第10話/大学生

 あのさ、藍田の年上彼氏?

 この間一緒にいた女の人と、あのあと小突き合いながら楽しく喋ってたんだけど。


 何か、騙されてたりしない?

 作った食事持ってってるって聞いたけどさ。

 大丈夫?

 巧いこと囁いて搾取して捨てるヤツとか。

 その優しさだって心底かどうか怪しくない?


 ◆ ◆ ◆


 人は、嫉妬が頂点に達すると何をやらかすか判ったもんじゃない。

 それは俺も例外ではなかった。

 言い過ぎて、怒らせて、悲しませた。


 やっちまった~~~っっ!!


 もう絶対話してくれない。

 隣に座るのもNGだ。

 目も合わせらんない。

 飯もジュースもおやつも食ってくれない。

 試験勉強もオススメの映画も観に行けない。


 大学受験日に一目惚れし、入学して隣同士という運命的な出席番号を神様に感謝したのに。


 社会人の彼氏よりも俺の方が長い時間を共有してるという密かな優越に浸っていたのに。


 あぁ、最悪だ。

 友情さえも終わった。

 俺はこれからどうやって藍田と席を並べればいいんだ。


 過ぎた時は巻き戻せない。

 とにかく謝ろう。

 許されるなら関係の修復も願おう。


 あぁ、俺って本当ポンコツ。






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