第269話迷惑悪質ドッキリを仕掛けていた迷惑動画配信者に反抗してみた3
以前会ったことのある高校生が立っていた。
「なっ、お前」
「ヤラセを真実として、 動画にしたらしいですね。 とあるカラオケ屋で」
「.…… なんで、うちにいるんだよ。 ストーカーか? 警察呼ぶぞ」
奏介はふんと鼻を鳴らした。
「色んな人をバカにして、犯罪行為をしておいて、 今更警察に頼れるわけないでしょ」
「はぁ。 わざわざ説教か?」
呟き系SNSにも純粋な批判から説教じみたメッセージまで色々来ていた
が。
「説教というか、確認しに来ました」
「なんだよ」
「3ヶ月前、あなたのチャンネルで上がったカラオケ屋の異物混入の動画、 ヤラセですよね」
「全く関係ないくせにどこで聞いたんだよ。てか、何言ってんの? あれは店の厨房でハエが入ったまま店員持ってきたんだろ。 それがなんだってんだ」
「ドッキリ系が多くなったのはその動画以降、ネタバラシがないのはその動画だけ。 カラオケ屋の再生数が高くなったから、 迷惑系チャンネルになったんでしょう」
チャンネルがBANされたままだと言
うのに、よく知っている。
「あの動画は本当で、 それからドッキリ系は面白いってなったんだよ」
肩をすくめる。
「廊下の監視カメラの映像が少しの間保管されているらしく、見せてもらったんですよ。 店員さんがピザを運んでいるシーン、拡大したんですが、そこにハエはトッピングされていませんでした。 あなた達でしょ」
「めんどーだな。 だからなんだよ。てか、普通に嘘やめろよ。一般人がそんなん見せてもらえないっつの」
「一般人だけじゃ無理でしょうね」
「下らない脅しやめろよ。信じるわけないだろ」
奏介歯ため息を一つ。
「反省した方が良い、 と言いに来たんす。……そういえば、それ、1枚じゃないみたいですね」
奏介はそのまま背を向けて帰って
行った。
そこで、 手の中にある封筒が2通であることを確認。その場で開けてみる。
そこにはそれぞれ書かれていた。どちらも。
『起訴状』『訴状』
「は、はぁ? なんだ、これ。 起訴? 起訴状?」
簡単に言うと訴えられたのだ。検察官にカラオケ店の出来事を起訴され、さらには中華まん屋の経営会社の民事裁判でも訴えられた。
そして、その日、イースチャンネルのヤラセ行為についてニュースに
なり、カラオケ屋が監視カメラの映像を元に、 戦う意思を示したのだ。そして、 中華まんの店の経営会社は業務を妨害されたとして民事裁判を起こした。
○
奏介は帰路についていた。スマホを見ると、 メッセージが届いていた。
「ありがとうございます。 後は頑張ります」
あの時、 中華まんの店に居合わせた客の中に被害にあったカラオケ屋の店員がいた。 彼の頼みで動画のヤラセを調べ、ようやく民事で裁判を行えることになったのだ。
2つの会社に訴えられたイースチャンネル、じわじわと余罪は増えそうだ。
○
翌日。
勝が部屋にいると、弟が飛び込んできた。
「兄貴! どうすんだよ! もう学校中で広まってて、やっぱり担任に嫌がらせしたことバレたんだ!」
「……さい」
机に座っていた勝はそう呟いた。
「は? 兄貴?」
「うるさい! こっちは合せて1000 万の支払いを要求されてんだぞ!お前のことなんか知らねぇよ!」
「オレ、停学になった上に、担任に謝りに行くことになって、親父がブチギレてんだよ!!」
「だから、自分でなんとかしろよ。こっちはない金を請求されてんだ。裁判で負ければ親父たちに頼み込まなきゃならないんだ」
「兄貴ははほんとに自分のことばっか」
「うるさい。自分のことしかかんがえてないのはお前なんだよ。くそっ」
勝は頭を抱えた。
「なんだよ、1000万て」
と、父母が部屋に入ってきた。
「勝、もう大学には行かなくて良いぞ。退学届を提出したからな」
「は!? なんだよ、それ」
「これから、無駄な金がかかるからだ、カ!!」
気づけば家族全員で言い合っていた。そんな勝のスマホには数10件の着信とメール。元店員だった。
『なんで、電話でないんだよ』
『にげるな!』
『請求額がヤバいだろ。オレは払えねぇぞ!?』
メールの内容を確認。ここまで来て、ようやく勝は思った。
(なんで、こんな大事になってんだよ)
お小遣い稼ぎの動画投稿。
あまりにも、代償が大きすぎた。
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