第131話アレルギーがあると分かっている友達にアレルギー物質を摂取させた女子高生達に反抗してみた2
彼女達は呆然とする。
「何、言ってるの? 警察? 通り魔?」
「ニュースで見たことないのか? 食物アレルギーを持ってる人は、それを飲み食いしただけで死ぬかも知れないんだぞ。それを遊び半分で飲ませて」
「知らないって言ってるでしょ!? だから何? 売ってたドリンク飲ませたから警察に逮捕されるって? そんなの」
一人は青い顔で黙ったが、茶髪ギャル風のもう一人は納得していないようだ。
「人殺しかけといて、知らないじゃねぇだろ。本人からアレルギーだって聞いてたのに、ヨーグルトドリンクだってことを隠して飲ませたんだ。あの子にとっては毒を盛られたのと一緒なんだよ」
「はぁ? 毒なわけないじゃない。あれはヨーグルトでしょ? 皆食べてるんだから、あれで倒れる方がおかしいのよ」
「おかしいと思うなら責任取れよ。おかしくなったのは他ならぬお前らのせいだろうが」
「な、なんであたしらが責任なんか」
奏介は目を細める。
「全国にアレルギーの人が何人いると思ってんだ? 今、皆が食べられるのにおかしいとか抜かしやがったよな? アレルギーは体質なんだよ。好き嫌いのレベルじゃない。本人達も自分ではどうしようもないことに対して、ディスってんじゃねぇっ!」
奏介が捲し立てると、女子高生は息を飲み込んだ。
「たまたま自分がアレルギーを持ってないからって、偉そうにしやがって、食べ物に気を遣うことが、どれだけ大変か。その空っぽの頭じゃ想像すらつかないんだろうな!?」
「か、空っぽですって?」
「お前らが脳ミソ使って考えてればあの子は死にかけなかったって言ってんだよっ。いくらお前らが頭悪くて幼稚だとしても、人の命に関わる嫌がらせをするんじゃねぇよっ」
「だ、だって知らなかったから」
強気だった女子高生の態度が変わった。奏介の気迫に尻込みしたのだろう。
奏介は舌打ちをした。
「なあ、俺は最初に言ったよな? 知らなかったら仕方ないって。それでも責任を感じてあの子のために出来ることがあるだろって。それをあんなの知らないとか言ったのはお前らだろうがっ。心配すらしてないよな? どういう神経してんだ。せめて反省くらいしろっ」
ついに二人とも黙りこんだ。
と、肩に手を置かれる。
「菅谷くーん? お店の前で大声出しちゃダメじゃない」
小川だった。
「あ……すみません、つい」
しかし、彼女は女子高生達を見る。
「お客様、もうお帰りいただいて結構です」
「え」
彼女達が目を瞬かせる。と、高平が生徒手帳を開いていた。
「警察には連絡したし、これがあればあの子の身元分かるしな」
「お客様達はあの子と関係ないとのことでしたのでお引き留めはできませんし」
彼女達は顔を見合わせると、逃げて行った。
「素直なやつらだなぁ。制服で学校バレてるし、本人が証言すれば一発なのに」
高平がそう呟く。
奏介も息をついた。
「あいつらの写真も撮ったし、監視カメラで小川さんが直接渡したわけじゃないって分かるし、まぁ、逃げたことでキツめに怒られるだろうな」
それでよしとしよう。場合によっては猪原の保護者が激怒するだろう。
「はぁ、やっぱお前こえーわ」
「うちの息子もアレルギー持ちだから、色々すっきりしたわ。ありがとね」
「いえ、思ったことを言っただけなので」
店内へ戻ると、様子を見ていた客達の視線が柔らかいような気がした。特に声をかけられるとかではないのだが、今回のことについて、思うところがあった人はいたのかもしれない。
「小川さん、マジで警察呼んだの?」
と、高平。
「ええ、一応ね。事故ではないし」
後々揉めることになりかねないので、多少大袈裟でもそれが良いだろう。
「それにしても焦ったなー。あの子、大丈夫なら良いけど」
「救急車早かったから、大丈夫……と思いたいな」
後日、警察から彼女の無事とあの女子高生達が色々な方面からお叱りを受けたと聞いた。
傷害罪は確定、猪原両親から損害賠償請求、学校は無期停学、最終的にテレビで報道され、事件が全国に知れることとなった。
注意
※この物語はフィクションです。
現実の症状の出方とは少し異なる部分があり、架空のお話として誇張している部分もあります。ご了承下さいませ。
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