第19話 12月に読んだ本
一昨年、昨年と冬にヒヤシンスの球根を育てていました。
白いヒヤシンスは清らかな感じがするし、花が咲くと部屋がとてもいい香りで満たされます。
その球根を花が咲き終わった後、捨ててしまうのはなんだか忍びなくて(ベットの横のチェストで声をかけながら育てたから愛着があって…植物は声をかけると元気に育つって言いますよね)そのまま飾ってたんです。
ガラスの器に皮のカバーが付いているナチュラルテイストな感じだから、インテリアとしてもいいかな〜って。
そしたら!今、その球根にぷっくりとした芽が出てきてるんです!
2年目の球根だから、花が咲くかどうかはわからないけど、今年は新しい球根は買わないでこの子を育てようと思います。
そんな12月に読んだ本は
「書店ガール7」碧野 圭さん
「あさひは失敗しない」真下みことさん
「人質の朗読会」小川洋子さん
「きまぐれな夜食カフェ」古内一絵さん
「悪の猿」J・D・バーカーさん
「汚れた赤を恋と呼ぶんだ」河野 裕
「あい」
「晴れときどき涙雨」高田郁さん
「ネオカル日和」辻村深月さん
「テスカトリポカ」佐藤 究さん
の全部で10冊でした。
その中で特に心に強く残っている作品は
「書店ガール7」「きまぐれな夜食カフェ」「悪の猿」「晴れときどき涙雨」です。
(「きまぐれな夜食カフェ」は前回触れたので今回は省きます)
「書店ガール7」
シリーズの最終巻です。
1年に1冊、7年以上に渡り、書店、出版業界、そこで働く人々の思いを教えてくれた大好きなシリーズ。
最終巻だと思うと、とても寂しくなりました。
4つの章のタイトルは
愛菜、彩加、理子、亜紀
となっています。
この物語の個性豊かな主人公の女性たちです。
書店のアルバイトを辞め、中学校の司書教諭になった愛菜さん。
パンカフェの併設された本屋さんを開店するため故郷に帰った彩加さん。
全国展開の大型書店の東日本エリアマネージャーとなり、99年続く老舗書店の閉店騒動の只中の理子さん。
そして、5年の本部勤務から店長として現場復帰をする亜紀さん。
みんなそれぞれの道を歩んでいきます。
全巻を通して巻頭に
「本と本屋を愛するすべての人に」
という言葉が記されています。
物語にも、本と本屋さんを愛する人々がたくさん登場します。
何度も、うんうん頷き、私も一緒の気持ちだよ、そう思いながら読んできました。
著者の碧野さんは作家としてデビューする前は、出版社の編集者でした。
しかもこの物語を執筆するにあたり、本屋さんで実際に働くということまでしてみえます。
私は本屋さんで働いた事はありません。
でも、物語を通して、登場人物達の心を通して、本に携わる人々のいろんな思いをたくさん教えてもらいました。
ますます、本屋さんが、本が大好きになりました。
100年後も200年後も、ずっとずっと本屋さんがこの世界にあり続けてくれますように。
そう心から願いながら、これからも本屋さんで本を買い、そして読んでいきたいと思います。
「悪の猿」
「見ざる、聞かざる、言わざる」そして悪行を「しざる」になぞらえ殺人を繰り返す連続殺人犯「四猿」
事件を追いかけるシカゴ市警の刑事。
四猿が残した手がかりの一つである日記。
そこには幼い頃のあまりにも戦慄に満ちた日々が記されていました。
サイコパス…そう一言で言ってしまうのは簡単です。
でも、だれの中にも善の部分と悪の部分が混在し、善だけの人も、悪だけの人もいないと思います。
ただ、善と悪、その割合を、どちらをより多くしていくか…それはその人のこうありたい、という願いや志であると思っています。
幼い日々、その願いや自分の価値観を培う大切な日々を病的な基準で歪められてしまったら…この「四猿」はまさにそんな子供時代を過ごした人でした。
その環境を生み出した四猿の両親。
どうしてそういう価値観を持つに至り、躊躇わずに行動するにいたったのか…この作品では触れられていなかったけど、そこもとても気になりました。
人が人を裁くということは、本当の意味ではできないと思っています。
罪を犯した人、その人の背景を知っていくと、ただ単純にその人個人だけを責めることができない気持ちになります。
だからと言って、被害を受けた人の無念さを思うと…どうしたらいいのか…私にはわからなくなります。
この四猿も数々の殺人はとても残酷で容赦がなくて猟奇的です。
でも、自分の私利私欲で犯罪を犯しているわけではないんです。
悪行をする者を裁く、悪行を許さない、そんな基準があります。
だからと言って、卑劣な人だから命を奪ってもいいということにはなりません…
難しいです…ぐるぐるといろんなことを考えさせられました。
この作品はウタさんが紹介されていた作品でした。
まるでアメリカのドラマを見ているような気持ちになりました。
きっと、ウタさんがおススメされていなかったら手に取ることはなかったと思います。
読み応えのとてもある、怖いけど(夢に出てきそうなシーン多数…!)でも、深く物事を考える機会を与えてくれた作品でした。
3部作の第1作なので続きも心して読んでいきたいと思います。
ウタさん、ありがとうございました!
「晴れときどき涙雨」
高田郁さんのエッセイです。
法曹界を志し挫折したこと、網膜に穴があいてしまったこと、交通事故にあいその後遺症に苦しんだこと、漫画原作家から時代小説家へ転身し、なかなか軌道に乗らない苦しみの中、支えとなった人や言葉のこと…
いろんなことがあって今の高田さんなんだ、そうつくづくと思いました。
そのいろんな経験を通して知っていった思いが作品の中に染み込んでいるんだって。
そういう道のりを経て、私の大好きな「みをつくし料理帖」のシリーズは生まれたんだな…って。
Twitterをしていた時
「生涯手放さないと決めた本」
というタグがあり、私は迷わず高田郁さんの「みをつくし料理帖」のシリーズにこのタグを付けてツイートしました。
このタグを作った方は、毎週日曜日の夜に本に関する配信をされていて、私はすごく楽しみに聞いていました。
(残念ながら現在は終わっています)
その配信にはいろんなコーナーがあって、その中の一つに「心の本棚」というコーナーがあったんです。
リスナーの特別な本を紹介してしてもらえるコーナーでした。
私も「みをつくし料理帖」で取り上げてもらえました。
その時のことは今でも大切な思い出です。
その方はアカウントも消えてしまったので、たぶん、もう2度とお話する機会はないかもしれないけど、その時のことを思うと今でも感謝の気持ちでいっぱいになります。
この本の中に、電車でみをつくし料理帖を泣きながら読み、大切に本を抱きしめるように降りていった女性のことが書かれていました。
私も昨年、電車の中でみをつくし料理帖を再読していて、どうしても堪えきれずに泣いてしまったんです。
一緒だ、ってうれしくなりました。
そうですよね。泣いちゃいますよねって。
きっと、私たちみたいな人は、たくさん、たくさんいるんだと思います。
高田さんは
「誰かの人生の伴走者になりうるような小説を書けたら、と心から祈っています」
と書かれています。
まさしく私にとっての「人生の伴走者の小説」が「みをつくし料理帖」のシリーズです。
私が1番、何度も繰り返し読んでいる物語です。
人が人を大切に想う心持ち、これ以上に大切なことが世の中にあるんだろうか。
読み返すたびに何度も泣きながらそう思います。
私の大好きな作品を書いてくださった高田さんのいろんなことを知ることができて、うれしかったです。
今回読んだ本で辻村深月さんと高田郁さんの本をコンプリートできました。
これからは新刊を心待ちにして読んでいきたいと思います。
今月は明日も更新したいと思っています。
大晦日で皆さんきっとお忙しいと思うので、すぐにじゃなくても何日後でも全然大丈夫なので、お時間がある時に読んでもらえたらうれしいです。
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