第20話 迷宮1
盗賊が現れたが、無事ダンジョン前に着いた。いや、目的の場所かな。
しかし、どうやらエリカからすると、予想外のことが起きているようである。
盗賊が現れた時点で不測の事態なのだが、まあ、雑魚だったし忘れよう。
そして、目の前には断層があり、大回りしなければ、進むことの出来ない場所にいる。
これからロッククライミングかな?
エリカを見ると、顎に手を当てて少し考えているようだ。
先ほどの盗賊と言い、エリカの未来視も万能ではないのだな。
「……エヴィ様。この断層の探索……生命探知を行って貰えるかしら?」
断る理由もないので、魔法を展開する。
土魔法:生命探知
当然だが、石の塊である断層内には、生命は存在していなかった。
エリカがそのまま、右方向に進むように僕を誘導する。
四人で警戒しながら目の前の断層と平行に進んでいた時であった。
僕の魔法に何かが引っかかった。
だが命ではない。始めての感覚なので表現出来ない。魔法を弾く空間と言った感覚だ。
「……あそこに、何かがある。生命じゃないのだが、何か違和感を感じる」
その場所に向かうと、断層表面に違和感を覚えた。
他の場所は、平らな断層面が続いているというのに、ここだけは違う。表面に凹凸が見られる。
少し触ってみると、断層面が崩れた。叩いてみると、穴が空いた。その穴を覗き込むと、奥に洞窟の入り口が見える。
僕の魔法は、あの洞窟の奥を感知することが出来ないので、違和感を感じたのか。
「ここかな? この洞窟の先は、違和感を感じる。ここが目的のダンジョンになると思うのだが」
レガートが割って入って来た。
「俺の冒険者時代の知識ですが、ダンジョンの入り口を塞ぐことは出来ないはずなんですがねぇ……。この先は、フェイクの気がしやす。罠があるんじゃないかって思いやす」
「……いえ、塞いではいませんね。地上からは見え辛いけど、上空から見れば、開いている……。
塞いでいるのではなく、囲っているが正しいかな」
元冒険者のレガートと、未来視持ちのエリカの意見が、食い違っている。
問題なのは、この先に罠があるかどうか……。これは、どちらとも取れないな。
「仮にだが、誰かが意図的にこのダンジョンを見えないようにしたのであれば、この先に罠があるかもしれないな」
全員が僕を見る。
「坊ちゃま。ここは、坊ちゃまの探索が頼りかと……」
何度も言うが、厳密には探索ではないのだが。魔法の効果範囲内の生命を探知するだけなので、罠とかは見抜けないのだ。
「エリカは、罠の探知とかは可能か? 僕は、生命の感知のみなので毒とか落とし穴は察知出来ない」
「出来ますよ。でも、違和感を感じるので慎重に進みたいかな。明らかに妨害が入っていますしね」
「罠があると分かっていて、進むのは自殺行為でやす。俺は入るのに反対しやす」
意見が割れてしまったな。
「……いえ、行きましょう。ここでの全滅はないので」
エリカの言葉に、レガートは渋々従う。
光魔法:発光
こうして、ダンジョンに足を踏み入れることになった。
◇
「なんかこう、イメージしていたダンジョンとは違うのだな」
ただ真っすぐであり、舗装もされたダンジョンを注意深く進む。
「落とし穴とか、毒の沼地。無数に飛んで来る矢や、魔物でも期待したのかしら?」
エリカが、僕の独り言に反応した。
「真っすぐな道だけで、こうも何もないとな。逆に不安だ」
「本来であれば、ここに来る時には、エヴィ様はとても急いでいるのよ。
ここで、時間を取られるわけにはいかないので、このまま進んですぐボス部屋になるの。
まあ、言ってみれば、クリエイターの手抜きね」
そういえば、エリカの知識では、二年後に取りに来るのであったな。その時は、切迫した状況なのか。
そして、何事もなく大きな扉の前に着いてしまった。
「ここが、ボス部屋か。どんな魔物がいるのだ?」
「大きな昆虫がいるわ。そして、範囲攻撃を繰り返して来るの。
レガートが盾で凌いで、エヴィ様が足止めしてください。セバスさんと私が削ります。
毒を持っているのだけど、油断しなければ簡単に仕留められるわ」
「俺、耐えきれるのか心配でやす……」
「セバスさんの攻撃より弱いわよ?」
「なら安心だ。領主様! 行きやすぜ!!」
レガートが笑った。
そして、扉を開けた。
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