18話
んー、でも怒らないというか、怒“れ”ないに近いのかもしれないけど。
もちろん、例外は除くってヤツだけどねぇ。
「私は嫌です! このようなふざけた教師のもとで学ぶなど! それならば山籠りでもしていた方がマシというもの!!」
「なら山籠りしてくれば?」
「なっ……!?」
あー、暇になってきた。虫がなにか喚いても面白くないし、飽き性のボクにはキツいものがあるよ。この不毛なやり取りもうやめてくれないかなぁ。この感じだと、あと三十分は終わらなさそう。
いっそ、止めるかなぁ。……あ、そうすれば良いのか。うん、それは良案だ。よし、止めよう!
「あのですね、私はそういうことを言っている訳では……!」
入るとしたらここら辺かなぁ。
素早く席を立ち二人の間に入ると、ボクは先に何かを言われる前に発言する。
「まぁまぁ、そこは抑えて!」
ボクが介入すると久東とかいう女はボクの方を睨んできた。
どうやら怒りの矛先がボクに切り替わったようだ。
「あなた、なんですか? 邪魔をしないでくださる?」
…………ん? ……んー、そういえば……久東、久東ねぇ……?
あぁ! 思い出した。あの自称エリート家系の久東家かぁ! エリートとか謳ってる割には簡単にボクに殺されたあの九東進の家系! あれは笑いものだったなぁ。最後はみっともなくボクに命乞いしちゃって! ふ、ふふ…………あぁ、危ない。この緊迫した状況で笑っちゃうところだった。
ふぅん。じゃあこの女は九東進の娘なのかぁ。
「聞いていますの? 人の話はしっかり聞きなさい!」
自称エリート一家の女はヒステリックにそう叫ぶと平手打ちをかましてきた。えぇー? いきなり乱暴だなぁ。
「なっ……! 受け止められた……? この私の攻撃が?」
ヒステリックに加えて自意識過剰の要素もあるの? 弱いくせになに粋がっちゃってるんだか。これならまだそこに座ってる小学生くらいの女児の方が強いと思うよ?
「あ、あっぶねぇ……! おいおまえ! 久北だか久南だか知らないけど暴力はいけないと思います!!」
教室中からズコッ、と聞こえた……気がした。
うん、今のはボクも“ナイ”と思ったよ。……まぁ、だからこそやったんだけど。
そして自称エリートの方は激昂しちゃってるみたいだ。南無三南無三。
「あなた、今の間違いわざとでしょう! 久東家は歴史と誇りある偉大な家系。久東家を愚弄するなど万死に値しますわ!!」
っ……?! あ、あっぶなー! 今のは本気で笑いそうになったっ!! というか今でもヤバいんだけど? ひぇー、危ない危ない。こういう自分に自信持ってるヒト見るとつい殺したくなっちゃうんだよねぇ。今そのテンションになったら教師といい蒼炎サンといい、
というか、さっきからこの女の攻撃がうざいんだけど。教師も止めないし、これがガッコウの普通なのかな? まぁ、それはそれで別に楽しいから良いんだけど。
「お、落ち着けって! 攻撃が当たったらどうすんだ!!」
「っ当ててるのよ!! それなのになんなのよ、あなた! 全っ然当たらない!!」
当たり前でしょ。甘っちょろい箱入り娘如きに負けるような育ちしてないから。
「え、えぇ? よく分からんけどすまん!!」
「じゃあ大人しく当たりなさい!!」
あれれ? 顔が真っ赤だね? ムカつく? ムカつく?? あっははー! たのしー!! ボクこういう自惚れてるヒトをおちょくるの、かなり好きなんだよねぇー!
にしても弱いなぁ、あはは。ホント、こんなのがエリートって笑っちゃう。やっぱりオモテってのは血筋の意味をはき違えてると思う。先祖の強さ=血筋の優秀さだと思ってる時点でもう笑える。ウラと違って常に平和だから、平和ボケでもしてるんじゃない? 一回ウラに来れば否が応でも分かるよ。日常というものは薄氷の上に成り立っている儚いものなんだって事がね。
にしても飽きないなぁこの女。逆に感心してきた。
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