第35話 最終武器3-パワードスーツ

 ゴーレムの首を刎ねると、ゴーレムは光の粒子となって消えてしまった。

 これで終わったのだろうか? 二戦目に備えるために、僕は周囲を警戒した。

 僕のダンジョン攻略の経験は、魔導書の時だけだが、話くらいは聞いている。

 気を抜いた瞬間に死が訪れる場所なのだ。


 そうしていると、目の前に扉が現れた。

 空中に浮いている。

 一応警戒しながら、扉を開くと、扉の先は別空間に繋がっていた。

 再度警戒しながら扉を潜ると、祭壇があった。魔導書を得た時と同じ形だ。

 それと、周囲に装飾品が、三点並べられていた。

 まず、装飾品を取ると、台座が消えてしまった。

 周囲をくまなく探索したが、他には何もない。

 この仕様であれば、お宝の取り残しは発生しないのだろうな。

 装飾品は、何なのだろうか? これらは、エリカに相談すれば良いと思う。

 そして、本命だ。パワードスーツが納められていると思われる台座にそっと触れると、崩れ出した。

 そして、それが現れた。


「これが、パワードスーツか……」


 先ほどのゴーレムを大きくしたようなフォルムの鎧が、そこにはあった。

 鎧の状態は座っている形なので、正確には分からないが、長高は五メートルくらいだろうか?

 それと、胴体部分に人が乗れそうな形状をしている。

 エリカは、『ゴーレムを着る』と言ったのだが、形からその意味が推測出来る。

 そして、使い方は、先ほど見せて貰った。筒の先から魔法を撃つのであろう。


 観察していても、時間の無駄なので早速着てみる。いや、乗ると言った方が近いかもしれない。

 そうすると、体を固定され、鎧の胴体部分が閉まった。

 感覚で分かる。僕の手足と連動して動くのだな。

 僕は、ゆっくりと立ち上がった。


「それほど、難しい感じではないな。すぐ慣れそうだ」


 思い通りに動くし、頭の中に直接必要な情報が送り込まれて来る感じだ。

 視覚や聴覚情報のみでなく、触覚情報により、パワードスーツの足裏の感覚や風の流れさえ分かる。

 『鑑定』や『探索』のスキルも組み合わされている感じなのだろう。


「……さて、パワードスーツを手に入れたのは良いのだが、どうやって出れば良いのだ?」


 そんなことを考えていると、情報が入って来た。


「目の前の扉を壊すのか?」


 パワードスーツはそう言っている。

 このパワードスーツは、両手に筒を持っている。右手の照準を合わせる……。

 そして、引き金を引いた。


 ──ドーン


 先ほどのゴーレムの攻撃など、比較にならないくらいの光魔法が放たれて扉を破壊した。

 これ、威力ありすぎじゃないのかな……。一発で開拓村を吹き飛ばせそうだ。

 目の前の視界が戻って来ると、違和感に気が付く。

 僕は、空中にいて落下していた……。


 眼下を見ると、開拓村がある。その上空にいるみたいだ。

 このままでは、墜落していしまう。飛ばないと!

 そう思った時、背中から風魔法が放たれて落下が止まった。……結構衝撃が強いな。それと、酔いそうだ。

 ゆっくりと、降下して行く。そして、シルビアとエリカを見つけたので、その目の前に降り立った。





 僕が、パワードスーツから降りると、シルビアが抱き着いて来た。頭を撫でて落ち着かせる。

 エリカが前に出て来た。


「おめでとうございます。エヴィ様。これで、この国が救われることが決まりました」


「うむ。ありがとう。それとなのだが、装飾品を三点見つけた。これは何か分かるか?」


「まず、指輪をシルビアさんに渡してください」


 シルビアをそっと引き剥がし、手を取った。そして、右手の中指に指輪を嵌める。


「エヴィ様。そこは左手薬指じゃないですか!?」


 シルビアから抗議が上がった。

 いや、プロポーズするわけではないのだが。

 とにかく、指輪をシルビアの指に嵌めた。すると、パワードスーツが、その指輪に収納された。


「これからは、パワードスーツの使用権限はシルビアさんが持つことになったわ。

 エヴィ様。くれぐれもシルビアさんの機嫌を損ねないようにね」


 ふむ。【収納ストレージ】か。パワードスーツ限定であっても便利なものだ。

 それにあれだけの巨体を運ばなくて良いのは楽だな。


「残り二点は、どうすれば良い?」


「ネックレスは、エヴィ様が装備してください。瀕死の重傷を負った時に身代わりになってくれます。

 それと……イヤリングですが、私が貰っても良いですか?」

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