第11話 鬼姫シュラ
電撃が飛び、炎が燃え上がる。
双方、俺と狛犬は一歩も引く事無く戦い続けていた。
「アルドペルフェクト 『大地よ』〈上級〉」
大地が狛犬を飲み込もうと波の様に襲う。
しかし動きが早く捕らえきれない。
岩の体に雷を纏わせた二匹の式神。
その動きは素早く、厄介だ。
炎は効かないらしく、当たっても攻撃を続けてくる。
おそらく雷も効かなそうだ。
となると残される魔術は土属性の魔法。
そして水の魔法。
「アグアゲショス 『水弾』」
この魔法は岩をも砕く水の玉を撃つ魔法。
当たれば効果があるはず。
だが…当たりはしない。
避けられ後方の石柱を粉砕するのみだ。
「くっ、まずっ!!」
その空きを疲れ一匹の狛犬が石の牙を剥き噛み付こうとしたその時。
無意識に…俺はスキルを行使した。
なぜか、その時…出来ると思ったのだ。
「十字砲火!!」
次の瞬間。
両手に炎が現れ目の前に迫る狛犬に向けて振り下ろした。
ドォオオオン!!
両の炎が狛犬に命中し爆発した。
その爆発は凄まじく祠を吹き飛ばし、更にはもう一匹の狛犬をも巻き込んだ。
それなのに不思議と自分は立っていられる。
爆風がひとりでに避けて居るのだ。
爆風が収まり。
恐る恐る、目を開けるとそこには狛犬の残骸、そして祠の中からはひょうたんが現れていた。
そっと狛犬の瓦礫を避け進みひょうたんを持ち上げる。
『よくぞ、倒した。
認めようぞ、妾の器に。
名前は……』
「ルークだ」
『ふっ…そうであったなルーク。
これから、よろしく頼む』
それにしても、このひょうたん。
今なら分かるが恐ろしい妖気?か分からんが。
とにかく禍々しい何かを感じる。
どうやら、本当にやばい奴らしい。
それでどうやって、俺の体内に入れるのか?
そう聞こうとすると、光が真後ろで輝き消えた。
ひょうたんを抱え振り向くと狛犬の破片が空中に上がり一つに纏まり二枚の紙人形に変わる。
「あれは?」
そう聞いた途端、紙は空へと高く舞い上がり空の彼方へと消えた。
『ふん…祠の守護を命じた奴らのもとに帰っただけだ。
そう気にする事ではない。
そんな事より…。
早くこのひょうたんの栓を抜き。
中の妖気を全て飲み干せ』
そう言われ俺は戸惑う。
まさか、そんなふうにシュラを取り入れるとは。
そう戸惑っていると、辺りに異変が生じた。
どうやら黒い霧から守っっていた壁が消えたらしく黒い霧が辺りを飲み込むように包んだ。
『これは…まずい…。
式神が消えた事で結界が消失したようだな…。
ルーク!
急いで妾を飲見干せ!!』
そうシュラが叫ぶと…。
ズシャァアアン!
大きな大木が頭上より迫り祠の土台ごと俺を吹き飛ばした。
結界が消えた事により、外にいる凶暴化した妖魔が襲って来たのだ。
もう残された時間は無い。
俺はひょうたんの栓をキュポンと音を立てて抜き口につけるとシュラを一息に飲みこむ。
赤い巨大な体を持つ鬼が再び巨木を振るう。
しかしそれは地面につくことは無く小さな子鬼の細い一本の腕に止められていた。
「ふはは…一体、いつぶりだ。
妾が外に出られたのは…」
そう言いニヤリと笑みを浮かべる。
「ひさびさに……。
ひと暴れしてやるかぁ!!」
シュラは大鬼の持つ巨木を握り潰し粉砕。
飛び上がると大鬼の顔面に回し蹴りを叩きこんだ。
すると頭は回転し、ブチリと千切り取れ暗い霧の中へと飛び…消えた。
「さぁ、次!
かかってこい」
『おい、どうなってる』
体が勝手に動き、ありえないほど力が湧き上がってくる。
意識ははっきりとしているが誰か知らない存在が自分の中にいるという、不思議な感覚。
「お前は休んでおれ。
ここを抜けるまでは妾が体を使ってやる……おい…邪魔す…。
なるほど、人格は俺の方が強いのか」
少し確認の為、自分を動かしてみた。
結果…問題無く動かせる。
『おい、ルーク貴様…。
妾の邪魔をするつもりか?
聞いておるのか?』
シュラの話を無視し体に異常が無いか確認する。
解析…。
ルーク (シュラ) 小鬼
【火】【餓鬼】【土】【修羅道】
【怪力】【妖糸】【麻痺毒】【威圧】
また増えた…。
これは間違いなくシュラを入れたからだろう。
状態は問題なし。
カサカサ…。
「よし、終わった。
後は任せる……。
貴様…なかなか図太い性格をしておるなぁ。
この鬼姫を…っとと」
話していると、後ろから大蜘蛛が近づき襲いかかって来た…のでシュラは軽く身を翻し躱してみせる。
「鬼骨!!」
避け、すぐさま攻撃に反転、シュラの一撃は大蜘蛛の体を拳で殴り中に上げ潰す。
「まあまあの強さだな。
さて次は…お前か」
シュラは大百足を見て笑い、拳を鳴らした。
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