第12話 動揺渦巻く国々
鬼姫 シュラの封印が解かれ数週間後。
陰陽寮と呼ばれる国に属さない中立組織が太古の大戦で名を全世界に知れ渡らせ封印された鬼姫、鬼神シュラが解き放たれたと各地の大名に伝えた。
この事実は素早く大名の耳に入り、瞬く間に全ての国々に知れ渡る。
それほど恐ろしき事だった。
今までおとぎ話の中でのみ存在していた零クラスの妖魔が解き放たれたのだ。
反応は様々、楽観視する者、脅威と感じ会議を緊急に取り付け話し合う者達、それぞれ。
この世界には冒険者ギルドが無い。
だが、妖魔を退けるために結束された組織がある。
悪霊祓いと呼ばれる者達が所属する組織、陰陽寮。
彼らは遥か昔より妖魔と戦い続けて来た組織だ。
この世界には陰と陽が存在する。
妖魔は陰 そしてそれに対抗するのが陽を使う悪霊祓い達。
いわば光と闇の様な関係だ。
クラス零、これは壱 弐 参 肆 伍 陸 (1〜6)危険度を表している。
壱 一つの国の危機。
弐 大きな町や複数に及ぶ村の危機。
参 多数の生命の危機
肆〜陸 強い妖魔〜弱い妖魔
このように別れているのだがその中でも特例…規格外の妖魔が存在する。
クラス零 人類滅亡の危機
…
槿花と呼ばれる国を収める女猛将、シンゲンは部下達に招集をかけていた。
「で…揃ったな?」
シンゲンは、集まった4人の面々を見つめ話を始める。
槿花4天王。
彼らはシンゲンの下につく武将達で、最強と名高い。
「では、話を始めろマサトヨ」
「はっ」
その呼びかけに応え四天王の一人が頷き地図を広げた。
「では、話をさせていただきます」
そう言い地図の黒く塗りつぶされた地帯を指差す。
「まず…ですがこの、神に見放された地についてですが…」
内容は鬼姫の封印が解かれたと言う話しだ。
遥か太古の昔…人と妖魔は争っていた。
人の目的は、森を開拓し人間達が暮らせる土地を増やす事。
そしてアマテラスを崇める人間にとって妖魔と言う存在は絶対悪であった為だ。
妖魔はまるで害虫の様に増え森を侵し古くからそこに住まう同胞を殺され怒り狂い人間を怨んでいた。
そしてアマテラスを崇拝する人間に対し妖魔はツキヨミを崇拝している。
それだけ争いの材料が揃えば十分だ。
最初こそは双方共に小競り合い程度ですんでいたが。
やがて妖魔達の中でもクラス零である九尾、そして鬼姫が今まで烏合の衆
だった筈の妖魔族を従え人間達の前に現れた。
天下分け目の大戦 人妖の戦い
統率された妖魔の軍勢は数で攻める人間を圧倒的に凌駕しており戦いは妖魔の勝利となるかに思われた。
しかし、人はアマテラスに祈りを捧げ太陽の使いと呼ばれる一人の少女を儀式により召喚した。
武士もののふ
その彼女は強かった。
人が戦争を長期戦に持ち込ませる為に焦土作戦を決行。
そうした時間の間に武士である彼女は成長を遂げクラス零である九尾に深手を負わせる程の存在となった。
これに人類は歓喜し指揮が持ち直った。
久しぶりの勝利だった。
勢いずいた人類は次々と各地で妖魔を押し返し領土を取り戻す。
その際に武士は鬼姫と死闘を幾度と無く繰り広げたと聞く。
そうして決着がついた。
結果は武士の死 鬼姫の封印 だった。
それでも戦いは続き数年が過ぎた。
血で血を洗う戦いが続き死者は増え続く一方。
そんな世界に住む人間と魔族に神は罰を与えたのだろうか…。
ある日…死にゆく兵士達のの頭上に巨大な5つの魔法陣が現れた。
そこから出現するは巨大な竜の頭。
そして黒い霧だった。
黒い霧は恐ろしい呪いの霧でそれを吸った者は目が赤くなり黒い煙を体から発生させ凶暴化し生きる者。
