第13話学内新聞撮影会②

撮影会当日の日曜日。

冬馬が部室に訪れるとすでに他の人は揃っていた。

「遅いぞシロ!」

「余裕を持ってきたつもりなんですけど…」

「おはようございますシロくん」

「おはよう美月ちゃん」

「よし全員揃ったところで今日の説明だ。着替え終わったら食堂に集合してくれ。そこで新聞部がすでにいろいろ準備してくれてる筈だ。集まり次第撮影開始でモデルの2人は食べ放題開始だ。」

「食べ放題っ…!!」

そのセリフを聞くたび杏果さんは横揺れしている。

よっぽど楽しみなんだろうな。

「杏果は部室で着替えてくれ。冬馬くんは少し離れてるが一回の多目的室で着替えてくれ」

「なぁーなぁー優斗ー今日のお菓子はなんなんだ?」

「杏果ちゃんが好きなチーズケーキや苺のタルトなんかを用意してるよ」

「やった!早く着替えようぜ!ほらほらシロたちも早く着替えてこい」

「分かりましたよ」

「あ、シロくんこれ衣装です!」

「ありがとう美月ちゃん」

「いえ、楽しみにしてますね」

美月ちゃんから渡された紙袋を片手に冬馬たち男子陣は部室を出た。

「冬馬くんちょっといいか」

「なんですか部長」

「優斗と俺はここに残るから着替えには冬馬くん1人で行ってくれ。セットは着替え終わった後優斗にしてもらうから着替えるだけ着替えていてくれ」

「えっと…2人ともここに残るって…」

まさかとは思うけど…のぞきだったり…

「冬馬くんが思ってるようなことじゃないよ」

優斗先輩にあっさり否定された。

「まぁなんと言うかいた方がいいんだよ。あとこれを渡しておく」

なんだこれ?何かのボタンと懐中電灯みたいな…

「もしもだ、もしも多目的室に杏果が来たらこれを杏果に向けて後ろの紐を引っこ抜け。その後でそのボタンを押してくれ」

部長が何を言ってるのか意味がわからない。

「えっと…よく分からないんですけど…」

「大丈夫、これは最終手段だから。とりあえず着替えておいで」

「いいか、杏果が入ってきて近づいてきたらしっかり先端を向けて紐を引くんだぞ」

「はぁ……」

部長も優斗先輩も何を言ってるんだろ…杏果さんが着替えてる所に来るかもってどういうことなんだ?

それにこれ…ライト…でもないし…クラッカー…に近いのかな?見たことないや。

まぁとりあえず着替えに行くか。

多目的室に入り謎のボタンと筒状のなにかを机の上に置き美月ちゃんから渡された紙袋の中身を取り出す。

凄いな〜。売ってるやつみたいだ。

ご丁寧に着方の書いた紙まで入っていた。

早速袖を通してみる。

えーっと…カッターシャツが先で…ズボンを履いてと…

〜数分後〜

とりあえずこんなものかな?

鏡で自分の姿を見てみる。

うん、サイズもピッタリ。なんか着慣れてない服だからか凄く新鮮だ。コスプレみたいだけどちょっとカッコいいかも…

などと見惚れていると凄い勢いで多目的室の扉が開いた。

「シロ!」

そこには息を切らした杏果さんがいた。

「だ、どうしたんですか!?」

「はめられた!今回の撮影は罠だ!」

「罠?」

「あぁ…みーちゃんも優斗もグルだったんだ」

「あの〜…話が見えてこないんですけど…」

「とりあえず私は逃げるから冬馬も準備しといた方がいい!」

杏果さんの様子がおかしい。なにがあったんだろうか。

そういえば部長からなんか渡されてたな。杏果さんがきたら使えって…

「杏果さん」

「どうしたシr…」

「えい」

グイッと後ろの紐を引っこ抜く。

すると先から勢いよくネットが飛び出して杏果さんを絡めとった。

「な、ちょ、なんだこれ!おい、シロ、どう言うことだ!」

「どう言うことだと言われましても…」

渡されていたボタンもついでに押してみる。押しても特になにも起こらなかった。

ネットに絡まってジタバタしてる杏果さん。

「お前もあいつらの手先だったか!」

ん〜…助けた方がいい…のかな?

ネットに手をかけようとした瞬間また扉が勢いよく開いた。今度は3人勢揃いだ。

「やっぱりここに来たんだね」

「冬馬くんよくやった。さぁ杏果!大人しく着替えに戻るんだ!」

「杏ちゃん先輩!逃げちゃダメですよ!」

「い、いやだ!あんなフリフリ着たくない!似合わないから!似合わないから!!」

「大丈夫です!可愛くなりますから!」

バタバタと暴れる杏果を取り押さえ連れて行く部長と美月ちゃん。

「いや〜…ありがとう冬馬くんおかげで助かったよ」

「なにがどうなってこうなったんですか?」

「詳しいことはまた後で教えてあげるから。また戻って厳戒態勢を取らないといけないからね。そうそう服、すごく似合ってるよ」

それだけ告げると優斗先輩は急いで戻って行った。

なにがなんだか分からなかったがただ一つ分かったことは…

「杏果さんの衣装…フリフリなんだ…」

虚空にポツリとつぶやいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る