第312話同窓会メンバー3人に精神的ダメージを与えるために反抗してみた3

 佐野、加納はスマホと奏介を何度も見ながら、パニックである。

「は!? え、は?」

「ど、どういう、え、ID?」

「だからさ、人を陥れて友達と笑ってる様子が丸見えだったってことだよ」

 奏介はスマホを振ってみせる。

簡潔に説明しても理解できないらしい。

「読み上げてやろうか? 塚江さんについてのやりとり。『今日、また説得しに行ってきたんだけど、すっかり元気になって学校へ復帰するってさ。危なかったよねー。そうそう。泣き落としみたいな。演劇の才能あるかもw とりあえず戻ってくればこっちのもんだよね。ま、あたしは鈍臭女嫌いだから消えてくれても良いんだけど、クラスの奴らの目がキッツいし。適当に仲良くしとけば良いよねー。あー、でもまたみんなでイライラしてストレス溜まりそう? そしたら、教えてあげないとね?』って?」

 奏介は鼻で笑った。

「随分と楽しそうに入院中のクラスメートを馬鹿にするじゃん」

 加納は、カッと顔を赤くした。

「そ、そういうことね。どんだけ非常識なことしてんのよ。あたしの友達になりすましてやりとりするとか、ド変態の犯罪者じゃん。プライバシーの侵害ってやつじゃん」

「え、塚江さんを階段から突き落とした犯罪者がなんだって? 入院させるような怪我させてるクズが、よくそんな口を利けるよな。びっくりだよ。塚江さんが生きてたから良いけど、死んでたら殺人だぞ。それをわかっててへラヘラメッセージやり取りしちゃって、頭おかしいだろ」

「はぁ? 突き落としたのはあたしじゃないんですけどー?」

「ああん? 何お前、直接やった奴しか罪に問われないとでも思ってんの? 実行犯が別にいるだけでお前が主犯だろ。塚江さんを突き落とせって命令してやらせたんだろうが。何をドヤ顔で胸張ってんだよ。警察に被害届出したらまとめて逮捕案件だっての」

「な、なんであたしが主犯てことになんの!? 適当なこと言わないでよね!?」

「主犯でも実行犯でも仲良く逮捕だから安心しろ。どっちにしろ、塚江さんには被害届出してもらう予定だからさ。実行犯の御島みじまとかいう女が洗いざらい吐くんじゃないか。お前ら、仲間のこととか普通に売りそうだし」

「あたしは主犯なんかじゃ……むしろ御島が……てか、被害届けって」

 奏介は加納とのメールのやり取りの画面を見せつけながら口を開く。

「このやり取り見せたら、塚江さんも彼女の母親も警察に相談するってさ。お前の本性、全部塚江さんは知ってるからさ」

 加納は悔しそうに唇を噛んだ。

「最っ低。勝手に個人的なメッセージ覗き見して、そうやって他人の人間関係壊して、何が楽しいわけ? 性格悪いのよ」

「元々俺は性格悪いし、お前に言われなくてもわかってるんだけど? 同窓会の時も思ったけど、俺のことを分かったふりして、本当に馴れ馴れしいやつだな。気持ち悪いんだよ。後さ、人間関係壊してって何? 元々、塚江さんを陰から笑ってバカにしてたじゃん」

「っ! な、馴れ馴れしいって何よ!? リリスにデレデレしてたあんたのほうがマジでキモかったんですけど!」

 りんなについては否定しないらしい。というか、決定的過ぎて出来ないのだろう。

 奏介が黙ると、反論チャンスだと受け取ったのだろう、佐野がぎゅっと拳を握りしめた。

「そうそう、リリスも不細工に気に入られてマジでキモかったって言ってたし! それに、なんでもかんでも告げ口してたら、人間関係なんてうまくいかないんだから! あんたのそういう性格が悪いんでしょ。小学生の時のあれだって、空気読めなかったのが悪いんだし。」

「いじめられる側にも問題があるってのは、まぁそりゃあるかもな。でも、限度ってものがあるだろ。病むくらいに精神的に追い詰めるのもそうだし、物理的に、すでに法に触れてるんだよ。いじめられる理由があったら、ロッカーに監禁して放置して餓死させようとしても許されるってことだろ? 頭大丈夫か?」

 奏介はとんとんと指で自分の頭を突く。

「ロッカー監禁と階段から突き落とすのは監禁罪と傷害罪で犯罪。ぞれくらいわからないの、ヤバいだろ。後、佐野は逆に下らないわ」

「な、何」

 名前を呼ばれ、佐野が怯む。

「友達と一緒に若原さんに良くない噂流して、彼女と別れさせてあわよくば寝取ろうとしてたんだろ? マジで下らねぇ。若原さんの彼女さん、目茶苦茶美人でさ、初対面の俺にも、誰に対しても優しく喋ってくれて、良い人だったんだよね。普通以下の顔で他人を貶めるようなことをしないと恋愛出来ないような奴がかなう相手じゃねぇんだよ」

 佐野がかぁっと顔を赤くした。

「こ、このクズ野郎っ! わ、若原先輩に変なことを吹き込んだのね!?」

 奏介はスマホの画面に視線を落とす。

「えーと、『朗報! 若原先輩、ほんとにあの女と別れたっぽいの。もう少しかも。最近めっちゃ話しかけてきてくれるし』ってメッセージあったけど、別れたじゃなくて別れさせた、だろ。若原先輩、大好きな彼女に振られて悲しんでたのに朗報って。好きな相手の気持ち踏みにじってんの、最悪なんだけど」

「こ、このクズオタク……!」

「ああん? 何回喧嘩売れば気が済むんだよ。度々俺に常識人みたいな発言してくるけどさ、同窓会に呼んだ人を罵倒して馬鹿にして笑い者にしてるような奴らは常識皆無だと思うけどね。仲間内ならまぁアリかな。でも、俺とお前らって他人じゃん? 冗談通じる同士じゃないって、言ったよな」

 その場がしんとなる。

「まぁ、いいや。さっきから黙ってる上嶺はパパが大変なことになってるし、今更どうしようもない」

 上嶺は表情を歪めた。

「お、お前、菅谷! こんなの異常だ! 同窓会のちょっとした嫌がらせからここまでするなんて」

「お前は何を言ってるんだ。ちょっとした嫌がらせに俺は最初からブチキレてただろ。しかも議員の変態親父に頼んでうちの父親にも嫌がらせしてんだろ。異常? そもそもお前が同窓会に俺を呼ばなきゃこんなことになってないじゃん。ここまで仕返しされるのが嫌なら、なんで俺を呼んだの?」

「ぐっ……」

 返す言葉がないようだ。

「加納はさ、塚江さんを階段から突き落とした御島が殺人未遂で逮捕でもされればお前も立場危うくなるからその時を待っとけよ。逃げられないからな」

「は……な、何それ。み、御島1人がやったことなのに」

「やっぱり速攻仲間売ったか。てか、いじめやってたグループ全員同罪だっての。まぁ、まずは見せしめに御島を警察に」

 と、その時。

 奏介の背後に立った人物が木の棒を振り下ろしだ。

 ゴッという鈍い音が、辺りに響き渡った。


※あとがき

明日、11日に続き更新します!

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