第17話 新たな仲間と買い物

 牧場作り...結果を言えば失敗だった。

 そもそも論...手っ取り早く家畜を手に入れる手段がないのだ、この世界どういう訳か契約しないとある程度離れると家畜が消えてしまうのだ、最初はそれに気づかず狩りに出かけては消え、疑問に思うばかりだった。


 つまり、そこら辺をうろうろしている牛や羊を捉えた所で、今の所家畜として機能させる事は出来ない。

 仮に契約石を使ってしまうと家畜が自我を持ってしまう、いや、持ってしまった...。


 その結果...ミルクとシープが仲間になった...。

 戦闘には向かない完全に非戦闘要員だ。

 主に家畜の世話を得意としている二人。そう二人...。


 どうやら人型になるスキルを所持しているらしく牛と羊は人型となった...。

 柔らかな表情とおっとりとした雰囲気があり、胸がかなり大きい少女のミルク。

 牛だからと可愛い名前を付けたが、いざ名前を付けてみれば人間に似た少女になってしまった...あんな幼気な少女を乳牛として扱う事は私には出来ない...。

 なので、いずれ家畜用の牛をゲットできた時にお仕事を与えるつもりだ。

 それまでは、ミルクちゃんとして拠点で生活をしてもらう。


 そしてもう一人。

 真っ白い髪をした緩くてふわっとした見た目をしている羊のシープちゃん。

 ミルク程胸が大きい訳では無いがそれなりにはある。

 基本的にマイペースでぽわぽわとしている、話を聞いてるかも怪しい...。

 ミルクと同じく戦闘は出来ずいずれは手に入れる羊飼いとして頑張ってもらう予定だ。


 そういう訳で、新しく二人が仲間に加わった訳だ。

 拠点がにぎやかになって個人的にはうれしい。

 ただ...ミルクとシープも食事が必要らしく、それの確保が必要となる。

 そして私とシリュウの主食である兎肉は苦手らしく、イチゴもこれには反対している。

 イチゴ、ミルク、シープ、この三人から兎肉を反対され悲しむシリュウと私...食事からお肉が消えるのは悲しい。とはいえ、それ以外の食料が手に入る見込みはない。

 そこで自分たちの野菜は自分たちで作ってもらおうと思ったのだ。

 牧場作りは後回しにし、先に農場を作ることにする。


 ミルクとシープは野菜系なら何でもいいというので、手持ちで代用する、そして問題児のイチゴ、残念ながら人参は持っていない。

 話つぃとシリュウは早々に諦めようとしたが、イチゴがダダをこねるので仕方なく探しに行くことになった。

 大草原の反対側には町があるらしく、人参が売られている可能性が高い。

 幸いな事に兎系のアイテムや素材はあるので、お金に関しては問題ないだろう。


 せっかくなのでイチゴとミルクとシープも連れてみんなで行くことにする。

 シリュウが巨大化を覚えたので移動は簡単に行える。

 徒歩だとか二日から三日は掛りそうだが、シリュウの背中に載れば半日も掛からない、さすがシリュウ。

 初めて大所帯で旅に出る。それが一番楽しかった。


 大きな草原をシリュウの背に乗り飛行する。


「快適ですね~」

「はい~」


 普段からのんびりしているミルクとシープは平常運転だ。

 ただ...


「イチゴ...大丈夫?高い所苦手なんだね...」

「うるさいです!!話しかけないですださ、さい!」


 うん、ばっちり怖がってる。

 あまりにも怖がっているのでミルクとシープに視線を向けると察してくれたのか二人はシープに寄り添い落ち着かせようとしてくれている。


「大丈夫だよ~怖くな~い怖くな~い」


 やがて安心したのか、恐怖で疲れていたのか、イチゴは眠りについてしまった。


「寝ちゃったの?あはは...もう着いたんだけど...」

「ぎゅおーー」

「とうちゃーーく!だって~」


 ミルクとシープもシリュウの言葉がわかるので、訳してもらっている。

 到着したはいいものの...イチゴが寝てしまった訳なんだが、さすがに少女が少女を背負って町を回る必要が出てきてしまう。

 流石にそれは厳しい。


「シリュウ、少しだけ小さくなってイチゴを背負ってきてくれないかな」

「ぎゅう~」

「任せて~だって~」


 シリュウのサイズはみるみる小さくなり、少女一人を背負ってちょうどいいサイズにまで落ち着いた。


「きゅ~」

「お待たせ~。だって~」

「よし!いこっか」


 それほど大きい町ではない、以前住んでた孤児院のあった王都と比べると差が激しい。

 町の入り口をくぐると目の前に文字が表示される。


【最初の村 イジー】


 どうやら町ではなく村らしい。


 人もそこそこ居るが、ドラゴンを見ても何の驚きも見せない、ただ一人の客として対応をされた。

 違和感もあるが、ゼルセラさんが言っていたNPCというキャラクターだろう、感情がない存在らしい。

 しばらく歩いていると雑貨屋が見えてきた。

 とりあえずお金がないので、素材を売ってお金の確保が優先だ。


 話しかけても従来通りの対応しかされないので値切り交渉は意味をなさない。

 それでも、意外にも兎から出た素材は金になった。


 資金もできたので雑貨屋を見て回る、回復ポーション、魔力ポーション....買うべきか否か...


「わたし~回復魔法なら使えるよ~」

「シープって回復できたんだ...」

「MP少ないから初級を一回だけだけどね~」

「・・・」


 よし、両方とも買っておこう。

 あっ牛肉...。

 私が牛肉に手を伸ばそうとすると手首をがっちりと掴まれる。

 恐る恐るつかんできた手の主の方に視線を向けると無言で手に力を込め続けるミルクのと目が合う。

 普段はあんなにゆったりとしている子の無言の圧とはこれほどまでに恐ろしい事か...。


 そっと隣の牛乳を手に取ると無言の圧は笑顔に変わる。


「私~牛乳なら出せるよ~」

「・・・」


 牛乳も買っとこ....。

 流石にいたいけな少女からミルクを出させるわけにはいかない...。


 ふらふらと見回っているとイチゴが人参を5本ほど握りしめてこちらにやってきた。

 その他にも必要な雑貨を多数抱えている。

 人数分の皿やコップなどを持っている。


「・・・」

「えぇ...?」


 疑問を浮かべるイチゴに何も言わず頭を撫でてあげた。

 この子はまじめでほんとにいい子だ...しみじみ思う...。


「よしこれ位かな」

「きゅぴ~」

「満足~だって~」


 雑貨屋を出た私達は大本命の武器屋に向かった。

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