第7話 魔王とすれ違い
「ちょっと、あたしに用があるんじゃないの?」
まなじりを上げるサチコさん。っていうかこの人達も彼女にはさん付けするのか。ともかく、こんな時男の方が全責任を負わせられるっていうのは人間界でもあるが、魔界だとどうなるのか。
「自分がボコられるより、仲間がボコられるほうが辛いよね、サチコさん?」
ホスト系お兄ちゃんを睨む彼女。
「彼、君達には負けないよ」
「それも理解してる。でもやってみなきゃわかんないしね」
ファミレスの窓が割れた。鉄パイプを片手に持った男が二人。懐のバタフライナイフを抜いたが、どちらか一人は拳銃を持っているはずと身構えた。
サチコさんは早速拳銃を取り出した。銃撃戦不可避。ハンバーグ定食大盛りさようなら。
「君達、一体何をしてるのかね」
背広姿で中肉中背の男がホスト系お兄ちゃんに歩み寄った。角は大きいが特に強そうではない。
「食後のコーヒーに割れたガラスが入ってしまったよ。責任を取ってくれますか?」
「おじさん、邪魔」
ホスト系お兄ちゃんが背広姿の男性を追い払うように手を振った。するとシャツの袖から肘から先が切断された右手がポトリと床に落ちた。出血は無かったがその場がざわめいた。
背広姿の男性の手には割り箸。
「次は体中の皮をはぎ取る。死にはしないだろう」
「あのう、どちらさまでしたっけ」
右手を拾い上げながらホスト系お兄ちゃんが及び腰で男性に質問。
「名乗るほどの者ではない。警察にはもう通報してあるので表に出て、彼等が来たら自首して」
事務的な態度。威張らない、名乗らない、見た目普通で怒らすと恐い人は人間界にもいる。
背広姿の男性は腰をさすりながら再びテーブルの前に腰を下ろした。
「もしかして」
「うん、あの人が……これは想定外だったー」
サチコさんに小声で聞いたらやはり。僕は魔王ゲインとすれ違ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます