第2話/中学生
初恋は実らない。
年齢的な経験不足と未熟な感情が理由。
ところで、この実るとは一体何を指すのだろう。
付き合い始めること?
其の先の結婚?
どちらにせよ、そんな事を知る以前にこの恋の成就などは有り得ないと諦めているから、改めて考える必要もないか。
先輩の応援がてら同行した、地図上でしか知らない県から続々と集まる部活の地方大会。
トラック上にあるその競技専用の一角にきみが居た。
すらりとした背に発達途上の上腕の筋肉。素人目にも経験の浅さが見て取れる荒削りな雰囲気を醸しながら、自身の身長よりも長いポールの先を地に着けたり持ち上げたりしながら黙々とイメージトレーニングを行う。
ただそれだけの姿の何処にツボッたのかは自分でも謎だが、今思えば一目惚れ。
筋肉に?
いや、真剣な眼差しにです。
それはみんな同じ筈なのに、小慣れ感満載の余裕な選手陣の中に放り込まれた新参者の、果てない緊張感を集中力に全振りしてる様子がこの上なく微笑ましかったから、かな。
あぁ、ここからユニフォームの名前が見えないのが残念。せめて学校名だけでも知りたいが、準備片付けにと忙しい付き添い遠征の身にはチラ見がやっとでそんな余裕もない。
そうして終わりを迎える大会。
バスへと向かう先輩たちの後に違う意味で肩を落としながら続けば、下っ端特有の大荷物からポロリと落ちる一本の空ペットボトル。
しまった!
これでは荷物が邪魔で屈めない。
「これ、捨てればいいっすか?」
耳心地の良い低音ボイスが問いかける。
暫しの呆然。
「……はい、お願いします」
最初で最後のきみとの邂逅も、ふと見せたぎこちない笑みに見惚れ過ぎて水の泡。
何処の誰かも判らずにあれから3ヶ月。
記憶はいつか曖昧になってしまうものだが。
うーん、こんなに引き摺るくらいなら、顧問や先輩に怒られてでもいいからあの姿を隠し撮りしておけば良かった。
おっと、これはストーキング?ヤバいやつ?
ねぇ、きみはいま、どうして居ますか?
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