第14話学内新聞撮影会③

「優斗先輩、部長、着替え終わりましたよー」

2人ともまだ部室の入り口のところで立っていた。

「おー、似合ってるじゃないか」

「うん、サイズもピッタリだし雰囲気が変わった感じがするね」

なんかちょっと照れくさいな…てかそんなことよりも

「さっきのはなんだったんですか?杏果さんがいきなり入ってきたし渡してきたあの筒のやつとかボタンとか…」

「杏果が服を見て逃げ出したんだ。まぁ予想通りだったからな、それの対処として捕獲用ネットを渡しておいたんだ。あのボタンは押すとすぐに通知が来る連絡ボタンだ」

「なんで言ってくれなかったんですか!」

「言ったらボロが出ると思ったからな」

「そんな〜…」

否定はできない…

「それにしても、なんで杏果さんは逃げ出したんですか?」

「杏果はフリフリの服は苦手なんだ。いっつもズボンだとかジャージだとかで過ごしてるからな。まぁ杏果的には罰ゲームで女装させられるような感覚だろうな」

「わざわざそんな服チョイスしなくても…カッコいい服がいいって言ってましたし…」

「いや、実際見せてもらったがカッコよかったぞ?なぁ優斗」

「うん、黒がベースだけど要所要所に赤色が混じっていてカッコ良くもあり可愛くもあったね」

どんな服か想像がつかない…きっと凄いんだろうな。この服も凄かったし。

「杏果ちゃんは元が綺麗で可愛いからね。せっかくだからこう言う場で披露さしてあげたいって琢磨くんから相談されたんだよ」

「もしかして前に3人だけで話してたのって…」

「まぁそう言うことだ。全部前から計画してたんだよ。これを機にちっとは身だしなみを気遣うことを考えるのも良いことだろうとな」

部長なりの気遣いなんだろうな…

「じゃあ食べ放題も?」

「それは杏果の機嫌取りだ。終わったら確実に俺はやられる可能性が高いからちょっとでも溜飲を下げたかった」

どこまでも用意してあったんだなこの撮影会。

と話していると部室の扉が開いた。

「出来ましたよぉ〜」

「やっとだな。お疲れさん美月ちゃん」

「杏ちゃん先輩やっと諦めてくれたんですよぉ〜。疲れました〜」

くたくたの美月ちゃんからその苦労が見て取れる。

「杏果ちゃん、早く出ておいで」

「………やだ」

「往生際が悪いですよ杏ちゃん先輩!」

美月ちゃんに引っ張られて杏果さんが出てきた。

ベースが黒でスカートの先が赤のワンピース姿の杏果さん。装飾もかっこ可愛いくてメイクもしっかり決まっていて印象がまるで違う。まるでお人形さんみたいだ。

「似合ってるじゃないか」

「うん、凄い綺麗で可愛らしいね」

「なんか…凄いですね」

言葉にならない。

「ふふん…自信作ですからね。杏ちゃん先輩やっぱり元が綺麗だからこう言うの似合うと思ってたんですよ〜」

「ぅぅぅ……殺してぇ……」

その格好でプルプル震えてると可哀想だけど可愛く見えてしまう。

「まぁまぁ杏果ちゃん。これからケーキ食べ放題だから。好きなだけ食べていいからね。だから行こっか」

杏果さんはコクンとうなずき小声で「食べるぅ…」と言いながら優斗先輩に連れて食堂に向かっていった。

「ん〜格好のせいか不覚にも可愛いと思ってしまうな」

「ですね…」

「私もメイク中に上目遣いされてる時キュンキュンしちゃいました」

恐るべし杏果さん。

そんなこんなで撮影会の方も順調に進んでいった。

たらふくケーキを食べて満足したのか杏果さんの機嫌も回復していったし撮影会は大成功で幕を閉じた。

後日、学内新聞にその時の写真を使って記事が書かれていた。幸せそうな笑顔でケーキを食べる杏果さんとそんな杏果さんに紅茶をくべている冬馬の構図が採用されていた。

そんな学内新聞を見てちょっと気恥ずかしいかなりながら今日も冬馬は部室へと足を運んだ。



後書き


「いやだーーーーーー!!」

凄い勢いで杏果さんが部室から飛び出して逃げていった。

「な、何事ですか!?」

「やぁお疲れ様冬馬くん」

「お疲れ様です」

部室の机には万屋箱とともに大量の紙が置いてあった。

「なんですかその紙の山」

「全部依頼なんです。しかも杏ちゃん先輩宛のがほとんどで…」

見てみると

[藤村さんの写真を撮らせてください!出来ればゴスロリで!氏名:宮本]

[モデルを依頼したいです。藤村さんをお願いします。衣装はこちらで用意します。氏名:久保]

[藤村さんのメイド写真をください。氏名:松岡]

などなどだった。

依頼もあればただの要望もありで凄いことになっている。

「これは杏果さん逃げるわけだ…」

この日からとうぶんのあいだ杏果さん宛の依頼とは別の手紙も入るようになるのだった。

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