第2話 現れるイケメンくんたち
「おはよう!」と、早速仲良くなった女子たちで挨拶しあっている。私に挨拶してくれる人など、いない。いきなりバットなスタートダッシュだよ……。
新しい学校に行って環境を変えれば、この私の人見知りは解消されるかと思ったけど、結果、人見知りは人見知り。本当になんも変わらなかった。それに一つ、困ったことを見付けた。
「のどか。ちょっと、国語の教科書貸してくんね?」と高いところから私を見下ろす一人の男。
入学してから、喋った男子など一人もいないはず……。なぜ、私の名前を知っているの?
「おい、聞いてるか? の、ど、か!」
た、たけ、る……!?
中学で一緒だった、
私の考えはあまかったか……。それに、よりによって武なんて、最悪すぎるよぉ……。
武は、中学時代、顔面偏差値が校内トップ1という顔を持ち、運動神経は抜群。そんな最強男子、武は、幼稚園のときから仲がよく、小学生のときもそうだった。でも中学生になったらいきなり、無口な私をよくからかい、笑い者にしていた。その武と、一緒なんて……。
「やだ、他をあたって」
強い口調で私が言った。
「そんな冷たいこと言うなって~。お前しか知ってる人いねぇんだよ。ただでさえ、ここにいる女子たちは気が強そうでさ~」と言って私の前に立ちはだかる。
「そんなの知らないよ。あんたに教科書貸したい女子なんて、うじゃうじゃいるって」
だいたい、女子の悪口を女子の私に言われても何も出来ないんですけど。あ、あぁそうか、私は女子に見えてないのかもしれないね。人見知りだ・か・ら!
「いや、俺はのどかに頼んでる『武くん、どうしたの?』
私のクラスメイドのある女子が武の所に寄って来て言った。
「……ほら、いたでしょ?」と言って私は、その場から離れた。あんたはどっか行ってよ、とでも言うようにその女子が私を睨んでいたからだ。
お昼時間が来ても、私となんか一緒に食べる友達なんかいないし、仕方なく人目のつかない外の建物に隠れるベンチに座っておばあちゃんに作ってもらったお弁当の蓋を開けた。
「やった……おばあちゃんの料理」
そう言ってほほ笑んだ。これから毎日、おばあちゃんのお弁当を食べることになる。私はおばあちゃんの料理が大好きだった。煮物、佃煮、厚焼き卵、たくあん、炊き込みご飯……。だから、おばあちゃんの料理を食べれるお昼時間だけが、学校での唯一の楽しみになるだろう。
「やった! お煮つけ入ってる……!」
ぼそっと小声で吐いた言葉。すると、左の耳に「ふぅ~」という声と共に風が当たった。ビクリと体を跳ねらせ、後ろを向く。すると、すぐ近くに人間の顔があった。
「うわあああああ! ……な、な、なんですか!?」
あまりにも驚いた私は、すぐさま立ち上がり、ベンチから離れた。
「あはー。こんなところにいる人初めて見たから、気になっちゃって!」
その人は、可愛らしい顔をした男の人で、ベンチの後ろ側から身を乗り出して私を見ている。その顔は中性的な印象を与えた。笑った瞬間、目じりにシワができる。
こんな笑顔見たら、女子はイチコロだろうな。こんな美男子と喋るのは初めてだよ。ビックリするぅ。
あ、そうですか、と言った後、私は崩れたかもしれない前髪を整えながら、おそるおそる再びベンチに腰掛けた。
「君、一年生でしょ?」と、その人が背中越しに話しかける。
「はい。そうですけど……」
『そうか……じゃあ、これから頑張んないとね』
「はい……ん?」
さっきの可愛らしい男の人のはずなんだろうけど、さっきより声がずいぶん低くなったような気がした。不思議に思って、左の方を振り向く。
「え、え、え?」
そこにいたのは、さっきまでの可愛らしい人からはほど遠い全然知らない人だった。
「だ、誰ですか?」
「誰って……」
少し長い前髪を目にかすらせている優等生って感じの、又しても美男子が、驚いたような顔でのどかを見つめている。
「変身でもできるんですか? さっきまでしゃべっていた人と全然違うから……」
すると、右の肩をトントン、と叩かれた。
「僕はここだよ」
と言ってさっきまでしゃべっていた可愛らしい男の子が顔を後ろから、ひょこっと出して来た。
「あ……良かった。超能力の持ち主なのかって思いましたよぉ。姿を変えられるのかなって……」
「あはー、
「俺? いや、お前がいたから来ただけだよ」と優等生が言う。
すると、「おいおい、喧嘩はやめろよー」という声がした。
また違う人の登場!?
気付いたらその人は後ろにいた。今度の人は少し切れ目で、クール系の男の人。アーモンドっぽい髪の色で……これ地毛なの?
「喧嘩じゃないよ、ただ話してるだけじゃん」と、可愛い方が口を尖らせて言った。
一体、何人来るの? てか、全然お弁当食べれないし!
「のどかはなんで――」
と、アーモンド頭が言った。すると可愛い人と、亮という人がきょろっとアーモンドの方を見た。私は、その言葉に疑問を抱いた。
なんで私の名前、知ってるの?
「のどか、だよね名前」とアーモンド頭が私に尋ねた。
「そうですけど……何で、私の名前を知ってるんですか?」
「……たまたま、廊下で君を見付けて、そのとき誰かがのどかって言ってたからさ……」と彼が言うので、武と話していたときのことかな、と私は思った。
「俺、
「知りません」
私がぶっきらぼうな言葉を投げつけた。
「知るわけないよねー」と亮をいう男の人が笑いながら言う。
「僕はね、
可愛い方が真似して言う。
「だから、知らないってば」と亮が言った。
「のどかに聞いてるの! 亮は、のどかじゃないでしょ?」と純斗が言い、鋭い目を亮に向けている。
「ついでに、俺は「亮、でしょ?」
私が重ねて言うと、亮は大きな目を開いたまま固まった。
「何で知ってるの?」と純斗が驚いて言った。
「さっき、純斗さんが亮って言ってたから」
そう言って、私はみんなに笑ってみせた。
その後、私がお弁当を食べていると「おいしそうー」とか「どんな味する?」とか
色々話しかけて来た3人。後から振り返ってみたら、あのときの私は “人見知りの私” じゃなかった。あんなにも素の私でいられたのはなぜだろうか。なにも考えなかった。ただ心と体が落ち着いた。
今では他人と会話をしても3秒で終わってしまっていた。
私があんなに人と、それに異性と、あそこまで心を許しながら会話をするなんて有り得なかったはずなのに……。あの人たちといると、落ち着くような……ただの男の子じゃないような……昔から私を知っているような、そんな不思議な感覚に襲われた。
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