第11話 襲撃
スーツを着た男達は皆拳銃を持っており、その銃口を俺達に向けている。
「リモネの手下か……!」
黒いスーツを身にまとい、拳銃で武装した連中なんて奴の組織しかありえない。まさかこんなにも早くここを嗅ぎつけてくるとは。もしかしてつけられていたのか? いや、そんな気配は全く感じなかったが……ええい、今迷っていても仕方ない。この状況をどうするか考えなくては。相手は五人、全員拳銃を持っている。こっちの戦力は魔法が使えるクロリスぐらいしかいない。男達が突入してきた段階で、咄嗟に杖を構えたクロリスは戦う準備は出来ているようだが、五人相手には分が悪い。
「お前たち、その場に物を置け。そこのガキは杖を向こうの壁に投げろ」
男達の中の一人が俺達に指図してきた。そいつは唯一赤いネクタイをしていたので、恐らくリーダーか何かだろう。俺は手に持っていた袋と、腰に下げていた二本の剣を床に置いた。俺は戦うなよという事を、目線でクロリスに訴える。彼女は戦う気満々の様だったが、俺の目を見ると、大人しく杖を壁に向かって投げた。木製の杖は軽い音を立てて床に落ちた。
「お前がカシスだな? ボスがお前に用があるから、連れてこいとの指示だ」
ああ、やっぱりリモネの手下だったか。どうせシャルを売ってくれだとかそんなのだろう。そして断ったら殺されて、無理やり奪っていくだけだろう。いや、大人しく打っても殺される気がするな。何にせよ大人しくついて行ったら確実に俺は死ぬ。でもこの状況、ついて行かなくても死ぬんじゃね? まさか旅に出る前に死ぬ事になるとは思ってもみなかった。
「大人しくついてこれば痛い目には――」
「死に晒せこん畜生がァ!!!!」
突如後ろから怒鳴り声が聞こえ、振り向いてみればそこには鬼の形相で大きなフレイルを振り回すドーゥバが居た。フレイルの先についているクソでけぇ鉄の棘玉は、そのまま男達に向かって飛んで行った。男達の中の一人に棘玉は直撃し、そいつは頭から血を吹き出しながら床へと倒れた。突然の事で驚いた男達は発砲したものの、弾丸は明後日の方向へ飛んでいく。この隙を突いて、クロリスは杖を魔法で引き寄せる。そして杖の先から青黒い光を飛ばし、男達を攻撃する。狭い店の中は硝煙や埃でわけのわからない状況になっている。
俺はさっき落とした剣を持ち、近くに居た男の腕に切りかかる。切り口から火が噴き出たので、恐らくこれは炎エンチャントをされた武器なのだろう。切られた男は俺を撃つも、腕を切られた痛みからかうまく照準を合わせる事が出来ず、撃った弾は俺の頬をかすめただけに過ぎなかった。俺は男の腹を深く刺し、絶命させる。男の死体は剣の効果で燃えていく。この剣で殺せば死体は勝手に焼けてくれるから楽だな。
この男を殺した辺りで、戦闘音は聞こえなくなった。やがて、煙が晴れると、目の前には凄惨な光景が広がっていた。フレイルで頭をかち割られた男、魔法によって体の一部が腐っている男、リーダーの男なんて顔を識別できない程ぐちゃぐちゃになっていた。こういった光景を見て、別に吐くなんて事は無いが、あまりいいものじゃない。
俺はクロリスとドーゥバの安否を確認しようと後ろを振り返った。しかし、二人の姿が見えない。
「おいクロリス、ドーゥバ、生きてるか?」
声をかけたところ、カウンターから白く細い手が出てきて、手招きをした。クロリスの手だ。俺は少し不審に思いながらも、カウンターの裏を覗いた。するとそこには、肩を銃で撃たれ負傷しているドーゥバの姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます