第5話終戦

『じゃあこれが最後の試合だね。杏果ちゃんと冬馬くんの試合なんだけど…大丈夫かな?』

そこには心が折られた両者が座っていた。

『今の杏果さんになら勝てそうな気がしますよ』

『ここで勝って…せめて2位には…』

精神的ダメージは杏果さんの方が上、そして杏果さんは感覚で戦う人ならば勝てる可能性はまだある!

『じゃあ試合開始〜』

満身創痍の2人の戦いは10分以上かかった。

序盤はお互いほぼ同じ枚数であったものの中盤、終盤になるにつれ杏果さん(黒)が徐々に押され始めていった。

『うぅぅ…』

美月ちゃんと戦った時のショックが余程きいているのか盤面に白が多くなるにつれ大雑把な攻めになっていた。

落ち着いてやれば今の杏果さんに勝つことは容易だった。

『はい、じゃあ結果発表だね』

オセロってこんなに疲れるもんだっけ?杏果さんと部長は完全にダメになっちゃってるし。

『一位は美月ちゃん、おめでとう〜』

『あ、ありがとうございます。あの、なんだか申し訳ないような…』

『あ〜…大丈夫だよ。それより、はい好きなの選んでいいよ〜』

『えっと…じゃあ…』

美月ちゃんがチラッとこちらを見て、これでとムースを指差した。

『じゃあ次は冬馬くんだね、どれがいい?』

『じ、じゃあモンブラン!』

『はーい、最後は、杏果ちゃーんお目当のイチゴのタルトだよ〜』

『イチゴタルト!!』

その単語一つで杏果さんは復活した。

水を得た魚ってこんな感じなんだろうな。

何はともあれ各々が目当のものにたどり着けてよかった。

優斗先輩が入れてくれた紅茶とモンブランを手に机につこうとしたとき美月ちゃんがこっそり耳元に近づいてきた。

『冬馬くんが狙ってたのってモンブランでよかったかな?』

わざわざ聞きにきてくれた。女神様だ。

『うん、ありがとう』

『よかった』

にこりと微笑んで女神様は去っていった。

いつ気づいてだんだろう…そんなに欲しそうな顔してたかな…

もしそうだったら…と少し恥ずかしくなりながらご褒美を口にした。

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