第7話 奴隷たち
馬車は俺の家の前で止まった。俺達が馬車を降りると、運転手の男は「お気をつけて」と一言言い残して去っていった。俺はこの瞬間から命を狙われる事となる。シャルと共に居る事は、世界一高いダイヤモンドを身に着けて貧困街を歩く事と同じだ。四方八方全てが敵だと思わなければならない。とにかく今外に居るのはまずい。俺達は足早に家の中へと入り、鍵をかけた。
さて、これからどうしようか。まず予定をたて、身支度をしなければならない。出来る限り家の中で用意は完結させなければならない。それともう一つ、今手元に居る奴隷をどうするべきかも考える必要がある。
俺が今所持している奴隷は十人。性別や種族はまばらで、中には魔法を使える者もいる。その中でも昔からいる四人の奴隷はケタ外れの能力を持っている。しかし、そいつらは性格に少し難がある為、貴族連中には受けが悪く、昔からずっとうちの食費を削っている。
流石に俺も鬼ではないので、こいつらを放置して旅に出るつもりはない。だが、今商売を行うと、変に目立ってしまうだろう。勘のいい奴なら俺が逃げようとしている事に気づくかもしれない。俺はなるべく人目につかない様にこの街を去らねばならない。さて、どうしたものか。
俺は取り敢えずあいつらに事情を話して、どうしたいかを聞く事にした。俺はシャルを連れて、家の隣の収容所に入る。収容所と言っても、ネズミが走り回るような汚泥まみれの汚いものでは無く、中は檻がある事を除けば普通の家とは何ら変わりない。何ならずっと居る奴に関しては檻の外に出て自由にしている。ある程度待遇をよくしているので、逃げ出す心配はない。たとえ逃げ出したところで、行く当てもなく、その辺の人さらいに捕まって今よりも過酷な所へ連れていかれるだけだ。それを皆理解しているのだ。
収容所の重たい扉を開く。二重扉になっているので、もう一つ扉を開ける。扉の先は、広めのリビングになっている。中央に大きめのテーブルとイスがあり、そこには四人の少女が座っていた。
「あ、カシスさんじゃないっすか! ようやくうちの売り先決まったんすか!?」
「お前の売り先なんて一生見つからねぇよ」
少し礼儀がなっていないこいつは、ルーイという赤髪の少女だ。戦闘能力が高く、明るく活発な少女だが、知能が少し低いというかなんというか。まあ所謂バカの子だ。うちではある程度の常識や知識を教えてはいるが、ルーイには効果がない。
「そんなひどい事言わないでくださいよ! ところでその綺麗な女の子は新入りっすか? それともカシスさんの女っすか?」
ルーイはシャルを見て言った。
「こんなガキが恋愛対象になるかっての……新入りと言えば新入りだが、少し事情があってな。今日は彼女の事について話をしに来た。クロリス、みんなを呼んでくれ」
俺は椅子に座っていた半獣人の少女、クロリスに鍵を投げ渡した。彼女は猫人と人との間に生まれた子で、人の血が強いものの、猫の耳や尻尾を持っている。魔法の技術は凄いが無口で、不愛想だ。おまけに魔法で人を呪う事もあり、買い手がなかなかつかない。けど従順に動いてくれるので、悪い奴ではない。多分。
クロリスは奥の廊下へと消えていき、しばらくして六人の奴隷を連れて来た。最年長のぺシア、ハーフ•リザードマンのパース、魔法使いのシーア、妖精種のグリス、大柄なインジェル、家事が得意なストリアス、ここ一年の間に買った奴隷たちだ。皆何処か不安そうな顔をしている。恐らく売り先が決まったとでも思っているのだろう。俺は皆に座るように指示をし、これからの話を始めた。
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