1-42 戦いの決着
白く濁った湯気の中を突っ切る。
「繧ッ繧ス縺。隕悶∴縺ュ縺! 菴輔b隕悶∴縺ュ縺?◇繧ッ繧ス縺」
ノワールの薬品が顔にかかった時に、動きが止まったことから眼を頼りにしていると思ったが、どうやら予想は当たっていたようだ。
勿論、俺だって同じ状況ではある。
現に今もただただ白いばかりだ。
だが何も
「……そこか」
俺は
白い視界に、浮き出るように黒い
俺の眼は死を視ることができる。
死の塊と化している
視界の有利は戦闘に直結する。
従ってアドバンテージはこちらにあった。
バレないよう
そしてすれ違いざまに一閃。
肉が裂け、血が吹き出す。
「逞帙∴! 縺ゥ縺薙□繧ッ繧ス縺!」
しかし見る間に裂けた肉はすぐに塞がる。
恐るべき回復力。
これでは例え100回斬りつけても意味はない。
けれど今はこれでいい。
あくまで狙いは心臓。
だがそうやすやすと攻撃できる箇所ではない。
注意を逸らすためのひと工夫が必要だ。
その為に斬りつける。
まずは俺の殺気を感じ取ってもらわなければ。
何度も攻撃を続ける。
足を斬る。
腹を斬る。
腕を斬る。
手を斬る。
指を斬る。
斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬斬斬斬斬。
何度目だろうか。
斬りかかる前に、身構えるようになった。
俺の攻撃パターン、殺気を覚えたようだ。
攻撃を避け、余裕があれば反撃もしてくる。
凄まじい戦いのセンス。
神の化身としての能力か、あるいは素体になっているザフールだから為せることか。
「蛻?°縺」縺ヲ繧薙□繧医け繧ス縺」
反撃の時間だとでも思っているのだろう。
それが罠とも知らずに。
頃合いだ。
俺は
「髮鷹ュ壹′! 豁サ縺ュ!」
引っかかった。
ガラスの砕ける音。
肉が溶ける臭い。
投擲物――俺のポーチ――は粉みじんになり、中身がばらばらと散らばる。
その中には、黒い
ハエを模した呪具が衝撃に耐えられず塵となっていく。
大量の
そうして殴りかかったポーチの中に入りたるは、ノワールから譲り受けた大量の薬品瓶。
劇薬を無防備にすべて浴びるのは、流石の化け物でも辛かったらしい。
痛みに耐えかね顔を手で覆う。
そんな
今だ。
このタイミングしかない。
思いっきり息を吸い込むと、叫ぶ。
「ルアネェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
戦死の死神の名を。
それだけで十分。
アイツが俺目がけて武器を投げるのを失敗するはずがない。
背中に感じる殺意。
同時に迫る風切り音。
左に少しそれつつ、右手を差し出す。
パシ!
わずかな衝撃とともに、手の中に柄が収まる。
見れば、右手にあるは夜空より黒い短剣。
黒い
死神の武器。
後はこれを…………。
駆ける。
「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
思わず出る、咆哮が。
そうしないと身体が思ったように動かなかった。
恐怖に打ち勝つためではない。
躊躇いを断ち切るためだ。
化け物。
打ち勝たなければならぬ敵。
人を助けるための仕方ない犠牲。
分かっている。
でも、それでも――。
次々に浮かぶ雑念を振り払うため、叫ぶ。
そして飛び込むように
黒い
それはあっけないほど簡単に、
途端、
それまでの戦いが嘘みたいだったかのような、静けさが漂う。
「……縺?」
そして少し身体を痙攣させた後に、盛大な音を立てて倒れた。
動く様子はない。
湯気が消え、視界が晴れていく。
荒れ果てたギルド長室。
そこには横たわったままの
勝負の行く末は明らか。
フー、と息を吐く。
勝った。
俺は、勝ったのだ。
◇
「ふふふ。とても良い戦いを見させてもらったよ」
「やったね! お兄ちゃん!」
「怪我などはございませんか?」
三人が近寄ってくる。
「あぁ。おかげでな。それよりも気を抜くなよ」
俺は相槌を打ちつつも、短剣を構える。
一番の敵は倒した。だが、まだ終わりではない。
ギルド長を捕まえる必要があった。
彼は俯いていた。
一歩、また一歩。
ギルド長に迫っていく。
そしてあと少しというところで、しわがれた声が響いた。
「認めぬ。認めぬ。認めぬぅううううう!」
ギルド長が怒号を発する。
嫌な予感がした。
何もさせてはならない。
だが残念かな、ギルド長の行動のほうが早かった。
「ザフゥウウウル! 最後は道連れじゃああああ!」
ギルド長の指輪が猛烈な光を放つ。
ボコり。ぼこぼこ!
俺たちの後ろで不気味な音が聞こえる。
振り返ると、
「っつ!」
出来ることは限られていた。
俺は慌てて、
次の瞬間。
激しい爆発音が鳴り響く。
視界が閃光で染まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます