第3話 険悪な雰囲気

「いい?今日あんたと話をしているのだって、お姉ちゃんがどういう状況なのかを知りたかっただけ!」

 確かに今日は会話が続いていた。

 何度か会っていたけれど、

 何も話さずに終わることもあったし、

 なんなら無視されて睨まれることもあった。

 ん?そこで気づくべきだったのでは?


「もーう喧嘩しないのー」

 一部始終を見ていたであろう本葉先生が、

 落ち着くように促してくれる。

『す、すみません笑』

 シンクロした。

「被せてこないでよ」

「はいはい、すみません。すみません。」

「ほんっとそういうとこ嫌い」

 気に触ることをしてしまった。

 2つ返事のことだろうから、

 次からは気をつけて会話するようにしよう。


「そこまでして姉の内情が知りたいか?

 あ、ひょっとして菖、シスコン?」

「う、うるさい、別にいいでしょ!お姉ちゃんが大事なの!」

 手のひらをこちらに向け、

 赤くなった頬を隠すようにして菖は言った。

 てっきりもっと暴言を吐かれるものだと思っていた。以外だ。


「そういう顔もするんだ。」

 不覚にも、

 少し可愛いと思ってしまった自分がいた。

「え?なに?キモイんですけど」

 気づけば表情は元に戻っていたが、

 さっきまでの威圧感は無くなっていた。


「もうちょっと愛想よくしたら?俺好きだよ、妹キャラとか。」

「黙れオタク、あんた以外には愛想良くしてるし、余計なお世話。」

「それって俺だけ特別扱いしてる。ってことでOK?」

「そうじゃなく、もないけど、あぁぁ!もう!めんどくさいなぁ!」

 俺は、少しの優越感を感じた。


「ていうかなんで嫌いって言われて、普通に話しかけてくるわけ?」

 ため息混じりに菖は言った。

「んーそう言われてもなぁ...俺が仲良くしていたいから、かな」

「なんか菖との縁は、大事にした方がいい気がして」

「なんそれ、普通嫌われてるって知ったら仲良くもクソもないでしょ。」

 机に突っ伏して、

 筆を見つめながら菖は言った。

「確かにそうかも知れないけどさ、俺は嫌いじゃない訳だし?」

「私には理解出来ないわー」

 ナイナイとジェスチャーしながら言われた。

 そして、


「こんにちはー!」

 玄関から声が聞こえた。

 聞き覚えのある声だ。

 ガラガラっと引き戸が開かれて、



 小町桃が来た。

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