02
「ねえ、1万円」
女はそういう。渡したくもない。でも、渡さないと激怒される。なので、渡すのだ。何のためか、それは俺が傷つかいないようにだよ。精神的にも、肉体的にも。
そして、女はどこかへと出かける。男と遊ぶですか。それともパチンコですか。それすらやっぱり、聞くことが出来ない。でも、分かってる。ジャージで、サンダル姿だ。パチンコであることは分かっている。そこに男は居ないのかもしれない。でも香水の匂いはまとっていた。
水槽の中の金魚が俺を見ている。ぷくぷくと肺呼吸を繰り返す。
アルバイトに出かけよう。部屋中には鼻に詰まるような香水の匂いが、まだ、漂っている。
「朝倉さんって、モテそうですよね」
俺に話しかけないでほしい。
「そうですか」
単調に淡泊に話す。関わりたくい。
ボンバーも、それ以上は何も言わない。
「いらっしゃいませ」
客はボンバーの前を通り過ぎて、俺に商品の清算しに来た。客は笑顔で会釈をして、店から出て行く。
ボンバーの本当の名前ってなんだけ。俺は興味のない人間の名前を覚えることが苦手だ。だから、勝手にあだ名をつける。女でボンバーヘットだから、ボンバーだ。 「後は任せてもいいですか。俺、商品の補充に行ってきます」
そのまま、レジ場を離れる。あっという声を無視して、離れていく。
補充など、不要と分かっているが、店内を捜索する。ほとんど、今日は客足がないので、補充するものはなかった。
「あの、すみません」
「はい」
「そこの湿布、とっても貰ってもいいですか?」
一瞬、どこから声がしているか、分からなかった。目線を下げると、小学生の女の子がいた。
「ああ、これね。どうぞ」
目線がちょうどの所にある商品を取って、女の子に渡す。
「ありがとうございます」
それを抱えて、女の子は、ボンバーのいるレジに向かって小走りで向かっていった。目線を上げると、ボンバーと目が合ってしまった。すぐに逸らしたが、何で見るんだと苛立ちを覚えてしまう。
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