第18話 始まりの村

【始まりの村 イジ―】


 大草原から一番近くのこの村は最初に訪れる事が出来る村で、販売品も最初ならではの、初級から上級までだ。

 住民のほとんどは感情を持ってない、だからこそシリュウを見ても驚かないし、例え子供の見た目でも、平然と武器を購入できる。


 食料や調味料それに回復アイテムの多数、生活に必要なものを買った私たちが次に目を付けたのは武器屋だ。

 低品質だが、様々な武器が揃っている。

 直剣に短剣、大剣に特大剣。

 特大剣なんてこんなの人間が持てるサイズじゃないし、そもそも今の私に持てるサイズではない、まず...自分の身体よりも大きい。


 そんな特大剣をつぶらな瞳で見ている、シリュウは置いておいて...。

 イチゴが眺めているのは刀と呼ばれる武器種だ。

 刀を握りぶんぶんと振り回している、身長120㎝ほどの少女が片手で振り回す様は異様な光景ともいえる。


 ミルクとシープは武器なんて見てはいない、彼女たちが見てるのは、装備の類だ。

 シリュウに合う装備は無いし、私は兎角装備一式があるので問題はない、むしろこの一式より性能が高いのはほとんど置かれていない。

 防御面を見れば上級装備の全身鎧の方が性能はいいが自分の所持スキルとの相性も悪くそもそも...重量的に着れる気がしない...。

 その中でもミルクとシープが見ているのは完全に見た目重視の装備というより衣装だ。

 フリルのついた装備を眺めキャッキャとしている二人。


「きゅう...」

「ん?」


 特大剣から離れ私の元に来たシリュウが不思議そうに彼女を見る。


「どうしたの?」

「あんなに女の子らしい感情...いったいどうやって...。だそうです」


 イチゴがシリュウの言葉を翻訳し私に伝える。

 確かに...師匠も言っていた『感情をもっとるのじゃろ?』の言葉。

 その言い方だと、普通は持っていないはずという事だ、考えられる事はグレース様が感情を作った?そんな芸当が可能なのだろうか....。


「きゅうー!」

「覇王様であれば可能かもしれない...この世界を創造されたかたなら出来ると思う...。だそうです」

「え!?この世界ってグレース様が作ったの!??!?!?!」

「きゅう...」

「知らなかったんだ...。だそうです」


 確かに不思議だったけど...まさかこの世界が作られた世界だったなんて...。


「あの~その覇王様?」「グレース様?ってどんな方なんですか~」


 難しい質問をミルクとシープが飛ばしてくる。


「すごい人~?」「途轍もなくすごい人~?」

「その二択なら途轍もなく凄い人、そういえばシリュウとグレース様ってどこで知り合ったの?」

「きゅう...きゅうう...」

「家族と離れ離れになって泣いている私を見つけ出し、助けてくれた恩人。だそうです」

「シリュウ...私達似た者同士だったんだね...」


 そっとシリュウを抱きしめる。

 少し重たい空気になってしまったが、結局グレース様がどれほどすごい人なのかはわからなかった。


 不思議な感情のまま武器と服を購入し次のお店に向かう。

 次に向かったのは家畜などを販売しているお店だ。


 牛、羊、馬それから鶏を購入した。

 イチゴとミルク、それからシープが一匹一匹家畜と対話をし、決めた。

 牛2匹、羊2匹、馬一匹、どの子も元気で優しい子達だ。


 一匹だと可哀そうと思いに引きずつにし馬は私しか乗ることが無いので一匹、多分人型になるだろうという考えからだ。

 真っ白な体に金色の鬣、お値段は結構したが私の相棒だ、致し方ない...。


 馬は家畜ではなく相棒、なので契約石を使う。

 やっぱりと言うか案の定と言うか計画通りというか...。

 想定外だったのは美少女だった事、確かに馬の時でも美しさが伝わってきた。

 でも...真っ白な肌に綺麗なレモンイエローのヘアー、空の様に綺麗な青色の瞳。

 私こんな子に乗るの?!


