第3話 手術見物
「あたしはサチコ。見ての通り大学病院勤務の外科医。これから勤務先に向かうところ」
右手一本でハンドルを回しているコンサバお姉さんは自己紹介してくれた。だが問題は後続車のソブリン。
「山道みたいなところを走ってますが、こんな人気の無い道で捕まったらまずいです」
「そういう軍人くんは誰なの」
「僕は春野ケンタ。少年刑務所に服役中で」
「ということは人間か。で、何しに来たの」
「魔王なんとかという人の首を刎ねてこいと言われまして」
「魔王ね。ここらだとメロンとゲインの二人いるけどどっち」
「ゲインです」
「ちょっとハンドル持ってて」
言われた通りハンドルを助手席から持つ。何をする気だと見ていたら運転席から身を乗り出し自動拳銃でソブリンの運転席を狙撃。窓ガラスにひびは入ったが貫通しない。
「防弾ガラスだったあ」
テヘペロしながら今度は右前輪を、次いで左前輪を正確に狙い撃ち。バランスを失ったソブリンは対向車線に吹っ飛び裏返しになった。
「運転ありがとー」
再びハンドルを握るコンサバ細身のサチコさん。38口径の銃を片手撃ち。凄い腕っぷしだ。
「心配しなくてもあいつら死にはしないから」
「ここは魔界だから、ですか?」
「人間から見たら魔界なのかな。しかし優しいねケンタ君。魔王ゲイン倒すの手伝ってあげるー」
サチコさんが勤務する大学病院は山中にあった。病院というより研究所のような雰囲気。入院患者の家族は見舞いに来るのが大変そうだ。おや、駐車場横に桜の木が。
「なにか珍しいものでもあった?」
「僕の実家にも桜の木があって。僕の誕生日記念に植えたそうです」
「それで少年刑務所入りは親不孝だよー?」
人間界でも皆に言われたことを魔界でも言われてしまった。
「でさ、手術見物する?あたしのゲストってことで」
「見学ですか?」
「見物」
聞き違えたかと思いきややはり見物。
「見てくれないと、やだ」
嫌われたら魔王ゲインにたどり着けなくなってしまうので見物することにした。
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