第8話 異世界事情聴取
事件現場目撃者として僕とサチコさんは同室で事情聴取された。
「春野ケンタさんは人間界では少年刑務所収監中ね。教戒師の笹野さんにバタフライナイフを持たされ魔王ゲインの首を刎ねに来たということだけど、君に何のメリットがあるの」
捜査官の質問。慇懃無礼なところは人間界の警察官と同じだなと思いつつ返答。
「首を刎ねたら出所後笹野さんのところで魔導士修行をさせてもらえるんです」
「ならこれからもちょくちょく顔を合わせることになるかもね。笹野さんもたまーに来てるらしいよ」
「なんで警察はあいつを取り締まらないのよー市民の味方なんでしょー?」
サチコさんが不満の声を上げた。
「魔王には不逮捕特権が。しかし魔王になったらいつかは人間に倒されるのが宿命なので人間に任せる、というのが警察の方針です」
「僕のバタフライナイフですけど、没収されると……」
「人間のものは没収しません。帰る時に返すから、心配しなくていいから。ところで君、魔王ゲインの首を刎ねられなかったらどうなるか分かってる?」
「殺人未遂で逮捕ですか」
「運が良くて燃えるゴミとして清掃局が回収。最悪の事態は想像に任せるけど」
捜査官の言った通りバタフライナイフは返してもらった。サチコさんは初めから医療用メスも拳銃も押収されてなかった。その場では容疑者ではなかったからかもしれない。
「あーおなかすいた。ケンタ君にもご飯おごる予定だったよね」
「それは、気持ちだけ貰っておきます」
「そんなかしこまらなくていいから。コンビニで何か買ってあたしのマンションでビールでも飲む?」
「僕、人間界では少年刑務所収監中なのでアルコールは」
とは言いつつも女の人のマンションに上がり込んでビールが飲めるなんて娑婆に居た時もなかった幸運。
「一人で飲むのやだーと強制されたってことにして飲もうよー」
二人でコンビニに入りかごを僕が持ち、サチコさんと食べ物や飲み物を選ぶ。途中で気付いたが普通のカップルみたいじゃないか。夢心地で彼女の住むマンションの部屋へ。
センスのいい家具。大きな熊のぬいぐるみ。絨毯が敷かれた床。少年刑務所の雑居房とは別世界。僕が足を踏み入れていいのか?
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