第9話 転生者4
「それでは、まず、今後なにをすれば良いか教えてくれ」
「まず、私の目的から聞いて貰いましょうか。
私の目的は、親友の悪役令嬢を救うことだったのだけど、ジークが歴史を歪めてしまったので、今後の展開が読めなくなってしまったわ。親友が破滅フラグを踏むかのさえ分からない状況ね。
それで、エヴィ様に目を付けたわけ。1stと2nd共に出て来て、いると便利なキャラ……それが、あなたよ」
「悪役令嬢と破滅フラグか……。先ほども出て来たが、もう少し詳しく意味を教えてくれ」
「……学園生活の最後にシルビアさんの行動を断罪する、貴族令嬢かな? 破滅フラグは、そのままね。国外追放であったり、平民に落とされるという、それまでの生活を奪われることを意味するわ」
「僕の開拓村行きが、破滅フラグに当たるのか?」
「ちょっと違うわね。エヴィ様は、まだ再起の道が残されているので、破滅フラグは踏んでいませんね」
「それと、シルビアは、学園には通ったことがないのだが?」
「それは、ジークが歴史を歪めてしまった結果ね。今頃、代わりの誰かが2ndのストーリーを進めているのでしょう。もしかしたら、その者も転生者かもしれません」
疑問が多々ある。だが、エリカの目的は、親友の未来を守りたいことか。
その者を特定させないようにしているのは、さすがだな。僕を信用させつつ、重要な部分を隠す。
少し、かまを掛けてみるか。
「親友の悪役令嬢を、この地に招くのか?」
「いいえ、ジークに破滅フラグを踏ませること。それが目標になるわ。
親友のことは、私が陰から操作するので気にしないで」
思案する。そんなにエリカはジークフリートが嫌いなのか? 先ほども明言していたが、よっぽどなのだな。過去に何があったのだろうか。
「ジークを破滅させると、なにが起きるのだ?」
「一つは、この国が滅びる可能性があるわ。隣国の帝国に占領されると言った方が良いかもしれないわね。
まあ、隣国の連邦に逃げて国を奪還するルートもあるのだけど、そのルートは潰えているわ」
「なぜ言い切れる? 根拠は?」
「……ジークが、ハーレムルートを選んだから。本当であれば、連邦からお忍びでお姫様が来ていたのだけど、もう帰ってしまったわ。城下街でぶつかって、服を汚して言い合いになるイベントが、発生しなかったの。
ジークとは、面識が出来なかったと言えば、分かるかしら?
連邦のお姫様は、嫉妬深いの。ヤンデレと言ってね。ハーレムルートには、参加しないヒロインなのよ」
「良く分からないが、国を滅ぼすのは避けたい。回避方法はあるのか?」
「第二王子を次期国王に据えれば、存続は出来るわ。これが、ジークのバットエンドの一つね」
第二王子か……。
「まだ、幼くないか? 国の運営が出来るとは思えないのだが……」
「そこは、エヴィ様の御父上とかが支えれば良い話よ。1stのバットエンドでは、国が財政破綻寸前になるのだけど、大臣が一枚岩になって新国王様を支えて終わるというルートもあったわ」
「あまり、良い未来じゃないな。選択肢としては余り良くない」
「ジークが国王になったら終わりよ? それよりもマシと思って欲しいわ」
エリカのもう一つの目的は、ジークの破滅か。そして、それが親友を救うことに繋がる……と。
確かにこのままジークが国王になれば、滅茶苦茶な政策を打ち出しかねない。
僕の希望は、ヘリオドール侯爵家の存続だ。そして、セバスチャンとシルビアを保護したい。
エリカと意見が異なる部分は、今のところない。
ここまでは、良いだろう。
「最終的な目標は分かった。それで、今は何をすればいい?」
「まずジークは、1stしかプレイしていません。なので、シルビアさんの存在を知りません。ここに隙があるわ。いえ、私達のアドバンテージと言えるわね。
今、ジークは序盤から中盤までを攻略出来るアイテムを取り終えてるわ。それも、もう数年前から始めている。
でも、終盤で必要なアイテムは、王都の外にあるので取れていない。これらを、私達で先に抑える!」
必要なアイテム? 先に抑える?
「それを、僕達が取ると、どうなるのだ?」
「このまま行くと、戦争パートに突入するわ。シナリオでは、そこでジークが無双するのだけど、そのアイテムがないと戦死することが決まっているの。それほど、帝国からは圧倒的な数の兵士が送られて来る予定よ」
「アイテムの名前と特徴は?」
「パワードスーツと言うわ。そうね、金属で出来たゴーレムを『着る』と考えて欲しいかな。
まったくもって、この世界に似合わないアイテムよね。恋愛ゲームにこんな要素を組み込まなくても良いと思うくらいのチート品になるのよ」
良く分からないが、僕がそれを着ることになるのか?
それで戦争を扱えきれるのだろうか?
「そのアイテムは、何処にあるのだ? 場所は知っているのだよな?」
「この開拓村に眠っているわ。でも、守護者がいて、今行くと全滅するわね」
エリカが、僕を選んだ理由が分かった気がする。
そのアイテムを僕に取らせるためか。いや、エリカが着る可能性もありえるな。
とにかく、そのパワードスーツを抑えてしまえば、目的は達成される。
そして、開拓村の村長の僕が、一番入手する可能性が高い。
「僕の鍛錬が必要と言うことか? 剣はからっきしだぞ?」
「エヴィ様は、魔導師としての特訓を開始して貰うわ。
それと、ダイエットも必要ね。
私は、剣も魔法もレベルがカンストしているので、練習相手になれますよ。
それと、時期かな。分かっているのは、二年後に守護者が弱体化するのだけど、その前に取れる可能性もありえるわ」
「魔導師としての特訓は良いのだが。その時期というか条件はなんなのだ?」
「シルビアさん次第なの……」
なるほどね。2ndを知らないと分からないことなのか。1stでは、ジークが考えなくて良かった内容なのだろう。
シルビアを保護しつつ、パワードスーツを取るのか。
そうなると、ジークに悟られないように動く必要があるな。
それと、もう一人……。シルビアの『代わりの転生者』も忘れないでおこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます