第14話 ジークフリート1
◆ジークフリート皇太子視点
──ガチャン
「ちくしょう!」
俺は今憤っていた。
せっかく集めた、ハーレム要員が、王命で解散させられてしまったからだ。
幼少期に前世の記憶を取り戻した。そして、すぐに『ロードクロサイト学園1st』の世界だと気が付いた。
きっかけは、紅い髪の同級生であった。あの鮮やかな髪は、俺の記憶を取り戻すのに十分なインパクトがあったのだ。
だが、知っている人物とは、体型が違った。名前は同じだったのだが……何かが違う。
あいつは、便利キャラの位置付けだが、容姿にコンプレックスを持っていたはずだ。それに剣術も下手なはずだった。
現実とゲームが交差する世界で、俺は混乱に陥っていた。
「今、近づくのは危ないな……」
まだ、ゲームの始まっていない時代なのである。俺の知識が優位に立つのは、十五歳になってからなのだが、あの同級生にだけは警戒してしまった。それほど、当時の
だがそれも杞憂に終わった。
時間が経つにつれて、
俺の記憶の通りであり、歴史と合致しているのは、その後気が付いた。
ある時、王城の宝物庫に入ることがあった。
ここには、身体能力強化の魔法スクロールがある。これが、序盤の重要アイテムであり、これさえ取れれば、中盤まではある程度好きに進められる。
シナリオを無視して、十歳で盗み出した。『ロードクロサイト学園1st』は、入学時点でいきなり決闘を申し込まれる。
ギャルゲーだというのに、かなりハードなアクションゲームな部分もあるのだ。
強引に勝つことも出来るのだが、負けると、この身体能力強化の魔法スクロールが手に入る。
ただし、負けた場合は、攻略対象の貴族令嬢が減ってしまう。
俺は、ハーレムルートを選択したかった。
そして、『ロードクロサイト学園1st』の歴史通りに進めなければならないと言う、ルールはない事を知った。
ここから快進撃が続いた。
まず、〈身体強化魔法〉を覚えた俺に、勝てる者はいなかった。当然である。そうゆう仕様なのだから。
手始めに〈鑑定〉を持つ侯爵令嬢を手に入れるため、その兄に決闘を申し込んだ。
絶対に勝てると分かる、決闘……。笑いが出た。
五歳も離れた下級生に決闘を申し込まれた相手は、激高して向かって来たのだが、しょせんはモブ。返り討ちにしてやった。
そして、侯爵令嬢を奴隷のように連れまわす日々が始まった。
この侯爵令嬢の〈鑑定〉は、とても役に立つ。宝探しゲームや、街中での散策中にランダムで取れるアイテム……、全て取れてしまった。
本当は、かなりの時間を費やして取らなければならないアイテムを、ゲームスタート前から集められたのである。
思わず、嗤ってしまった。
「くっくっく。良くやった……」
侯爵令嬢の髪を撫でる。
「ひっ、ひ~い。……ありがとうございます」
慌てて俺の手を弾く、侯爵令嬢。少しイラついたが、まあ良い。
もう少し育ったら、快楽で返してやろう。そうすれば、俺からは離れられなくなるはずだ。
それからは止まれなかった。
攻略対象の貴族令嬢を落として行く日々。攻略対象が何の問題を抱えているかを知っている。そして、解決方法も……。
この世界は、剣の腕が物を言う。〈身体強化魔法〉を覚えた俺に敵はいなかった。そして、攻略に必要なアイテムを先に取っているのだ。
気が付くと、俺の後ろを歩く攻略対象の貴族令嬢が列を作っていた。
そして、学園デビューである。
俺は、剣の腕も、皇太子としての地位も、そして、貴族令嬢達も手に入れてのデビューである。
俺よりも輝いている者はいない。そう思えた。
だが、目に付いてしまった。あの紅い髪を……。
醜い肥満体で、モブの貴族令嬢の手を取っている。
あいつは、スタート時点で婚約者などいなかったはずだ。俺が手助けして、初めて婚約者が出来るシナリオだったはずだ。そして、運命の相手は別にいる。まあ、そいつは攻略対象ではないので、どうでも良い。
それが、モブとはいえ貴族令嬢の手を取っている。
意味もなく、イラついてしまった。
そして、手袋を相手の前に叩きつけた。
決闘の結果は、予想通りであり特に問題なかったのだが、国王陛下が出て来たのが、予想外であった。
「ジーク! 何と言うことをしてくれたのだ!!」
国王陛下の叱責が俺を襲う。それも、大臣達の前で。
おかしい。こんなシナリオはなかった。決闘のパートは、少なからずあるが、国王陛下が出て来るシナリオなどなかった。
あの
その後、俺に下された処分は、せっかく落とした貴族令嬢との隔離であった。彼女達は、王都を離れることになったのだ。二人きりでの会話ですら禁止されてしまった。
「ありえない。なんなのだ、このルートは?」
こうなると、バッドエンドまっしぐらである。
二年後にパートナーとなる攻略対象がいないと、俺は破滅することが分かっている。
それだけは避けたい。せっかくの異世界転生なのだから。
「残っている攻略対象は、隠しキャラを含めて三人か。一人だけでも落さないとな……」
俺は、今後の予定表の作成を始めた。
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