第294話自分での行為を迫る女子達に反抗してみた3
ゆうほとウメカは息を飲み込んだ。
それからお互い顔を見合わせる。
「……大岡達は、蒲島のあの動画をネットに流そうとしてんの。動画サイトの捨てアカウントにアップするって」
「へぇ、最低だな。あのクズ女。そのノリなら今日中にやらかしそうだよな。チャンネル名は?」
ウメカが教えると、奏介はスマホを取り出して、何か文章を打っているようだ。
「分かった。ありがとう。まぁ、それはそれとして、即効で友達売るとかお前らも相当なクズだな」
流れるような、静かな罵倒にゆうほとウメカは一瞬頭が真っ白になった。
「は……はぁ!? 何それ、あんたが脅迫みたいなこと言ってきたから」
奏介はため息を一つ。
「本当に偉そうだよな。女の子のパンツを無理矢理脱がせた変態ドクズのくせに」
二人はぐッと黙る。それから、ウメカは奏介を睨みつける。
「……何回も同じことを」
「はぁ? 同じことってなんだよ。お前らにとってはただの遊びだろうけど、蒲島さんにとっては自殺を考えるほどだったんだぞ」
「自殺?」
ウメカは眉を寄せ、
「え」
ゆうほはぽかんと口を半開きにした。ただの遊びだったのに対し、自殺などという物騒な言葉が出るとは。
「あー、その顔。最高に最低だな。どうせただの遊びなのにとか言うんだろ? あの子にとってはこれからの人生を諦めるくらい辛いことなのにさ。で、実際に自殺したら「私達は何もしてない」とか言い出して、親や教師に「お前達は悪くないよ、行き違いがあっただけ」とか言って慰められるんだろうな。俺から言わせてもらうと、お前らもうこの社会に必要ないよ」
「……は?」
「高校、大学、社会人になっても女の子のパンツ脱がして喜ぶんだろ? いや、キモいだろ。これから被害者増やさないために、消えてくれよ。いじめ楽しくやってる奴にこれから生きてく権利ないと思うわ」
ゆうほは奏介の言葉に震え始めていた。こんなに酷いことを言われたのは初めてかもしれない。
「何様のつもりよ!? いきなり暴言吐きやがって!!」
気の強いウメカが怒鳴る。
「せ、セクハラで訴えてやる。あんたみたいなキモい奴なら」
「え? 蒲島さんのパンツ脱がして動画をネットに流そうとしてるド変態がセクハラを訴える? いや、面白いこと言うよな」
「わ、私達は流してないし、止めたでしょ!?」
「もう大岡達とは関係ないみたいなこと言ってるけど、蒲島さんに謝罪してねぇだろ」
ウメカは動きを止める。
「本人に心から謝罪して初めて俺に言い返せるんじゃないのか? お前がキレてる意味がまったく分からねぇよ。まぁ、今更謝る度胸なんてないだろうな。あそこまでの仕打ちをした相手に頭なんて下げられないだろ。良いか、二度とやるなよ。次はないからな。お情けで見逃してやるけど、こういう、取り返しのつかないいじめやっといてこの先幸せな人生送れると思うなよ、このド変態のクズ共が」
奏介はそう吐き捨てて、背を向けた。
ウメカは体をふるわせ、ゆうほはその場に座り込んだ。
「何あれ。なんであそこまで言われなきゃならないの」
「……こ、怖かった」
本当に軽い気持ちで、かごめの反応が面白くて……そんなノリでいじってただけのつもりだった。ここまでしつこく罵られるとは思わなかったのだ。
(女の子のパンツを脱がした変態……いや、だって女同士だし……)
嫌がっているかごめの泣き顔が頭に浮かんだ。
そして、
「このド変態のクズ共が」
奏介の捨て台詞がぐさりと胸に刺さったような気がした。
二人はしばらく、そこで呆然としていた。
その日の夜。
大岡はノリ悪かったウメカとゆうほの悪口を、残ったメンバーと目一杯言い合った後に動画をネットへアップした。躊躇いなどなかった。あの時、初対面の相手に酷く罵られたことを思い出すと、本当に腹が立つ。
「は〜。きもち〜」
帰宅して風呂に入り、髪を拭きながら自室へ入ると充電中のスマホが目に入った。
「さーて、どんなコメントついてるかなー」
ほとんど使っていない動画サイトのアカウントを開く。再生回数が百万を超えていた。
「うっそ、マジ?」
コメント欄を開いたところで『警告』という表示が。
「あー」
早速BANされたらしい。つまりは不適切な動画を上げたことにより、アカウントが凍結されたのだ。
このアカウントに関しては凍結されようが、どうでも良い『捨て』アカウントなのでなんのダメージもないのだが。
「まぁ、これで拡散されたでしょ」
大岡はにやりと笑う。
一時でもネットに乗ったのだから、満足だ。
(モザイクは最低限だから、学校の奴らに気づかれたら面白いのに)
無様な格好の蒲島かごめを思い出し、笑いが止まらない。
と、自室のドアが勢いよく開いた。
「え、ママ?」
母親は少し顔を青くしていた。
「あさひ……あなた、同級生の蒲島さんって人に何したの?」
「……へ?」
自分の母親に蒲島かごめの名前を出したことはなかった。小学校は別だったので、昔からの知り合いというわけでもないので知るはずもない。
「今、蒲島かごめさんて人のお母さんから電話があって、弁護士に相談しますって。……怪我でもさせたってこと? 相当怒ってらしたわよ?」
「はぁ!?」
大岡は一瞬で腸が煮えくり返るような感覚に襲われた。
(親に告げ口するって、子供じゃん!! なんなの、あいつ)
母親が顔を覗き込んできた。
「あさひ、弁護士さんに相談するって、凄く
母親の真っ直ぐな視線に、少したじろぐ。
大岡の母親はうやむやにさせてくれるほど甘くない。仕方なく、大岡は口を開いた。
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