第9回 ゴートゥーを待ちながら

寅衛門「…この題名の元ネタを知っている層とカクヨムユーザーの層は被っているのか?」

寅吉「そんなこといったらこのアカウント自体がカクヨムのカテエラの煮凝にこごりですわのう」

寅衛門「かてえら?」

寅吉「カテゴリーエラー、という単語の略称のようです。例えば、異世界ファンタジーのカテゴリーに現代学園ラブコメ、女性向け恋愛小説カテゴリーに男主人公チート能力ハーレム要素、略してチーレムのピンク髪脳死ヒロインのラブコメファンタジー小説をぶち込むようなものです」

寅衛門「まってまって、追いつかない!単語の理解が追いつかない!」

寅吉「…ふう、このひと月、最近のラノベ界隈を把握するのにかかった時間を思えば感無量ですなあ」

寅衛門「なにをやってたんだ、お前。作者は足にマメを作りながら次作の取材をしていたんだぞ」

寅吉「なんだかんだで作者も脳筋のカテゴリーですなあ」

寅衛門「…またワカラナイ単語が出てきた」

寅吉「で、作者、なんでまたそんな」

寅衛門「あいつ、旅が趣味なんだが、このご時世、旅行はあかんだろう。不要不急の外出も控えるようにと政府からお達しが出ている」

寅吉「そうなると、某静岡県にモデル地がある羽代藩の取材にも、某赤石山脈のどこかに位置する黒河藩の取材にも出れませんなあ」

寅衛門「まあちょうどいいといえばちょうどいいんだよな、次作は江戸がメインになるから」

寅吉「作者、都区内住みだから散歩名目で取材に出れるわけですな。徒・歩・で」

寅衛門「徒・歩・で。バカだろう。皇居ランナーに混じってあの辺りを歩き回っているらしい」

寅吉「皇居ですか」

寅衛門「江戸城だからな」

寅吉「ああ。…羽代藩は何か関係が?」

寅衛門「羽代藩の江戸藩邸上屋敷が日比谷に、中屋敷が築地にあるという設定らしい」

寅吉「あれ新宿にも何かあると言っていませんでしたか」

寅衛門「新宿の角筈、今の西武新宿駅を中心にした半径2kmほどのエリアのどこかに羽代藩江戸藩邸下屋敷をおく」

寅吉「3つあるんですか」

寅衛門「上屋敷はいわば藩の大使館。藩主とその家族の住居、並びに政務が執り行われる場だ」

寅吉「ああ、屋敷の呼称によってその役割が決まっているんですね」

寅衛門「特に上屋敷についてはこれは幕府によって場所と機能が厳格に決められている。藩主とその家族はここ以外に住むことは認められていなかったそうだ」

寅吉「はあ。では中屋敷は」

寅衛門「前の藩主が隠居して住んでいることが多い。物を置いたり、藩士を宿泊させたりと、上屋敷を補佐、補填する役割があるが、これは藩によって様々だったらしい」

寅吉「では下屋敷は」

寅衛門「なんでもあり」

寅吉「ん?といいますと」

寅衛門「大名によっては中央から少々離れたところにこの下屋敷を構えて、参勤交代の最終中継地点にしたり、芋畑にしたり、馬場を作ったり、鉄砲鍛冶を呼び寄せたり、広い土地を確保してそのように使っていた大名もいたらしい」

寅吉「エゲレスの貴族あたりの荘園のようなものでしょうか」

寅衛門「…エゲレス?」

寅吉「ふむ、また殿がワカラナイ単語を使ってしまいましたな」

寅衛門「…いや今のは分からなくていいんじゃないか」

寅吉「ほれ、次に進んでください」

寅衛門「え、あ、ああ。…えっと、大名によっては江戸城に近いところに下屋敷を構えるものもいたらしいが、これは将軍の御成りを期待してのことだったと。別嬪な愛妾を住まわせてみたりしていたようだな」

寅吉「…男のロマン」

寅衛門「将軍に差し出すんだぞ?」

寅吉「儂が将軍だったら…」

寅衛門「そっちかよ」

寅吉「でも分かりました。羽代藩の屋敷が3つ、しかも都区内に散らばっているということは登場人物もその辺りを右往左往するということですな」

寅衛門「しかも藩主自身が他の所にも行きたがっている」

寅吉「加えて藩士にも色んな所に出向を命じると聞いております」

寅衛門「そのすべての地点について、実際に歩いて移動にかかる時間や土地の高低差、目に映ったであろう風景を再現しているらしい」

寅吉「高低差、ですか」

寅衛門「ああ。東京は何回か壊滅的に破壊されているから、京都のように歴史がそのまま残っている場所は皆無に近い」

寅吉「関東大震災に東京大空襲がありましたな」

寅衛門「だが、土地の高低差だけはかなり当時のままで維持されている」

寅吉「…タモリがそんなことを言っておりましたなあ」

寅衛門「ぶらタモリ?」

寅吉「いや、タモリ倶楽部」

寅衛門「…うち、白玉が見せてくれんの、ソレ」

寅吉「独身の醍醐味ですな」

寅衛門「いや、江戸の高低差の話だからな」

寅吉「おっとそうでした、そうでした!」

寅衛門「で、結構東京の江戸市中エリアは坂が多い。今日も作者はお茶の水坂付近でマメが潰れて靴下が血に濡れた」

寅吉「ああ、その辺りの経験が流血必須の物語構成につながるんですな」

寅衛門「…『風浪』はマメで済むような話だったか?」

寅吉「はて」

寅衛門「作者はスマホのグーグルマップと嘉永慶応年間尾張屋江戸切絵図を見比べながらもぞもぞと歩き回っているらしい」

寅吉「切り絵?」

寅衛門「当時発行された住宅地図のことだ。かなり仔細に書かれているから今の東京の地形と見比べることが可能で、なかなか感心することしきりらしい」

寅吉「それは…全然前に進まないのでは」

寅衛門「グーグルマップみて切絵図みて道路見て、警備員から浴びせられる不審な視線を逸らし」

寅吉「いつか職質されそうですな」

寅衛門「そうしたらここでその報告をするらしい」

寅吉「それでこそカクヨムユーザーの鑑です」

寅衛門「マジか」

寅吉「マジだぜ!」

寅衛門「…うっわ、めっちゃ昭和」

寅吉「え、ナウでヤングな決めゼリフではないのですか」

寅衛門「チーレムのピンク髪脳死ヒロインなどと言っていた同じ口から出た単語とは思えんな」

寅吉「芳江ちゃんに教えてもらったんですがのう…」

寅衛門「芳江ちゃん、何歳だよ」

寅吉「今度、聞いてみますわ」

寅衛門「…生きて帰って来いよ」

寅吉「…はい(決死)」


寅衛門「そんなこんなで」

寅吉「虎猫ズ!」

寅衛門「今回も駄弁にお付き合いいただき、ありがとうございました!」

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