 名前はホープ。

 機動力としての希望という意味を込めている。

 おっとりとしたお嬢様の様な性格のホープ仲良くなるのに時間は掛からなかった。

 人当たりのいい話し方に声色、ますます乗りづらくなってきた...。

 それは置いておいて...。肝心なのはステータスだ。


「【状態ステータス】」


 Lv:60

 名前:「ホープ」

 種族:【天馬】

 職業:【召喚獣】

 称号:【少女のペット】

 HP:60

 MP:10000

 ATK:130000

 DEF:450

 INT:13000

 RES:450

 SPD:800000

 スキル:【頭突きLvMAX】【噛み付きLvMAX】【瞬歩LvMAX】【猛突進LvMAX】【雷纏いLv50】【炎纏いLv50】【氷纏いLv50】【聖纏いLv50】【邪纏いLv50】【突撃Lv80】【空中歩行Lv35】【飛行Lv20】【回し蹴りLv50】【後ろ蹴りLv10】

 特殊スキル:【氷結耐性LvMAX】【聖魔耐性LVMAX】【空気抵抗軽減Lv25】【令嬢意識Lv20】【認識加速Lv20】【言語理解LvMAX】【決意の意志Lv5】

 究極スキル:【神速】【覚醒】【極醒】【極意】



 強い?攻撃力関係は高いが...防御面があまりにもお粗末だ...当たったら終わりなきさえする。でも...このスピードがあれば攻撃なんて当たらないか...。


「私のスキルがどうかなされましたか?」

「え?いや、スピード早いなぁって!」

「私の戦い方は速度で相手を撹乱し近距離で立ち回る事ですわ、ただ...欠点は異常なほど脆い事ですわ...」

「うん...見ればわかるよ...」

「武器は持ってるの?」

「私はいつもステゴロですわ!」

「え?ステ...何?」


 どうやらステゴロとは素手での戦闘の事を言うらしい。ほんとにお嬢様なのか不安ではあるが、さすがにモンスターと戦うのに素手という訳にはいかないので安い武器を購入し私たちは拠点に戻ることにする。


「せっかくだから競争しようよ」

「いいですわ」

「じゃあ、私はホープの背中に乗せてもらうから、ミルクとシープとイチゴはシリュウの背に乗ってね」

「きゅうー!!!」「勝負にならない!だそうです」

「ずるい~」「ずるいのです~」


 ホープが白馬になった後背中に乗せてもらう。シリュウは巨大化しイチゴ達を背中に乗せる。

 準備ができたらしいので合図を出す、


「よ~い!ドン!!!」


 次の瞬間私の意識は飛び...


「あれ...私は...なにしてるんだろ...」


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 何故か勝負をすることになったが...勝てる訳がないのでのんびりと空の旅を楽しむ。

 スタートど同時にホープとミーシャの姿が掻き消えたがあのステータスなら可能だろう。

 最初の内はミルクとシープも地上を見下ろし楽しんでいたが、余程今日の買い物が楽しかったからなのか寝てしまっている。

 こんな高所で寝れるなんて胆が据わっている。逆に起きているのはイチゴだけだ。


「イチゴは寝ないの?」

「別に...」

「ミーシャが居なくて寂しいって?」

「別に...そんなんじゃありません」


 こう見えてイチゴはミーシャの事が大好きだ、直接本人には言わないと思うけど...。

 好きなのが分かっているから、イチゴがミーシャに意地悪しててもなんとも思わない。


「そろそろ素直になったら?ミーシャきっと喜ぶよ?」

「別に好きではありませんって!それにどうして貴女がわかるんですか!」

「だって妹だもん。わかるよ...それくらい」

「だったら、貴女だって素直になればいいじゃないですか!」

「わかったわかった...ミーシャが気付いてくれるまで待とうか」

「いいですよ...どうせ気付いてくれませんし...」

「そうだね~鈍感だからね私のお姉ちゃん...」


 そんな会話をしながら夕暮れに染まる空を飛行する、寝ている子達も居るので、スピードはあまり出せない、ほんとにのんびり飛んでいる状況だ。


 しばらく飛んでいるとイチゴが何かの異変に感づく。


「今、ミーシャの匂いがした気が...」

「匂いって...」

「本当です...」


 イチゴが身を乗り出して地上を見るので慌てて止まる。


「ちょっと、そんなに身体だしたら落ちちゃうって!」

「あそこです!あそこの草原!」


 目を凝らしてみると一人の少女が草原に倒れこんでいる。


「ミーシャ!?」


 不安と焦燥に駆られ急いでミーシャの元まで下降していく、それなりの高度にも関わらずイチゴは心配なのか飛び降りて駆け寄っていく。

 ミルク達が寝ているので、巨大化を解くわけにはいかないのでそのまま近寄りミーシャを抱えたイチゴを背に乗せる。


「ミーシャ...ホープは...」

「わかりません...ですが..今は取り敢えず拠点に急ぎましょう」


 少し飛んでいると草原に涙をばら撒きながら走る一匹の白馬が見えてきた。


「ミーシャ...どこなのぉ....」


「ホ~プ~」


 私が声を掛けるとホープはミーシャの姿が見えたのか安心した表情を見せる。

 よかった一先ずは無事みたいね...。

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