第38話 四人目2

 リナ・スピネル伯爵令嬢とエリカの二人の話を聞いているのだが、どうやら転生前の話をしているみたいだ。

 僕とセバスチャン、シルビアは、理解出来ていない。


「ねえ。3rdのストーリーを教えてくれないかしら?」


「う~ん。その前にリアルの話しよっか。あのゲーム作った会社さ、利権でむしり取られて破産したんよ」


「え? 結構なダウンロード数だったでしょう?」


「な~んかね。契約に不備があったみたいで、2nd発売した年は赤字だったみたい。

 んでね。クリエイターが逃げちゃったの。でも再起をかけて二年後に3rdが発売されたってわけ。

 残ったクリエイターと新人のクリエイターのみで作られたのが3rdになるんよ」


「……その言い方だと、駄作だったみたいね」


「そそ。SNSで散々叩かれてた。ストーリー矛盾だらけだし、バグ修正でアップデート何回も繰り返してさ。

 ダウンロード数も全然で、頑張ったみたいだけど結局会社破産ってわけ。

 でもさ、あーしは好きだったんだよね。全キャラ攻略して結構楽しめた」


「そう……。背景は分かったわ」


「3rdの背景というか世界観はそんな感じ。そんでさ、こないだアゲート子爵令嬢が、いきなしピンチ!

 領地経営失敗して、学費払えず自主退学って何って感じだったんよ。

 彼女は、あーしの親友でさ。そこで助け船出したんよ」


「……アゲートは、1stと2ndではお邪魔虫キャラよ? 3rdでは違うの?」


「そそ。そこが違うんよね。アゲート子爵家が取り潰しになる時に、シルビアっちが協力してさ、取り潰しを回避するわけ」


「なるほどね……」


「そん時に、新しい最終武器が手に入るの。んでね、その最終武器を取るために、【転移】・【飛翔】・【収納】が必要なんよ」


「え!?」


 驚く、エリカ。

 まだ最終武器が残っていたのか? まずくないか?

 対立するのであれば、確実に勝てると言えなくなるぞ。


「今は一応、アゲート子爵令嬢のみが使えることにしてあるけど、あーしも使えるんよね。一応、3rdの主役ポジ貰ったみたいな?

 それと、シルビアっちも多分使える」


「まあ、そうよね。新しいストーリーがあるのであれば、新しい最終武器が実装されていても不思議ではないわ」


「にしし。理解早くて助かるわ~。それでさ、最後の最終武器は『打神鞭』つって風を操る魔道具なんよ。

 で、あーしがここに来た理由に繋がるわけ。

 それと、あーしは悪役令嬢でもあるから、シルビアっちには、絶対に勝てないのも知ってるっしょ? それでも開拓村に来た覚悟を理解して欲しいな~って感じ?」


「……今年の水不足をどうするか?」


「ビンゴ! その話し合いに来たんよ」


 いくつもの方法があるので、決めに来たのか。


「んでね。三人目と話したのだけど、セリーヌっちに任せたいの。ここでさ、王妃として実績を残させたいわけ」


 三人目が誰か伏せている時点で、信用ならないのだが。


「分かったわ、任せます。こちらは、戦争の準備だけすれば良さそうね」


「あんがと。頭良くて助かるわ~。

 それと、情報なんだけど、ジークが教国から帝国に逃げたのは知ってる?」


「知らないわ。でも、もう何も出来ないでしょう?」


「そうでもないんよ。3rdのストーリーだと、闇落ちしてさ、王国に攻めて来る一人になることもあるんよ」


「なんなの、そのストーリー……」


「にしし。まあ、まあ。つーわけで、今は3rdのストーリーが進行中なわけ」


 エリカが考え出した。


「そうなると、あの『闇落ち騎士』と同時に攻めて来るの?」


「そーゆーこと。最悪三方向から責められるので、エヴィ様一人だと、迎撃は出来るのだけど、王国は結構な損害出ちゃってさ。

 3rdのラストでは、『復興頑張ろう!』で終わるストーリーもあるんよ」


「そのストーリーの結末からなんだけど、3rdは本当に面白いの?」


「人によんじゃない? あーしは、矛盾だらけでもご都合主義のストーリー好きよ?」


 エリカは、呆れ顔だ。

 こんなに表情豊かなエリカは、初めてである。





 リナ・スピネル伯爵令嬢が帰って行った。

 なんというか、嵐のような人であった。敵対関係にならないことを祈るばかりだ。

 それと、〈三人目〉については、結局明言を避けていた。

 ただし、王国を良い方向に導きたいのが、〈三人目〉の意思なのは分かった。

 リナ嬢の目的は、お気に入りの攻略対象である〈宰相様のご子息〉なので、開拓村には関わらないとのこと。

 僕は魔法学園には伝手がないし、行く理由もない。シルビアも同様だ。


 エリカは、また部屋に籠った。今度は、教国と帝国の情報収集を行うみたいだ。


 空を見上げる。気持ちの良い風が吹いて来た。もうすぐ春である。

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