第5話 依頼
「君にしか頼めない仕事なんだよ。」
そう言って人のいい笑みを浮かべる豊田。
だが決して騙されてはいけない。そう言われて自分は毎度どれほど苦心していることか。
「どんな仕事でしょう?」
期待せず、むしろ苦い虫を噛んだような思いで続きを促す。
「記事を書いて欲しいんだよ。」
己の目が見開かれるのを感じた。
腰が思わず浮きそうになる。
「本当ですかっ!」
声はうわずっていた。
「もちろん本当だとも」
豊田は反応を見透かしていたらしく、その目は笑っていた。
「大見出しというわけにはいかないが、うまくいけば紙面に載せるつもりだ。」
無意識のうちに顔が綻んでいた。
「……なにについて書けばいいんです?」
豊田がわざわざこうして一記者に話をするのであれば、取材対象はもう決まっているのかもしれない。
「君は本当に察しがいい。私は君のそういうところを気に入っているんだけれどね。」
その双眸に宿る光は妖しげであった。
とある画廊商について調べて欲しいんだよ。
そう告げ、豊田は目尻の皺を深くした。
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