第---章 オカエリ
真っ暗なトンネルような空間に、一人の少年は浮いている。
「はぁい…最後はモノポリオだけでよかったな!他の奴らはいい人だけど、暑苦しくて、あのままじゃあ帰らなくなると困るなぁ。早く帰らないと…もう…一年半か」
ふっと、何を思いついたか。少年は先に懐から隠したペンダントを取り出した。
「そういえば、うかつだったな。でもよかった、モノポリオがくれたペンダント。あいつ、こういうキラキラのを一番好きだろう…許してくれると…いいな…」
そう思うと、この「一年半」に溜まった重さから一気に疲れさに変わった。少年は浮いたまま疲れた腰伸びをする。
すると、あることに気づいた。
(にしても、思ったより遅いだな!来る時はあっという間にだったのに…でも、仲介屋に戻る時は逆にしているから、もうちょっと時間をかける…と言われたっ…け…)
突然、頭の中が真っ白になった。
この果ては見当たらない空間で、少年は少し焦っているように見えた。一見、これは先ほどまで「勇者」と呼ばれたるものの振舞いではないが、事実上、これでも冷静に立てるだけで、もう十分に褒められるのだ。なぜなら、原因はこれだけではない。
(この気配は…)
「やあー!お帰り、勇者さま。迎えに来たよ」
静かな空間で、急にもう一人の気配が現した。空間の気温はまるで氷河期の急激な気候みたいに、一気に下がった。
呼びかけを応じて、少年は自然に声の方向に振り返られた。そこにいるのは、黒い霧で全身を被った男の姿だ。顔は霧のせいでよく見えないが、少年ははっきりとわかった。なにせよ、これは忘れもいられない顔だった。
これはつい昨日で会ったばかりのことだったからではなくて、人間ではないと言われたが、目に映ったのはどう見ても人間の姿をしていた生き物だ。にもかかわらず、昨日は自分の手に命を絶った…のはずだった。
少年はしばらく息をするのも忘れたくらいに突っ立てるしかない。本来、この相手はともあれ、自分がやりたくないことをやったの罪悪感、そのわずかな感じがまだこころのどこかで残留している。だから、先、あの忌まわしい声を響いた時、少々ホッとした。しかし、今の状況を説明すれば、つもり任務失敗ということだ。
「お元気そうで何よりだ」男はニヤニヤで少年に近づいた。
「こんな急いでいるみたいんだけど、どこに行くつもり」
「あんたはもう…」
冷静か。それとも愕然すぎて、頭が一時的に回らないのか。どちらにせよ、少年自身も自分の反応に驚いた。昔の自分ならたぶん振り返る勇気さえも出せなかった。どうやら、この一年半の体験はムダで過ごすではない。
「死んだ…なんて言わないでよ、悲しいからさ、ははぁ」
男は一人で自分で酔いしれるうちに、少年はまだ腰にかけた剣を触った。その剣を抜いたとたんに、男はまるで次の動きを読み出せるように、素早いスピードで少年の前にニヤついた。
「残念だな…今のお前じゃオレを勝てないからな」そう言いつつ、少年を抜くつもりの剣を押さえて、その忌まわしい剣を鞘に収めさせた。そして、力を入って片手で少年の首を掴んで空中に上げた。
「なにしろ、この空間はもうオレに奪ったからな!いい仲間できたじゃねぇか」
(仲間…ってどういうこと?……息が…苦しい…)
少年は両手で必死に足掻いて、全力で相手の手を引っ張る。
「ムダだよ!これは『
(宿望者…だと…まさか…)
にわかには信じがたいが、少年は苦しい姿勢でまだ手に握りしめたペンダントをちらっと見た。そうしたら、驚いたことで、ペンダントにあるはずのキラキラ光は知らないうちに、真っ黒ないろになってしまった。
「しかも、今たった一人で、なにをできるかよ」
(…モノポリ…オ、なんで…)
「お前のせいでだいぶんの力が取れたけど…まぁ、いいぜ!勇者の
話しが終わったあと、少年の首に次から次へと霧が巻き込まれ、黒い波紋はその上に刻まれた。
波紋が増えるたびに、男の手の甲にも似たものが出たり消えたりする。それと、波紋が刻まれた時に、頭の中では何かが引っ張られるように、頭は破裂せんばかりだ。
(なんとか…なんとかしなくちゃ……カ…、珂玲———)
ぼんやりの意識で、ぱっと見たのはあの光が失ったペンダントだ。すると、あることを思い出した少年のその死にそうな目は、瞬く間にだけ、意識を取り戻した。口で何かをつぶやきながら残したわずかな力で自由に動ける足は、男の肩を狙って一気に蹴飛ばす。
最後の力を尽くして、やっと距離を作った少年は今、ぴくっとも動いていなくて.空中にふわふわにしている。
この状況に呆れた男は少年のところを飛んでいく。
「まったく、これはいったいなんの意味があるというわ……ん」
少年に近づく時、握られたペンダントはまばゆい光を暗い空間で放たれてきらめいた。次に、その光はしだいに少年を包み込んだ。
男はさっそく飛んで後退ったが、やはり光の速さに負けて、まるでこの空間の外でも聞こえるような大声で「痛ぇなぁー」と叫んだ。。下を見て、膝のあたりは煙のようなもの湧いてきてやがった。その痛さはまるで炎に焼きられたように傷だった。
「この禍々しい光は…いったいどうやって…まさかあれに………チクショウ」
憤った彼はもう少年のことを構うところではない、たちまちに掌を開いて怪我した膝を抱えて座り込んだ。先ほどに少年を苦しめた黒霧が掌の中から湧き上がる。それで、その霧をある程度に集めて、最後はそのまま先で傷つけた膝に置いて、しばらくして、霧はだんだん膝の中に滲みこんだ。
いったい何を起こったか未だに考えつかない。とにかくこの光を抑えなければならない。そう思って、男は再び起き上がった。
「
「このままだと連れ帰れないな…でもまぁ、
「
男の一言でまた大量な黒い霧が分からないところで湧き上がって、まるで自分の意識が持つようにまた少年を包み込もうとしている。
しかし、今回は先ほどみたいにうまくいかないようだ。黒い霧が光を近づくと、光は少年を守りたいように、霧を弾んで返してた。
(なんだと!これはただの
何もできない男はただ立っているまま、両方の「戦い」に目を離さずじっと見るしかない。
(いったいなんなんだい?この勇者…いったい何を…)
怒りに乗っ取られたせいで、胸から熱々な息が今、爆発しそうになる。
この激しい「戦い」で黒い霧は何度でも少年を包み込んだ光を切って、隙間から入るつもりだった。しかし、切るどころか、光を近づくと、霧の色はだんだん薄くなる。そして、そのまま消えてしまった。
一方的にやられたのを見た男はひとまず霧の動きを止めた。霧も男の指示に従って、表す時と同じように、またどこかで消えた。いったん止めたおかげで、ようやく男は冷静さを取り戻した。落ち着いた彼は再び光を凝らして見る。
光は速いスピードで少年の全身を包み込んで、もはや光をしか見えないため、手掛かりなんてを見つかるとはさらに難しくなっていく。その時、目には入たのはあのペンダントだ。一度輝きが失ったペンダントは今、太陽より眩しい光の源になった。
「どうやらただの
まず
しかし、そうだとしたらこれはいったい……
考えれば考えるほどさらに困惑している。このまま放っておくにはいかない。万が一、誰かに連れ去れたら今がやっていることは無駄になる。なぜなら、今の状態では恐らく、自力で目覚めるのは無理のことだ。ただ、治療師がいるとしたら、話しは別だ。しかし、いつまでもたってもここにいるわけいかない。部下たちに任せるのも安心できない。
(いっそ殺す方が正しい選択なのか?確かに今の力でこいつと戦うのは危険なことがだ、でもこの忌まわしい光が輝いている限り、持ち帰るどころか、近づくすらできない。やはり殺すが……)
少し迷うだが、それは少年のことを憐れむそういう感情が抱いているではない。ただもったいないと思っているだけだ。
やっと自分の考え方を整った男は再び少年に近く。決意した彼は迷わず、ずっと大事にしている剣を「呼び出す」。黒く大きな剣。もはや盾になれるくらいでもおかしくないその大きさは、普通な兵士何人を呼んで持ち上げるのも至難の業だ。それと比べて、男は簡単に持ち歩くだけではなく、剣を振る姿勢を構えて、上から振って一気に叩き斬る…
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