第5話 出会い
「この度は落札おめでとうございます」
館長室に通された俺は、ソファーに座り館長と話をしていた。爺さんの話は長い。俺の方からさっさと話を切り上げよう。
「私もこの仕事は長いですが、あんなオークションは見た事も――」
「金はどうしたらいい? いつも通り現金と商品を引き換えるのなら一度銀行に行かなくちゃならん」
「いえ、今回は我々の方で引き落としておきます。何分大金なのでね」
オークションは基本現金と商品をその場で引き換える。だが流石に13億もの大金を持ち歩く事は危険だし、そもそも不可能なので今回は引き落としを例外的に認めたのだろう。俺はいくつかの書類を書いて、商品引き渡しまでの手続きを進めた。
書類を全て書き終わった時、後ろのドアがノックされた。館長が入るように指示をすると、屈強な男が二人、そして例のお姫様が入って来た。
「彼女が今回カシス様が落札なされた商品です。ほら自己紹介しなさい」
お姫様は館長に自己紹介をするように促されたが、彼女はそっぽを向いた。
「なかなか気の強いお姫様みたいだな」
「ええ。他の奴隷よりも丁重には扱っていたので、従順な性格に矯正出来ておりません」
「それは別に構わない。それで名前は?」
「シャルロット・フォースレインでございます。ご存じであるとは思いますが、つい一月前に我が国が攻め滅ぼしたフォースレイン王国の王女です」
帝国がどこかの国を滅ぼしたのは知っていたが、フォースレイン王国という名前までは知らなかった。フォースレイン王国と言えばエルフの国で有名だが、フォーン地方近辺を治める程度の小国だ。そんな小国の王女を何故"放浪者《プラネテス》"が五人も集まって落札しようとしたのか、俺には理解が出来なかった。このお姫様に一体何の価値があるのだろうか。
「こいつはもう持って帰ってもいいんだよな?」
「勿論でございます……先程の契約書にも記載しておりましたが、彼女を所有している事で起こる事故や事件等につきましては、我々は一切責任を持ちませんのでお気を付けください。早めにお売りになる方がよいかもしれませんよ」
確かにこのお姫様を持っていれば、いつどこで襲われるか分からない。ただのゴロツキ程度なら撃退できるだろうが、"放浪者《プラネテス》"に襲われちゃ勝ち目はないな。しかし、俺は彼女を売るつもりはない。
「ご忠告どうも。それじゃあ俺は帰るとするよ」
「本日はありがとうございました。ご自宅の方まではお送りしますので、表の馬車をお使いください」
俺はお姫様を連れ、部屋を出た。
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