第21話 ミトレア

 御者の男と話した場所から歩いて約一時間。遠目ではあるものの、人工物が見えて来た。ミトレアだ。ミトレアは小さい港町ではあるものの存在感がある。それは別に通商だとかそういう意味では無く、視覚的な意味で存在感を放っている。

 ミトレアの家々は全て真っ白だった。最初見たときはてっきり宗教的なやばい町なのかと思っていたが、シャル曰くあれは海からやって来る魔物を退ける魔よけの意味が込められているらしく、この辺りでは広く使われている建築様式らしい。なるほどと思ったが、真っ白だから太陽の光が反射してとても眩しくて見ていられない。

 あまり直視しない様に歩く事数分、俺達は街の入り口についた。一応衛兵はいるもの、セーランみたく壁に囲まれていないことや、通行の為に何か証明書を見せなくてもいい事から治安の良さが感じ取れる。「こんにちは」と一言いうだけで入れるなんてあの街では考えられない事だ。

 街の中に入ってみると以外にもさっき感じたような眩しさは感じなかった。そう言えば”ミトレアの道は暗い”とかいう格言があったな。確か身近な所は案外気づかないもんだみたいな意味だった気がする。今は昼で、暗いとは感じないが、遠くから見た時に比べれば暗く感じるのかもしれない。

 例のお祭りとやらがあるからだろうか、街は活気にあふれている。至る所に飾り付けをしている大人の傍らで、子供たちがはしゃいで走り回っている。こんな目を離して子供を自由にさせていたら誘拐されてしまうと心配になるのは、治安の悪い所に住んでいたからだろうか。

 俺は"船闘祭"の概要を聞こうと、飾りつけをしている年配の女性に話しかけた。


「すまない。"船闘祭"について聞きたいんだが……」

「ああお祭りの。それなら港にある本部の方に行ってもらえれば詳しい説明が受けられますよ」


 女性はそう言って、手元の紙に簡易的な地図を書いて俺達に渡してきた。


「助かった。ありがとう」

「いいんだよ。応援しているからね」


 最後に言った事はよくわからなかったが、何にせよ教えてもらった場所に行くとしよう。

 

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