第4話 気まずい

「桃ちゃんこんにちはー」

 本葉先生が挨拶を返した。

「先生ー今日の課題は何ですかー?」

「はい、今日の課題。」

「これなんて読むの?すい...とう?」

「すいとうそうきって読むよ」

「先生凄いね、語彙が豊富っていうか」

 俺も先生の語彙の豊かさだっだりは、

 本当に尊敬している。


「お、菖きてたんだ。」

「ん、お姉ちゃんやっほー」

 桃は菖の隣に座った。

「菖も課題同じ?」

「見りゃ分かるでしょ。」

「もー冷たいなぁ。」

 桃の前でも

 サバサバした態度は変わらないらしい。

 てっきり、

 態度は急変すると思ってたんだけどな。


 そして俺には、やっぱり無反応か...

 ま、いいけど。

 いつまでも気にしてても時間の無駄だな。

 俺は切り上げて、書くことに集中する。

 筆を滑らかに動かすように意識して、

 字に動きが出るように書き進めていく。


 さっきのよりは上手くできたか。

 やっぱり今日は、上手く書けない。

 後ろに手をついて上を見上げる。

 そして少しだけ後ろを見た。


 小町桃、俺とタメの高1。

 俺の幼稚園からの幼なじみ。

 明るくて元気でクラスの人気者。

 今も菖と楽しげに会話している。

 そして俺も最近になって気づいた事だけど、


 可愛い!もう1度言おう。可愛い。

 きめ細やかな長い黒髪。

 汚れてもいいようにか、

 黒色のパーカーとジーパンを履いている。


 人間の変化って不思議なものだ。

 小さい頃は全く意識してなかったけど、

 成長していくにつれて、

 異性だと言うことを感じるようになる。

 今では幼なじみってそのワードだけでも

 強くね?ポテンシャル高っ!

 とまで思うようになっていた。


「お姉ちゃん...」

 そして俺はやらかしたことに気づく。

 菖が眉をひそめて、顎で俺を指した。

「なんですか」

 桃が唇を尖らせてこちらに視線を向けた。

「ごめん、ごめん。ちょっと調子悪くてさ」

「え!大丈夫?熱とか!?」

 俺は目を見開いた。

 桃が俺の髪をあげ、額に手を当ててきた。

「はっ!?」

「別に熱くはないか...」

 俺は桃が勘違いしていることに気づく。

「あ、あー体調じゃなくて、字の方だよ。」

「え?あーそっちね笑ごめん、ごめん。」

 俺は顔を伏せながら言った。

 なんなんだなんなんだ?

 菖が睨んでいるけど、

 そんなの気にならない。


 本当に桃は俺の事が嫌いなんだろうか。



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