人であろうが動物であろうが妖魔であろうが襲い食べるでも無く殺すと言う症状が現れる。
これは全ての生命、すなわち人間と妖魔にも感染した。
それにより戦争は終結する。
戦っている場合では無くなった為だ。
名も無き邪竜。
巨大な竜の頭が変異し見た事もない化物へと姿を変えた存在。
ドラゴン型の巨竜…が黒き瘴気を纏い世界に災いをもたらした。
その結果…。
これまでの歴史にありえなかった文を刻む結果となる。
人妖同盟結成
これが本当に起こった出来事なのか…それは確認しようが無いが確かに古くボロボロの歴史書に書かれている。
同盟を組み協力する事で名も無き邪竜を討伐…体を8つに分け封印
しかし黒い瘴気は消えず致し方なくかつて戦場となった大地ごと封印した。
それが黒い瘴気の残る神の見捨てた地と呼ばれる場所だ。
その地の中心部にて鬼姫の封印が解かれたと陰陽寮が国の主要人物達にのみ警告している。
「なるほどな…誰も入れぬ地でひとりでに復活…か」
シンゲンが理解し頷く。
この事による影響は今の所はまだ確認されていない。
そうマサトヨは話を一旦締めくくる。
この話を今まで聞いていた者達は重い沈黙の中それぞれ地図を見ていた。
その中の一人、ノブハルは首をかしげつぶやく。
「そう…言われてもだな…その話は神話だ。
本当に鬼姫なる者がいるのかどうか…」
「だが…現に九尾はおるでは無いか。
この話…真実と見定め、最悪の状況を危惧すべきでは?」
目を瞑ったまま、マサノブは話を続ける。
「もし…仮にではあるが…鬼姫が神の見捨てた地を抜ければ。
妖魔共は活発になる筈だ。
最悪には歴史が繰り返される事にも…」
そう言い続ける仲間達を見据え一人マサカゲは別の心配事を胸に秘めていた。
「それより…シンゲン様。
ノブナガの軍勢の件なのですが…。
確実に領土を広げ、戦力を大きくしております。
このまま奴を放置すれば後々我らを飲み込む程の大きな大火となる事でしょう」
ここ数年、とある小さな国の武将が周辺国を侵略し拡大し、もはや人間世界に名高る3大勢力に数えられる程までに大きく力をつけていた。
何度も潰すべきだとマサカゲは進言してきた過去を持つ。
それにはシンゲンも理解していた。
だが…ここまでノブナガが成長するまで動けなかった理由がある。
現在も我が国との戦を幾度も続けているケンシンと呼ばれる武将が収める地、隣国 牡丹 。
この2国の戦力は拮抗しお互いスキを見せぬよう。
睨み続けている。
この3つの問題に頭を悩ませ会議は膠着としていた。
だが…。
今からもう一つ問題が増える事になる。
ドタドタ
廊下を慌ただしく走る音に5人は耳をすました。
この大切な会議に…この家臣の慌てよう。
ただ事ではない…。
「シっ…シンゲン様!!
ご報告致します!!
あの…呪われ神の見捨てた地を見張る為の城壁都市 不楽が………」
駆けつけた男は息を荒く言葉を詰まらせた。
「続けろ」
シンゲンはそう家臣に告げる。
不楽…呪われた地から出てくる凶暴化した妖魔を人里へ行かせぬ為に作った城塞都市。
そこに住む者達は強者ばかりで、名のしれた悪霊祓いも雇い配置している最強の砦。
例えクラス壱(1)の妖魔が出ても施設や集団戦術で対処可能。
その不楽でいったい何が…?
家臣の男は息を整え伝えた。
「その…昨夜…たった一夜にして。
不楽そのものが…。
破壊されました」
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