第15話トリックオアトリート
「トリックオアトリート」
そう言って冬馬の前に座っていた杏果さんが手を差し伸ばしてきた。
「なんですかいきなり」
依頼終わりてご褒美のケーキを再びつつこうとする。
「トリックオアトリート!」
さっきより声が大きくなった。
「僕お菓子なんて持って無いんですけど…」
「あるじゃないかいいのが」
杏果さんが指さしたのはご褒美のケーキ。
ちなみに今日はパンプキンパイだ。
「ダメですよ。これは僕のご褒美なんですから」
「ほほぅ…どうやらシロはイタズラを所望らしいな」
その手には油性マジックが。
一体何を書くつもりなんだ。
「あーもう、優斗先輩、助けてください」
「ダメだよ杏果ちゃん。わがままはほどほどにね」
「わがままじゃねーぞ優斗。一年に一度許される魔法の言葉なんだこれは。これを言うと問答無用でお菓子かイタズラかの2択を選択せざるおえない状況にさせられるんだ」
ドヤ顔で何言ってんだこの人。
「それが許されるのは小学生だけですよ」
「小学生みたいなもんだろ。身長とか的に」
「自虐してでもやしたいんですか…」
「うるせー!とにかくどっちか選べ!」
こうなったら杏果さんは止められない。油性マジックで何か書かれたら落ちないしな〜…
冬馬は渋々パンプキンパイを杏果さんに渡した。
あぁ僕のパンプキンパイ…
「へへ〜ん。やった!じゃあいただきま〜…」
「杏ちゃん先輩。トリックオアトリートです」
「へ…?」
杏果さんがパンプキンパイを突こうとしたその時に今度は美月ちゃんが魔法の言葉を口にした。
「みーちゃん何言ってんの?私お菓子ないよ?」
そう言いながらパンプキンパイを口にする杏果さん。
僕のパンプキンパイが…
「食べてるじゃないですか!」
「これは戦利品だから。手持ちのお菓子じゃないから」
ペロリと完食されてしまった。
「じゃあ仕方ありませんね。イタズラです!」
「お、どんなイタズラだ?私に対するイタズラなんて…」
「これを着てもらいます」
美月ちゃんの手にはピンクでもこもこでフリフリでロリロリな服があった。
脱兎の如く立ち上がり逃げ出そうとする杏果さん。
逃すか!
かろうじて手を掴み逃亡の阻止に成功。
「は、離せシロ!あれはダメだ!」
「僕のパンプキンパイ食べたんですから甘んじて受けてください!」
「杏ちゃん先輩!覚悟を決めてください!」
「わかったよ!お菓子だろ!お菓子渡せばいいんだろ!」
バタバタ暴れながら杏果さんはイタズラではなくお菓子を選択した。
「持ってるんですか?お菓子」
「持ってない」
「美月ちゃん」
「杏ちゃん先輩、この服あったかいんですよ」
「その服を持ったまま近づくな!持ってなかったら今から作ればいいんだろ!」
今から作るとは?
「優斗、なんか材料ある?」
「ん〜…ホットチョコなら作れるよ」
「じゃあそれだ。ちょっと待ってろ」
冷蔵庫の中からチョコと牛乳を取り出し作ろうとする杏果さん。だったのだが…
「おっと杏果ちゃん。お料理するならエプロンをつけないとね」
優斗先輩の手にはフリルがついてハートマークがいっぱい散りばめられたエプロンが。
恐らく美月ちゃん作だろう。
あまりの衝撃に杏果さんは手に持っていたチョコと牛乳を落とした。
「お前…嘘だろ?それを私に着ろって?」
「料理するならね、エプロンつけないとダメだから」
にっこり笑う優斗先輩はどこか少し怖かった。
「……じゃあやめt」
「お菓子がなかったらこっちです♪」
八方塞がり、前門の虎後門の狼状態の杏果さん。
この2人敵に回したら怖いなぁ…
半泣き状態でエプロンをつけ杏果さんはホットチョコを作ってくれた。
途中、部長が部室に帰ってきてエプロン姿の杏果さんをみて爆笑しながら写真を撮ってまたしばかれていた。
パンプキンパイがホットチョコに変わったが珍しい物もみれたしちょっとだけお得な気がした冬馬だった。
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