第34話 フロアボス
エリカに連れられて、開拓村の端に来た。ここは、地表面が土砂で埋まり、まだ人の手が入っていない場所である。
だが、すぐに気が付いた。
「奥で何か光っているのか?」
淡い光だが、日陰の部分もあってハッキリと見える。
土砂に足を取られないように進むと、魔方陣があった。
これが入り口になるのだろうか?
「エリカ。この魔方陣は何なのだ?」
「転移の魔法陣ね。ある場所に飛ばされるわ。そこには、フロアボスがいて倒すとパワードスーツが手に入るの」
「そのフロアボスの特徴を教えてくれ」
「ゴーレムね。しかも金属で出来ているので、刃は通らないわ。
それと、今はエヴィ様しか行くことが出来ない。今回はシルビアさんが選んだ人のみ通ることが出来るの」
シルビアが選んだ相手のみか。
シルビアは、僕がずっとお姫様抱っこしている。不安そうに僕を見て来た。
「大丈夫だ。すぐ戻って来る」
シルビアを降ろして、魔方陣に近づく。
「エヴィ様。攻略方法なのだけど、土竜爪で足場を崩して、四界瓶でフロアを水で満たしてしまって。
そうすれば、簡単に倒せるので。間違っても、正面から戦おうとはしないように」
「……前に弱体化と言っていたが、手強いのか?」
「最弱にはなってないかな。でも、最終武器を揃えているエヴィ様なら問題ないわ」
シルビアの好感度は、最大にはなっていないと言うことか?
まだ、僕には至らない点があるのだろう。
「シルビア。行って来る。待っていてくれ」
「……はい。お待ちしております」
僕が魔方陣に入ると、視界が白一色に染まった。
◇
「どこかの闘技場のようだな。まるで、騎士学園の運動場みたいだ」
視界が戻った時の第一声が、昔の思い出であった。
その場所は、ジークフリートと決闘を行った場所に近い感じがする。だが、細部が違うな。
作られた空間……。空はあるが、ダンジョン内部なのかもしれない。
そして、フロアの中央が光った。
光が収まると、金属で出来たゴーレムが姿を現した。
あれが、フロアボスか。
戦闘が始まった。
ゴーレムは、筒から高火力の魔法を撃って来た。それをとにかく躱す。
僕は魔導書を展開し、回避率と移動速度を上げた。
これで、油断しなければ、被弾はない。
そして、エリカのアドバイス通りに、土竜爪を使いフロア全体の足場を崩して行く。
だが、意外なことが起きた。
ゴーレムが、空を飛んだのだ。
遮蔽物のない空間で、直上からの射撃……。一方的に攻撃され続けている。
エリカの、もう一つのアドバイスを実行する。
僕は、四界瓶の中の水を開放した。
四界瓶からは、噴水のような水が噴き出した。フロアの半分を区切るような水のカーテンが出来ている。
ゴーレムの魔法は、水のカーテンに当たると四方八方に飛び散ってしまった。どうやら光系統の魔法のようである。
四界瓶を操作して、ゴーレムに水が掛かるようにすると、飛行魔法の阻害効果となるのか、ゴーレムは背中を爆発させて墜落してしまった。
そのまま、距離を取り、時間を稼ぐ。
十分くらいだろうか? 四界瓶から水を開放してからそれくらいの時間が過ぎたと思う。
ゴーレムは浮くことが出来ずに頭まで水に浸かってしまった。
僕は、水面で浮いているので、とりあえずは無事だ。
ゴーレムは、背中から飛行魔法の光を放ったのだが、水に濡れた状態だと自爆してしまった。その後は、手に持つ筒から魔法も撃って来ない。何も出来ずにフロアに水が溜まるのを見ている感じだ。
あのゴーレムは、中長距離の武器しかないと思われる。あれで、近接戦闘まで出来るとちょっと困ったかもしれない。
「この後、どうすれば良いのだ?」
エリカの指示通りに土竜爪と四界瓶を使用した。だが、ゴーレムを倒した訳ではない。
この空間から出る条件が分からなかった。
とりあえず、ゴーレムの背後に泳いで回る。
ゴーレムは、こちらを向かない。死んだふりだろうか?
僕は、水中を潜り地面へ辿り着いた。そして、土竜爪を使用して、土の中を進んだ。そのまま進み、ゴーレムの真下から足を掴んだ。そのままゴーレムを地中に引きずり込む。
ゴーレムは、頭以外が地中に埋まった。地中に埋めて拘束するのは、ワンパターンな気もするが、これが最も効果的であり、僕に合った戦法だと言える。
その後、四界瓶を使用して水を回収する。これで、僕も動けるようになった。
ゴーレムを見るが、首だけは動いている。
僕は、土竜爪を使い、ゴーレムの首を切り落とした。
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