第31話 大波乱

 巨大なクレーターに犇めくモンスターを一掃する為に手分けする事になった。


「リンゼ!」

「了。」


 巨大な地竜の攻撃をリンゼの大盾に受け止めさせる。

 あわよくば大盾関係のスキルを得て欲しい、今の所ホープの教育のお陰なのか鑑定スキルを所持している。ただ、タンクとしての大盾必須スキルをほとんど所持していない...。


「問、後どれくらい耐えればよろしいでしょうか」

「もう少しで大盾の技術レベルがあがると思うんだけど...」

「報告、既に大盾の技術レベルは最大です」

「え?嘘?」

「否、本当です」


 ホムンクルスってそんなに覚えが早いの?

 頭に疑問符が浮かぶ。確かに私もレアな弓、それも獲得経験値増加系の特殊スキルが備わった武器を使っていっきに技術レベルを上げたけど...リンゼの持つ大盾はなんの変哲もない鉄の大盾...基礎スペックの違いか...。


「考察、おそらく初期スキル全装備適正の恩恵かと思われます」


 なるほど...。

 ずるい...軽く初期スキルに嫉妬しつつも納得する。

 適正があれば、そもそも覚えるのが早いようだ。ならば手っ取り早く、秘術までレベルを上げてもらおう。


「じゃあ、秘術までレベル上げちゃおうか」

「報告、既に最大です」

「うざ」


 つい本音が出てしまった。

 私もあの弓を使えば技術レベルはどんどん上がっていった、ただ...秘術レベルは大して上がらなかった...それを...たった数分で?私の数年の努力は?


「考察、個体名ゼルセラの素体を元に記憶が構築されているので、個体名ゼルセラが優れているということになります」

「それは知ってるよ....悔しいほどに...」


 やっぱゼルセラ様の影響か...。


「報告、記憶領域に干渉あり、個体名ゼルセラがスキル名シーラを元に作られている記憶が消されました」

「ん?どういうこと?確かにゼルセラ様も創られた存在っていてたし...覇王様がそのシーラってスキルを参考にゼルセラ様を作った?ってその記憶が消された?!」

「是、何者かにより記憶領域への干渉を受けた模様です」


 記憶の改竄...そんなに必要な事だったのかな...


「報告、改竄された内容を報告します、【スキル名シーラが個体名シーラ】に変更されました」

「ん?何が変わったのそれ...」


 正直何を言ってるのか分からないので、置いておくことにする。

 要するに、そのシーラって名前の人を元に作られているゼルセラ様が優れているって事だよね?よくわからないけど、これで納得しておこう。


 色々考えた結果、頭が痛くなってきたので、そろそろ竜を倒してしまう事にする。とは言っても、リンゼの習得した大盾スキルも見てみたいので、私はちょっとだけ攻撃をする、こうする事によって戦闘した判定になり経験値がもらえるのだ。


「よし、じゃあリンゼ適当な大盾スキルを見せて欲しい」

「了、【カウンター】」


 竜の攻撃を起点とし衝撃波が生まれた。

 そしてその衝撃波は容易く竜を消し去る。


「うわぁ~!凄い威力」

「解、スキル名【カウンター】は初期で相手の攻撃を等倍で返しますが、秘術レベルが最大になった現在その倍率は10倍です」

「そりゃあ強い訳だよ...」


 あっさりと竜を撃破した私達はかくとくしたアイテムを確認する。

 はぁ...私が手に入れたのは椅子...まさかの家具...【竜彫刻の椅子】でそれなりに拠点は一時の付与効果が高い...でも欲しいのはこれじゃない...。

 あたりの中でもはずれの部類だろう...残念。


「報告、高水準な大盾を入手しました。武装の変更を要求します」

「いいよ。どんな武器を手に入れたの?」


 リンゼの持つ【鉄の大盾】がなくなり、代わりに黒を基調とした竜の彫刻されている大盾が現れる。


「詳細、【地竜紋の大盾】物理カット率上昇、魔法カット率上昇、特殊スキル...」

「あぁいいよいいよ、読み上げなくても...私も鑑定スキル持ってるから」

「了」


 ふむふむ...この特殊スキル【地竜の領域】とはなんだろうか...。


「この特殊スキル【地竜の領域】ってなに?詳細わかる?」

「解、周囲の味方プレイヤーの防御力の上昇、及び転移効果の付与となります」

「転移効果?領域の中ならリンゼが瞬時に移動できるって事?」

「是、その認識で在っています」


 結構いい大盾なようだ。

 これで更なる戦力アップが見込める。


 さて...あの砂塵はなんだろうか...。

 遠くからこちらに猛スピードで向かって来る集団に私は溜め息をついた。


「報告、多数の敵性反応を確認」

「うん...知ってる...」


はぁ...

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