第10話 陰陽道
シュラと俺は話を進めかなりの時間が立つ。
その話の中で一つ、取引の話が出た。
それは、シュラの封印を解く代わりにこの霧を抜ける手伝いをする、と言うものだ。
正直、これには問題がある。
まずだが、封印を解ける自信がない。
そして、この黒い霧、話を聞く感じだとこの世界はもともとこんな物は無かったと聞く。
つまり、もうこの世界の住人は滅んだのではないだろうか?
という点だ。
黒い霧をそもそも抜ける事が出来ずこの先もずっと続いている可能性がある。
「一応聞くが、封印を解くにはどうすればいい?
それと封印を解いた瞬間に俺を殺さない確証が欲しい」
一応の為だシュラのコトバを信じるのならば彼女も妖王の一人。
魔王と同格の存在だ。
彼らから見たら俺など羽虫のような存在。
約束をわざわざ守るとは思えない。
『殺さない確証?
それなら問題は無い。
妾には肉体が無いのでな…。
その今持っている、そなたの肉体が必要なのだ』
なに!?
なら、別の問題が出てくるのでは?
「それはつまり…人格を乗っ取りたい……。
と言う事か?」
ふと思った事だが…それを確認…相手を揺さぶって様子をみる。
『ふ…安心せい、人格を取らずとももとの体には戻る事ができる。
この長き年月の間に消えた妖気を取り戻せば我が肉体を形成できるのでな。
つまり…その妖気をお主の体で集める事が必要なのだ』
「それじゃあ、あんたがいようがいなかろうが、この黒い霧を抜けるのは自力じゃないか?
それとも…あんたが復活するまで待てと?」
その問にシュラは笑って答える。
『クク…それも、問題は無い。
妾を取り込むのだぞ?
この鬼姫と恐れられた妾を。
強くならぬ道理などあろう事か…』
なるほど…。
やってみる価値はあるか。
どのみち、この黒い霧を抜けるのは難しいだろう。
恐らく俺一人では仮に外があるのならだが…魔力が尽きてあの化物共の餌になり果てるだけだな。
罠かも知れんが何もせずここに居続けるよりはましか。
少しでも前に…彼らのもとへ。
そう俺は思い、頭を縦に降るのであった。
「分かった、その話。
受け入れよう」
…
あれから少し話を聞きながら数日休んだ。
体の損傷はNo.18 ポーションタブレットのおかげで治ったが、魔力と体力が回復していなかった為だ。
彼女を自分の肉体に入れる方法。
それは祠の扉を開ければ教えると言う。
数日休み、体に問題は無いかとNo.2 スーリヤで自分の体を調べた時。
異変に気づいた。
ルーク 小鬼
【火】【餓鬼】
ここまでは今まで通りのスキルだそれに付け加え…。
【怪力】【妖糸】【麻痺毒】【威圧】
がスキルに増えていた。
どれも、知っているスキル。
この世界に来て戦い続けていた妖魔達のスキルだ。
なぜ!? 分からない。
こんな…あり得るはずはない。
普通スキルは1つ持っているだけでも珍しい事なのに。
状況を見るからに吸収?コピー?したと見るべきだろうか?
今までこんな事は無かった。
俺が妖魔になったからか?
この世界の常識か?
それとも最初の2つあるスキルに起因するものか?
そう可能性を頭に浮かべていく。
いや…今はいい。
まずは体に問題が無い事は分かってる。
答えは取り敢えず置いておくことにした。
これを良しと捉えるか悪しと捉えるべきか……。
スキルは強力だ。
それは分かっている。
だが、使い方が分からない。
それに、これ程スキルを持つ者がいた事例が無いため何か問題が生じてもおかしくは無いだろう。
体がこのスキルに耐えきれないとかな…。
だが今はその不安を押しのける。
『おい…いつまでそこで座っているつもりだ?
さっさと妾をこの忌まわしき封印から解け』
「まあ待て、これからやろうと思ってた所だ」
俺は立ち上がり祠へと足を進める。
その時、何処かからか声が響いた。
(そこで立ち止まれ!!)
「おい、シュラ?
何か言ったか?」
『妾では無い、そこの狛犬よ。
式神だ、まずはそやつ等を倒せ。
まずはそこからだ…。
妾がそなたの器に収まるか見定めよう』
そうシュラが言った瞬間。
石で作られた彫像と思っていた二匹の狛犬が動き出し、目の前に飛び降り祠への道を塞いだ。
「これは…話に無かったが?」
そう言いながらも俺は身構え呪文を行使する。
「メガフレイム!! 『炎よ』〈上級〉」
炎の玉が飛び、狛犬を襲う…が。
狛犬達はびくともせず口を開け唱え、反撃する。
それは、初めて見る術だった。
(陰陽道、雷術……雷雲)
二匹の狛犬の体が雷に包まれる。
陰陽術、この世界に存在する陰と呼ばれる闇のエネルギー、そして陽と呼ばれる光のエネルギーを使った、魔素を必要とせず行使する技。
当然その事を知らない。
そして彼らは魔術の事を知らない。
お互いに見た事もない術に驚きながらも戦いの火蓋が切られる。
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