第178話昔の同級生に冤罪をふっかけることにした1
アカノはスーパーの中にいた。 棚の陰から覗いていると、奏介と真崎が会話しながら、買い物をしている。
「ターゲット確認、とー」
気弱そうな見た目、南城や丸美をハメたとは思えないが。
(油断するなって話だったっけ)
卑怯な方法で二人に攻撃をしてきたらしいので、気を引き締める。
「なぁ、ほんとによかったのか? あたし達に任せてとか言っちゃってさ」
ミハラが眉を寄せる。
「だってさぁ、南城君達顔が割れてるんだし、あたし達の方が動きやすいでしょー? 大丈夫だって、万引きの冤罪なんて簡単に被せられるから」
「慣れてるやつの発言じゃね?」
ミハラがからかうように言ってくる。
「まさか。でも、前にいたんだよね。気に入らないやつに冤罪着せて警察行きにした女子グループ。まぁ、監視カメラの映像でモロバレだったっぽいけど」
「ああ、中学の時の? そういや、お前、同じクラスだっけ」
「やり口を聞いちゃったのよね。ま、監視カメラを想定しとけば簡単よ。盾役よろしく」
「おうよ」
アカノとミハラはそろそろと近づいた。ミハラは少し離れたところで監視カメラの前に出る。棚を見るフリ。アカノはその陰で少し体勢を低くして、奏介が肩にかけているカバンへお菓子の箱などを入れる。都合よくファスナーが三分の一ほど開いていたので、楽に突っ込むことが出来た。
そうしていると、突然体の向きを変えた奏介とぶつかってしまった。
「あ、すみません」
奏介は慌てた様子で頭を下げ、真崎と一緒に棚と棚の間を抜けて行ってしまった。
「これで、後は店員さんに通報すれば完了」
「やっば、あれは言い逃れ出来ねぇな」
「でしょ?」
アカノはくすくすと笑い、
「案外簡単に南城君達の仇をうてるかもね!」
近くで荷出し中の店員に声をかけようとした時。
「君、ちょっと良い?」
振り返ると、眉を寄せた男性店員が立っていた。
「……はい?」
「それ」
指を差されて見ると、カバンの隅から、四連になっているミニスナック菓子の袋が飛び出していた。
「え……え?」
慌ててそれをカバンから引っ張り出す。まったく見に覚えのないお菓子だった。
「それ、お会計終わってないよね? もしかしてそのまま出ようとしてたのかな?」
疑いの眼差し。胸の奥がひやりと冷たくなる。やっていない。やるわけがない。そんなことをして警察に捕まったら人生めちゃくちゃだ。
「ち、違いますっ、何かの間違いっていうか。さっきのお菓子コーナーで引っ掛けたのかも」
男性店員はしばらく腕組をしてアカノを見ていたのだが、
「まぁ、教えてくれたお客さんも、違うかもしれないって言ってたからね。本当に引っ掛けたとしたら、これから気をつけてね」
「は、はい」
男性店員はそう言って離れて行った。
「おいおい、なんなんだよ、いつの間に?」
アカノは体を震わせていた。
「やだ、嘘でしょ。あたし……」
足がガクガクする。震えが止まらない。もし、決めつけられて親に呼び出されでもしたら、学校に連絡されたとしたら、警察に通報されたとしたら。やっていないことで罪に問われるなど恐怖でしかない。
そんな様子を棚の陰から見ていた奏介の手にはかごが握られており、中にはアカノに突っ込まれたお菓子が入っていた。すぐに取り出して、かごに移したのだ。その間、一分。素早くカバンから出したので万引きにはならないだろう。
「あー、めちゃくちゃ震えてんな」
真崎が苦笑を浮かべる。
「言い逃れ出来るようにしてやったんだ、感謝してほしいよ」
アカノはミハラに慰められながら、涙を浮かべていた。
「自分がやられたら、被害者面か。遊びでやって良いことじゃねぇんだよ」
奏介は吐き捨てるように呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます