第34話 フロアボス

 エリカに連れられて、開拓村の端に来た。ここは、地表面が土砂で埋まり、まだ人の手が入っていない場所である。

 だが、すぐに気が付いた。


「奥で何か光っているのか?」


 淡い光だが、日陰の部分もあってハッキリと見える。

 土砂に足を取られないように進むと、魔方陣があった。

 これが入り口になるのだろうか?


「エリカ。この魔方陣は何なのだ?」


「転移の魔法陣ね。ある場所に飛ばされるわ。そこには、フロアボスがいて倒すとパワードスーツが手に入るの」


「そのフロアボスの特徴を教えてくれ」


「ゴーレムね。しかも金属で出来ているので、刃は通らないわ。

 それと、今はエヴィ様しか行くことが出来ない。今回はシルビアさんが選んだ人のみ通ることが出来るの」


 シルビアが選んだ相手のみか。

 シルビアは、僕がずっとお姫様抱っこしている。不安そうに僕を見て来た。


「大丈夫だ。すぐ戻って来る」


 シルビアを降ろして、魔方陣に近づく。


「エヴィ様。攻略方法なのだけど、土竜爪で足場を崩して、四界瓶でフロアを水で満たしてしまって。

そうすれば、簡単に倒せるので。間違っても、正面から戦おうとはしないように」


「……前に弱体化と言っていたが、手強いのか?」


「最弱にはなってないかな。でも、最終武器を揃えているエヴィ様なら問題ないわ」


 シルビアの好感度は、最大にはなっていないと言うことか?

 まだ、僕には至らない点があるのだろう。


「シルビア。行って来る。待っていてくれ」


「……はい。お待ちしております」


 僕が魔方陣に入ると、視界が白一色に染まった。





「どこかの闘技場のようだな。まるで、騎士学園の運動場みたいだ」


 視界が戻った時の第一声が、昔の思い出であった。

 その場所は、ジークフリートと決闘を行った場所に近い感じがする。だが、細部が違うな。

 作られた空間……。空はあるが、ダンジョン内部なのかもしれない。

 そして、フロアの中央が光った。

 光が収まると、金属で出来たゴーレムが姿を現した。

 あれが、フロアボスか。


 戦闘が始まった。

 ゴーレムは、筒から高火力の魔法を撃って来た。それをとにかく躱す。

 僕は魔導書を展開し、回避率と移動速度を上げた。

 これで、油断しなければ、被弾はない。


 そして、エリカのアドバイス通りに、土竜爪を使いフロア全体の足場を崩して行く。

 だが、意外なことが起きた。

 ゴーレムが、空を飛んだのだ。

 遮蔽物のない空間で、直上からの射撃……。一方的に攻撃され続けている。

 エリカの、もう一つのアドバイスを実行する。

 僕は、四界瓶の中の水を開放した。

 四界瓶からは、噴水のような水が噴き出した。フロアの半分を区切るような水のカーテンが出来ている。

 ゴーレムの魔法は、水のカーテンに当たると四方八方に飛び散ってしまった。どうやら光系統の魔法のようである。

 四界瓶を操作して、ゴーレムに水が掛かるようにすると、飛行魔法の阻害効果となるのか、ゴーレムは背中を爆発させて墜落してしまった。

 そのまま、距離を取り、時間を稼ぐ。


 十分くらいだろうか? 四界瓶から水を開放してからそれくらいの時間が過ぎたと思う。

 ゴーレムは浮くことが出来ずに頭まで水に浸かってしまった。

 僕は、水面で浮いているので、とりあえずは無事だ。

 ゴーレムは、背中から飛行魔法の光を放ったのだが、水に濡れた状態だと自爆してしまった。その後は、手に持つ筒から魔法も撃って来ない。何も出来ずにフロアに水が溜まるのを見ている感じだ。

 あのゴーレムは、中長距離の武器しかないと思われる。あれで、近接戦闘まで出来るとちょっと困ったかもしれない。


「この後、どうすれば良いのだ?」


 エリカの指示通りに土竜爪と四界瓶を使用した。だが、ゴーレムを倒した訳ではない。

 この空間から出る条件が分からなかった。

 とりあえず、ゴーレムの背後に泳いで回る。

 ゴーレムは、こちらを向かない。死んだふりだろうか?


 僕は、水中を潜り地面へ辿り着いた。そして、土竜爪を使用して、土の中を進んだ。そのまま進み、ゴーレムの真下から足を掴んだ。そのままゴーレムを地中に引きずり込む。

 ゴーレムは、頭以外が地中に埋まった。地中に埋めて拘束するのは、ワンパターンな気もするが、これが最も効果的であり、僕に合った戦法だと言える。


 その後、四界瓶を使用して水を回収する。これで、僕も動けるようになった。

 ゴーレムを見るが、首だけは動いている。

 僕は、土竜爪を使い、ゴーレムの首を切り落とした。

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