んできたよ」
「そうですか、じゃあ…その後は……」
「うん…そうそう!その後大分落ち着いたお兄さんはしばらく綾瀬さんの隣で付き添って、チャイムが鳴っても中々帰らなかったのよ、いいお兄さんだね」
「…はい」
ここ、珂玲はなぜか久しぶりに感じたことない喜びは今、まるでとろりっとのハチミツのように、こころの底からあふれ出した。珂玲のそのこころを甘いハチミツに満たされたみたいだ。
「ああ、でも…ふふふん。気にしないでね、最初に会った……」
すると、突然に部屋の隅からクラシックの音楽が鳴っていた。ビックリされた珂玲は危うい心臓が止まらんばかりだ。
「あ、もう沸き立ったの?ちょっと待っててね!お茶でいい?」先生は音楽が鳴った方向に向かって、そしてカップを持ち上がった。
「あ…はい」
(はぁ…ビックリした…電気ポットなのか……はぁあ、まさか三年くらいに離れただけなのに、こんなことに驚かすとは…まったく、時代の差って本当に怖いわ!もっと早くこっちの世界に慣れないと…)
「それで、先なんの話をしたっけ?ああ、そうだ!最初に会った時はね、てっきり綾瀬さんこそお姉さんがと思ったの!後から知られて、本当にびっくりしたわ」そう思って、この先生はうらやましそうな顔で口角が少し上に動いて、にっと笑った。
「ああ、そういうことなら…実はそれ、よく言われます。たまに頼らないに見えるかもしれませんが、すごく優しい兄です。」
「あら、そう!いい兄妹だね…ちょっとうらやましくなってきたわ!はい、熱いから気を付けて!」
「あ、ありがとうございます。そういえば、先生って一人っ子なんですか?」
渡されたカップから熱さが伝わった。それと、香ばしい玄米茶のにおいがした。まだ熱いけれど、この懐かしいにおいに我慢できず珂玲は、カップを口元までに届いた。
「
向こうに聞こえないように息を吹きかける様子した。そして、カップのお茶は少しゆらゆらした。カップを支えた手もカップの温度の差が感じて、ゆっくり口元に届いて、口も少し開いた。そして、お茶はゆっくり口の中で流れて、苦みの中に少し甘さという味は舌の全体をだんだんに滲みこんだ。こういう味ではあちらの世界にはいなかった。
「いいえ、兄弟ならいるよ!ただ私は姉で、あっちはかわいくない弟だけ。私も妹になる気分を感じたいなぁ」
「そうなんですか?でも先生の気持ちはよくわかっています」
「そう?綾瀬さんはもうずっと妹になっているじゃない?なぜまた……」
「それは…そうですけど…実はあんまり実感がないっていうか…」
「まぁ…それは、双子ということさぁ。一見あっちが兄で、そっちは妹で、実際はお互いに何も変わらないからさ!まあ、どっちにしろ、誰か先に生まれたかどうか、それはどうでもいい。結局は家族だから、それでいいでさ」
「……そうですね」
「ああ!そういえば…今、もうこんな時間だったの!」女性はなぜか急に浮かない顔をしている。
「なにか…あったんですか?」その暗くなった顔は珂玲でさえ気になってはじめて、思わず聞いたのだ。
そういう聞かれた女性はすぐ元の顔に戻した。ただ、まだ冷静に保つ様子ではなっかた。その証拠は珂玲の言った質問を完全に無視してしまった。
女性は部屋の窓に近づいて、目を細めてキョロキョロして外の景色を見下したり、右の手につけた腕時計をチェックしたりして、居ても立っても居られない状態だった。
「…おかしいわね…」
女性はやっと口に出した言葉はこの一言だった。首を少し傾けて頬杖をついた。
