第132話番外編 if高校教師・菅谷奏介

 ※面白そうだったので読者様のネタお借りしました。事後報告ですみません。

今後、掲載する話のネタも一部使っています。ネタが重複します。ご了承下さい。


菅谷奏介が高校教師になったら?というif世界です!



 菅谷奏介は教壇に立った。受け持つのは高校一年生の三組だ。

「菅谷奏介先生だ。今日から秋田あきた先生の代わりになるからよろしく」

 副校長の紹介で奏介は頭を下げた。

「よろしくお願いします」

 すると、生徒達からは気だるそうな返事が返ってきた。

「じゃあ、菅谷先生よろしくお願いしますね。くれぐれも……いや、空いている席は気にしないで下さい」

 確かにいくつか空席があった。

「はぁ……わかりました」

 彼はそそくさと去って行った。

「それじゃ、もう良い時間なので授業始めますね」

 奏介は素っ気なく言って、国語の教科書を開いた。

「えー? 先生の質問コーナーとかないのー?」

 そんな声が上がる。本音としては勉強をやりたくないのだろう。

「いや、先生に質問しても一ミリも面白くないから」

「じゃあ、一問だけ」

 調子の良さそうな男子が、挙手した。

「先生はー、なんのオタクなんですかー?」

 教室内がどっと笑いに包まれる。

「はいはい、先生はファッションオタクです。アイドルを追っかけたりしてないから、安心してください」

「はーいっ、次の質問!」

「いや、授業」

「彼女いますかー?」

「いませんよ。こんな感じなので出来ません」

 次から次に質問され、結局一限目を半分以上潰されてしまったのだった。

 元気の良いクラスだ。授業が終わり、廊下を歩いていると、立ち入り禁止の屋上で何やら声が聞こえてくる。

「……?」

 階段を上がって覗き込むと、柄の悪い男子生徒が数人、一人を囲んでいた。

「おらぁっ」

「あぐっ」

 蹴りを入れられたようだ。

 奏介はむっする。しかし、すぐに表情を消す。

「君ら、何してるの? 立ち入り禁止だよ」

 何も知らない風を装って、声をかけてみる。

「ああ!?」

 振り返る茶髪の男子生徒。すぐに舌打ちをする。

「新任の先公か?」

「あ」

 上履きの名前に目が行った。

「もしかして三組の?」

 名簿にあった名前、友谷ともやと一致する。他のメンバーの名前も見覚えがある。欠席ではなく、サボりだったらしい。

「……おい、行くぞ。萎えた」

 彼らは奏介の横を通りすぎて行き、リーダーらしい彼が目の前に立った。

「この学校で先公やりたかったら余計な真似すんなや。ちなみに秋田は婚約者が通り魔にあったらしいぜ?」

 彼らはギャハハと笑って、階段を降りていった。

「……君、大丈夫か?」

 座り込んでいたのは気弱そうな眼鏡の男子生徒だった。

「……はい」

 暗い表情、顔に青あざが出来、震えている。上履きの名前は高見たかみとあった。

「ひどいな。校長先生に」

 彼に腕を掴まれた。

「やめて、下さい。そんなことしたらさらに酷いことされます。先生も、無事じゃすまないですよ。……秋田先生は僕を助けてくれようとしてて。なのに」

 涙を滲ませる。

「そっか」

 奏介は頷いて、彼を立ち上がらせた。

「とりあえず保健室行くか」

「……はい」

「俺で良かったら、話くらい聞くよ」

 奏介は高見の肩をぽんと叩いた。




 放課後。

 初日の勤務が終わり、奏介は学校を出た。車で駐車場を出て、学校近くの細い道を走っていると。

「ん?」

 高見と先程の友谷達が細い裏路地に入って行くのが見えた。

「……」

 奏介は近くのコンビニの駐車場に停め、走った。

 高見達が入っていった裏路地へ。周りを確認し、ゆっくりと進んで行く。曲がり角、声が聞こえてきた。

「!」

 覗き込むと、広くなっている路地に友谷を初めとする不良連中。そして高見がうずくまっていた。

「おら、立てよっ、てめえ、あの先公に告げ口でもしたんだろ。ふざけた真似しやがってっ」

「い、言ってないっ、言ってないよっ、僕じゃないよっ」

「タイミング良く呼んどいて、惚けてんじゃねぇよっ」

「ぐはっ」

 奏介は息を吐いて、路地を出た。

 スマホを取り出す。『110』プッシュ。

「……あ、もしもし」

 電話の向こうで担当者が出た。色々聞かれた後、こちらの情報を提供する。

「数人の男に殴られてる人がいるんですけど。何かトラブルみたいです。殴られてる人は意識がないみたいで」




 数日後。

 朝、体育館にて。

 壇上で校長が顔を強張らせて、マイクを持っている。

「ですから、皆さんはそう言った行為をしてはいけません。我が校から逮捕者を出してしまったことは本当に残念ですが、これからは人の気持ちを考えられる一人の人間として」

 奏介は涼しい顔で体育館の壁沿いに立っている。同僚の教師が並んでいた。

「菅谷先生」

 女性教師が声をかけてきた。

「はい?」

「えっと、あの……大変でしたね。まさか赴任してすぐにこんな」

「ああ、まあ」

「ここだけの話、あの子達はやりたい放題だったので。秋田先生なんか辞めさせられたみたいなものだったんですよ。校長先生は完全に怖じ気づいちゃって」

「そう、なんですね。それは気の毒に」

 やがて、校長先生の話は終了した。



 生徒達に混じって、体育館から移動する。

「せ、先生」

「ん?」

 振り返ると、顔に絆創膏をした高見が立っていた。

「どうした?」

「あ、あの、先生は」

「うん?」

 奏介が不思議そうな顔をする。

「な、なんでもないです」

「そうか? もう怪我は良いのか?」

「はい、お陰さまで。……最近よく眠れるんです。それに毎日楽しいし」

「秋田先生のお陰かもな」

「え?」

「だって、助けてくれたんだろ?」

「そう、なのかな」

「ああ」

「とにかく、なんか菅谷先生にお礼を言わなきゃ行けないような気がしたんだ。この前は、話聞いてくれてありがとうございました」

 高見は去って行った。

「秋田先生の婚約者だっけ?」

 奏介はにやりと笑って、スマホを取り出した。

「教師、なめんなよ?」


※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件とは一切関係ありません。

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