第10話 6月に読んだ本

第165回の芥川賞と直木賞の候補作品が発表されましたね。

私は芥川賞候補作では、李琴峰さんの「彼岸花が咲く島」

直木賞候補作では、一穂ミチさんの「スモールワールズ」が気になってます。

発表までに読みたいな…と思っています。


発表は7月14日。

年に2回のお祭りだから私も選考を楽しみに、ちょっと辛口な解説のネット配信で発表を楽しみたいと思っています。


そんな6月に読んだ本は

「V.T.R.」

「琥珀の夏」

「光待つ場所へ」辻村深月さん

「丸の内魔法少女ミラクリーナ」村田沙耶香さん

「鬼人幻燈抄 明治編 夏宵蜃気楼」中西モトオさん

「正欲」朝井リョウさん

「星の子」今村夏子さん

「本屋さんのダイアナ」柚木麻子さん

「蓮花の契り」高田郁さん

「灰の劇場」恩田陸さん

そして、辻村深月さんの絵本「すきって いわなきゃ だめ?」

の11冊でした。


特に好きな作品は

「V.T.R.」「光待つ場所へ」「本屋さんのダイアナ」です。


「V.T.R.」

辻村さんの作品「スロウハイツの神様」を読んだ時、登場人物のカリスマ的人気作家チヨダ•コーキことコウちゃんこと千代田光輝さんがとてもとても好きになりました。

コウちゃんの書いた物語を読んでみたいって強く思いました。


自分を支え、ギリギリの「今」の中、やっと掴めた命綱を握りしめるように読んでいた、そんな人達にとっての「神様」みたいな物語。

それが、コウちゃんの小説です。


この「V.T.R.」はコウちゃんのデビュー作品なんです。

書いているのは、もちろん辻村さんだってわかっています。

でも、これは圧倒的にコウちゃんの作品でした。

主人公ティーを通して見える世界、語られる言葉のひとつひとつにコウちゃんらしさが滲み出ているんです。

本当にうれしかった。やっと読めた、って。


巻末にはちゃんと「解説」もあるんですよ。

それを書いているのは「スロウハイツの神様」のとある登場人物。

こういう演出(っていうのかな?)痺れます!


それだけじゃなくて、本当の表紙を開くともう一つ表紙があります。

それは「V.T.R」チヨダ•コーキの表紙なんです。

出版社はもちろんコウちゃんがデビューした「代々社」(物語の中の出版社です)

折り返しまでイラストで再現され、チヨダ•コーキの略歴が記されています。

徹底してますよ!裏表紙も奥付まで再現されているんです!

もう、感無量です。

(講談社文庫さんありがとうございます!)


辻村深月さんがよく言ってみえる「物語の持つ力を信じてる」って言葉。

それをそのまま形にした作品「スロウハイツの神様」と「V.T.R」

私も辻村さんの言葉を信じてます。


「光待つ場所へ」

「冷たい校舎の時は止まる」に繋がる短編が3つ。

「スロウハイツの神様」に繋がる短編が1つ。

「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」「名前探しの放課後」に繋がる短編が1つ。

全部で5つの短編集。


特に心に残っているのは「スロウハイツの神様」に繋がる物語。

私はコウちゃんが好きだから「スロウハイツの神様」を読んだ時、彼を傷つける人に対して良い感情を持てないし、好きにはなれませんでした。


でも今回「スロウハイツの神様」では語られなかった違う側面の物語を知りました。

好きになれなかった登場人物のその生い立ち、その道のりで形造られた価値観と信念が、自分の愛する世界を守る姿を貫く美学として、その人を奮い立たせていました。


コウちゃんを傷つけた事に腹を立てていた私でさえ、カッコいいと思える姿でした。

特にラスト!読み終えた時、思わず拍手をしてしまいました。

そうせずにはいられない物語でした。


こうして人のことをいろんな角度、側面から知っていった時、ずっと嫌いでいるなんてできないのかもしれないですね。

みんな、それまでのいろんな道のりを経て今のその人になっていて、ちゃんと理由があるんです。


もしかしたら辻村さんは、「スロウハイツの神様」では憎まれ役、悪者みたいになってしまった、この登場人物の本当の姿を知ってもらいたかったのかもしれないな…と思いました。

辻村さんの物語、登場人物たちに対する深い愛情を強く感じました。


「凍りのくじら」と「名前探しの放課後」のちょうど間の中学生の郁也くんに会えた事もうれしかった。

そして、彼にちゃんと泣くことができる場所がある事に胸がいっぱいになりました。


語り出すと止まらなくなりそうです 笑


あらためて、辻村さんの作品を読めることの幸せを感じました。

ありがとうございます!って大きな声で言いたくなりました。


「本屋さんのダイアナ」

自らをティアラと名のるお母さんと2人で暮らすダイアナ(漢字は大穴…)は本が大好きな女の子。

裕福な家庭のクラスメイト彩子ちゃんとダイアナはお互いに強く惹かれあい、かけがえのない親友となります。

強い憧れをお互へと真っ直ぐに注ぐ2人の女の子の物語。


全く違う環境で、願っていることも正反対なのにやっぱりどこか似ている2人。

小学生の2人の出会いはキラキラと輝くばかりに運命的で、ときめきと愛おしさが止まりませんでした。


その後、別々の道を歩むことになる2人。

違う世界で様々な経験を通して、いろんな気持ち、想いを知っていきます。


有名な「赤毛のアン」

私も「アンの青春」までは夢中で読みました。

でも「アンの愛情」を読み終えてからは、この物語のダイアナ同様に興味を失ってしまったんです。

その理由も同じでした。

この物語を読み終えた今、改めて「アンの愛情」から、その続きを読みたいと思いました。


ラストを読んでいる時、私も桜舞い散る春の中、愛してやまない大切な本を抱きしめている気持ちになりました。

全ての女の子に贈りたい物語です。



世の中にはものすごい数の本があって

なのに、それが全部違うお話で、それって本当にすごいことだと思います。

もっともっと読めたらいいのに、そう強く思います。

まだまだ私の知らない物語の世界がある、そう思うとワクワクします。


7月はどんな物語の世界に出会えるのか楽しみです。

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