「…ふん、とっくに戻ったはずなのに、ずいぶん遅いわ!いったい何があったのかしら?」
さすがに好奇心を抑えきれず珂玲、ついに女性に声をかけた。
「あの…なにか…あったんですか?」
やっと珂玲の質問に反応した女性はようやく冷静さを取り戻して、壁に向かった椅子を回して、珂玲と目を合った。
「いいえ、大したことはないわ!ちょっと気になるだけ!あ、そうだ!綾瀬さんは兄さんから何かが連絡した?」
「兄さん…のですか」
「ええ、実は…」そう言いながら、女性は机の上に置いたスクールバッグを珂玲に渡しながら、続きを言う。
「実はね、綾瀬さんは倒れた時はお弁当も転んで、地面に散らしたのよ!だから綾瀬さんの兄さんは昼ご飯が食べなかった綾瀬さんのことを心配して、放課後にこのバッグをここに届いたらすぐに外に出たのよ!なんか近くのコンビニで何か食べ物を買っていくって言われたけれど……ほら、今もうすぐ5時でしょう!いったいどこに行ったのかしら?ケータイからなにか連絡がきた?」
カップを女性に渡して、代わりにバッグを受け取った珂玲はさっそくバッグの中を覗いた。中にいるのは普通の学生が皆も持っている教科書やノートだ。それを見た珂玲は再び実感した。今回は本当に元の世界に戻ったということ。
と、その時、珂玲はとっさ、そのノートたちから目を離さなかった。
(待ってよ!今…っていったい、何月だっけ?冬の制服とこの先生の長袖から考えてみれば…11月の後から3月前の月だよね!あとは何かヒントになれるかな?ああ、確かにクリスマスと正月の福袋も引いたっけ?ん…バレンタインのイベントは…まだ…だよね…確か。ん…始まったような始まっていないような…でも確かなことはただ一つ。まだ推しにチョコに送っていないこと。ってことは今はバレンタインの前後だね……いや、なんか違う…なんて私はそんなに日付のことが気になるだろう?まぁ、いいか。スマホを探し続くよー)
そう思って、再び探しいくのだが、ノート見た瞬間、全部のことを思い出した。
(そうだーバレンタインの前後ってことは年末試験も近い…だよね…私の最後に聞いた授業はもう三年前のことだよ、全部も何もかも忘れたよーもう…終わった……)
突然にまるで人生の希望が失った珂玲は、ただひたすらにバッグを見つめるだけ。ただ、今まで向こうの世界で「習得」した成果のおかげで、珂玲はすぐ立ち上がった。とりあえず、帰ったらまた使えるスキルの中で何か使えそうなものを使って、この「試練」を乗り越えると決まった。
それで、探り続いて、やっと薄くて冷たい硬いものにたどり着いた。そこで取り出したのはなんの飾り物もつけていない、普通のスマホだった。
(えっと…パスワード…って、なんだっけ?)
とりあえず思い当たる番号を一回試してみようが、当たらなかった。まさか自分がいつも使っているものはある日に使わないようになったとは、そして、そのまま忘れたとは思わなかった。手に持ったまま待ち受け画面を凝視している。それで、ふっと思い出した。
(…そうだった、確かに…グリス様の名前と私の……そう、その組み合わせだった。)
思い出した珂玲はさっそく番号を入れた。
(はい…よかった、危なかった。こんなに毎日に使ったもの…まさかしばらく使わないとこうなるとは…今度は気を付けない…と……いや、いや。もう今度はないから!もうないよね…でも…一度あることは二度あるよね…確かに怪しいわ!なんで帰ってきたからにはまだスキルなんて使えるの?まさか、これも今度の準備とかじゃないよね……いーや!今度は何を言っても行かないからね!)
