1-34 突然の再会
カリオトさんを助けると改めて決意し、呪術師を捕らえてから数日。
様々な事件が起きた。
例えばカリオトさんが、
「
というと、暗殺者に襲われ死にかけ、俺が撃退する一方で、ルアネはちゃっかり俺を戦死させようとしてくるなんてことがあり。
他にもカリオトさんが、
「
というと、毒で死にかけ、俺が治療する一方で、ノワールは計算ずくで俺を病死させようとしてくるなんてことがあり。
よせばいいのにカリオトさんが、
「
というと、呪いで死にかけ、俺が解呪する一方で、クロベニはノリで俺を呪死させようとしてくるなんてことがあり。
……なんか少し、いやかなりおかしい気がするが、今は置いておこう。
とりあえず俺たちは忙しさに振り回されつつも、カリオトさんの命を狙う黒幕の手がかりを集めていた。
大変な日々ではあったが、同時に充実もしていた。
そんな毎日を送っていたからだろか。俺は当たり前のことを忘れていた。
この街には元パーティーメンバーがいることをだ。
彼ら、いや彼との再会は突然だった。
◇
その日は幸いなことに何の事件も起きなかったので、俺と死神たちの四人は黒幕を追い詰める証拠をカリオトさんの元へ運ぶため街の中を移動していた。
因みにカリオトさんには、秘密部屋に隠れてもらっている。この部屋を知っているのは俺たちと、カリオトさん、それにカリオトさんが絶対の信頼を置いているギルド職員のみだ。よほどのことがない限り、問題は起きないだろう。
まり歩きながら話す余裕が俺たちにはあった。
「お兄ちゃん、良いものもらったねー!」
クロベニが俺の持っているソレを、うらやましそうに見つめる。
「そうかぁ?」
心臓を模した呪具の何がいいのだろうか。
以前、捕らえた呪術師が使っていた呪具だ。捕縛した報酬として、俺が貰うことになった。
縁起が悪そうだし個人的にはすぐにでも売り払ってしまおうかと思ったのだが、クロベニが待ったをかけたのだ。それなりに珍しいものだから、持っていたほうがいいとのことだった。
俺には全くそう思えないのだが……。
「クロベニの言う通り、希少であることには間違いないかと思います」
「そうなのか?」
不可解そうな顔を浮かべていた俺を見かねてか、ノワールが補足を入れてくれる。
「はい。誰かの心臓の代わりとなる呪具です。基本的な使用法としては憎い相手の心臓の代わりにし、じわじわと痛めつけたり、あるいは呪術を直接かけたりするのがあげられますね」
今までの冒険で、そんな呪具聞いたことがない。
稀有なことは間違えないようだ。
もっとも見た目通り、ろくでもない使われ方しかされないようだが……。
間違っても知人に使ったりしないように注意しなければ。
そう思いつつ、おっかなびっくりポーチへとしまいこむ。
「キエル。素晴らしいものを手に入れたじゃあないか。大切にしたまえよ」
ルアネが明け透けにそういう。
戦死の死神で、なおかつ戦士を自称する死神が、呪いを肯定してしまっていいのだろうか。
「前から思ってたけど、ルアネって意外と柔軟だよな」
「ん? どういう意味だい?」
「いやさ、戦士っていう割には、呪術とかの絡め手とかも否定しないというか」
「あぁ、なんだ。そんなことかい」
当たり前の質問をされたかのように、ルアネが肩をすくめる。
「戦士というのは勝つことが何よりも大切なのさ。その為なら、使えるものは使ったほうがいいのは至極当たり前のことだろう? それがたとえ呪術だろうが、なんだろうがね」
いつも気取ったことを言うルアネにしては、随分と現実的な発言だった。
「なんというか、なんでもありなんだな」
「私から言わせてもらえば、君たちが縛られすぎてる気がするけどね」
ルアネがいつも通りドヤ顔を浮かべつつ意味深なことを言うので、何を言いたいのか追求しようとしたその時だ。
「よぉ。キエル」
背後から俺を呼ぶ声がする。
身体が強ばるのを自覚する。
それもそうだ。その声は俺をパーティーから追放した奴のものなのだから。
慌てて振り返る。
「…………ザフール」
そこには元パーティーのリーダーを務めているザフールがいた。
追い出されてから、だいたい一週間ぐらいが経つ。
その間に何があったのだろうか。様相は大きく変わっていた。
装備はどれもこれも傷だらけになっている。よほど過酷な冒険に行ってきたのだろう。
また顔も痩せこけ、精彩に欠けていた。
だが眼の鋭さは無くなっていない、それどころかより一層増している。ギラギラとした目つきで終始、あたりをぎょろぎょろと見回していた。
「久しぶりだな……元気か」
「あ、あぁ。どうにかやってるが。どうしたんだいきなり」
見た目のわりに、あまりに平坦な声でザフールが話しかけてきたので、若干驚きつつも返事をする。
そしてその驚きは次のザフールの発言で吹き飛ぶ。
「そうか……なぁキエル。俺のパーティーに戻ってこい」
「は?」
頭が真っ白になった。
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