君へ贈る心の手紙
のどかへ 亮より
亮は、遊園地の観覧車を見ていた。
それは、夜のためライトアップされていて輝いていた。
――綺麗。
亮はそう思った。けれど、それは亮の心を音がするくらいきつく締め付けていた。
―――ありがとうございます。実は私も……
急に、あのときののどかの声が脳内に響いた。
ああ……俺は俺が嫌い。
のどか、本当にごめんね。あの時、何も言わないで、なんて言って。
あの時一瞬、のどかは表情を暗くした。傷ついたよね、きっと。
こうして観覧車を見ると毎回心が痛むんだ、すごく。
あの時そんなこと言ったのは、のどかのためなんだ。ごめんね。
もし俺たちが付き合っても、のどかが悲しむだけだった。
のどかが一生懸命、俺のことを探しても、のどかは俺を見つけることができない。
だって、のどかは俺たちのこと見えなくなってたでしょ、どんどん。
どこにいるの、どこにいるのって探して、どこにもいなくて。
のどかは良い子だから、優しい子だから、きっと悪い想像をしちゃうはずだよ。
嫌いになったんだ、とかさ? 自分で自分の事苦しめてほしくなかったんだ、俺。
ごめんね。こんな馬鹿で。
のどかのことを傷つける最低な、こんな俺のこと、
好きになってくれてありがとう。
たくさんの、忘れられないほどの素敵な思い出を俺にくれてありがとう。
毎日、そばにいて笑ってくれてありがとう。
もし俺が人間だったら、ちゃんと命があったら、
のどかの本当の彼氏になりたかったな。
のどか……今日も星がきれいだよ。
そして、亮は観覧車に背を向けた。
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