「…綾瀬さん?」
「…あ、はい……連絡…ですよね、えっと…ない…みたいですね」
「そうなんだ、うん…いったいどこに行ったのか、綾瀬さんは知っている?」
「そうね、たぶん…何か急用とか…かもしれませんね、例えば母さんに呼ばれて、買い物の手伝いとかもありそうですし…」
「そうか、それもそうよね!」
「…ぁあ、じゃあ…私もこれで…」
「あ!そうだね、もうこんな時間だし…そろそろ帰らないと」
「はい、今日はありがとうございました」
言葉を出すとともに、深く礼をした。
「どういたしまして、帰ったあとしっかり休んでくださいね」
「はい…」
すると、上がったとき、女性の机の上に置かれた鉄の箱をにちらっと見た。
「あの……」
「まだなにか?」
「その…チョコなんですけど……」
珂玲の視線に沿って、女性も自分の机の方向に振り返った。
「あら…やはりお腹が空いたのね!一個、二個持ってもいいんだよ!遠慮しなくても……」
女性は嬉しそうに机に向かって、箱の蓋を開く際に、
「待ってください…」珂玲に止められた。
「え…」少々驚いた女性はこの一言に手を止めた。
「綾瀬さんは食べたくないの?」
「あの…すみません。私はただその…聞きたいことがあるんです」
「聞きたいって、なんのこと?」
「先生はさっきに言ってましたよね、そのチョコって割引きだから買ったって…」
「ああ、そうね。普段なら買わないものだよね…確かに普段もほかのおやつとかも買うなんだけど、これはね!普段じゃ高いよね、だから、割引きしか買わないの!」
「…そうなんですね。確かにこのブランドのチョコはあんまり割引きしないですよね」
「そうなのよ、詳しいね、綾瀬さんは!」
「いいえ、たまたま近くにいた知り合いが好きなだけです…その、どこ………ですか…」
ここ、珂玲の声はなぜかだんだん弱くなっている。
「えっ?なに?」
「そ、そのチョコはどこの店で買っていましたか?」
「ああ、これはね、家の近くのスーパーで買ったの」
「家…ですか……ありがとうございます、では、失礼します」
さすがに初対面の人に家の近くはどの辺に聞くのは聞きづらいと思って、もう一度礼をして、がっかりして出口の方向に向かった。
と、その時。
「綾瀬さん」
「はい」
呼ばれたせいで、珂玲は仕方なく足を止めて、振り返った。
「私は思ったけど、たぶん今週までは、どこの店のチョコでも割引きを始まっていると思うわ!」
「えっ!それは…本当ですか?」
「ええ、全部とは限らないけれど、割引きをしている店もけっこう多いと思うわ!」
「そうなのですか…でも、なぜでしょう?」
「あら、てっきり誰かに送るつもりだと思ったけど…」
「えっ?」
「綾瀬さんだっら、もしかして忘れたの?」
「え?どういうことですか?」
「昨日、バレンタインじゃない?」
「へー」
「だから、そのあとのチョコの値段も徐々下がると思うわ」
女性の話しを聞きながら、珂玲はだんだん笑顔が浮かべた。
「なるほど。ありがとうございます、先生!」
「どういたしまして、気を付けて帰りなさい」
「はい!先生、さようなら」
「さようなら」
嬉しそうに去った生徒を見送って女性は疲れたみたいに、オフィスチェアに座って、天井を見上げった。
「はい、疲れたわ!もともと忙しいのに、またバイトをやらせて!本当にかわいくない弟だわ!にしても、綾瀬珂玲か、いい妹じゃない!」
******************
ガラガラの回廊では、まだ弱くなった太陽の光に差し込んだ。一遍久しぶり入っていない教室に寄っていた。しかし、やはり思った通りに、だれにもいなかった。ましてや一番探したい人の姿も見当たらなかった。
「私の席ってこっち…だっけ?」
そう思って、もう一度先に取り出したスマホを確認する。しかし、先ほどと変わらず、連絡が来なかった。とりあえず、こちらからなにかのメッセージを送ってみようと思った。
「まぁ…帰ろうか!意外にもう帰ったかもしれないね!ああ、先に食べたチョコ買ってあげないと、今日は一応…手伝ってくれたんだからね…」
******************
片づけ中、保健室の電話が突然に鳴った。
「こんな忙しい時に、いったい誰のかしら?」
女性はぶつぶつ文句を言い始めながら、電話のところに向かった。
「はい!仲村です。あら、あんたか?珍しいじゃない、私に電話するなんて。どうしたの、急に?綾瀬さんなら先もう帰ったわよ!」
定期連絡の電話だとわかっているけれど、久しぶりに電話の相手の声に聞こえるだけで,もう十分幸せと感じた女性。ただこの穏やかな時間は決して長くなかった。
受話器の向こうから次の言葉を伝える。その言葉を聞いた女性は突然に力が取られたみたいに、ぽっとしている。
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