第4話オセロ対戦③
『じゃあ次は杏果ちゃんと美月ちゃんの試合だね』
(杏果さん、美月ちゃんに勝てそうですか?)
杏果さんに小声で自信の有無を聞いてみる。
(あの琢磨が瞬殺されたんだ、自信は正直ない。でも負けるわけにはいかないんだ)
そう小声で言うと杏果さんは机に座り準備を済ませる。
『さぁ美月!私は琢磨のようにはいかないからな!』
『よ、よろしくお願いします!杏果先輩!』
『じゃあ試合開始〜』
杏果さん(黒)対美月ちゃん(白)の試合が始まった。
初手の杏果さんから順に石を置いていく。美月ちゃんは部長戦の時とは違い、少し考えながら石を置いているようだ。
『優斗先輩、杏果さんってやっぱり強いんですよね?』
『ん〜…その日次第…かな』
『と、言いますと?』
『杏果ちゃんは琢磨くんみたいに頭を使ってプレイするタイプじゃないんだ。どちらかと言うと感覚、第六感みたいなのでなんでもやっちゃうんだよ。だから琢磨くんにだって勝つこともあれば負ける事もあるって感じなんだ』
『今日の杏果さんはどうなんですか?』
『そうだね…さっきの琢磨くんとの試合を見る限りかなり調子はいいみたいだよ。琢磨くんにも大差で勝ってたし、何よりご褒美をかけた勝負だ、杏果ちゃんが本気にならないはずがないよ』
優斗先輩が言うように杏果さんは本気で、ただひたすら盤面を見て石を置いている。どうやらこちらの声は聞こえてないみたいだ。
〜数分後〜
『うぅぅ〜……』
お互い残りの石は一つのみで杏果さんの手番だが…
もうどう頑張っても杏果さんの負けは確実だろう。それにこの盤面って…
『これはまた見事に真っ白だね』
また美月ちゃんのストレート勝ちだった。
『か、勝てました〜』
『おめでとう美月ちゃん、今回も狙ったのかい?』
『ありがとうございます、優斗先輩。えっと、狙ったとかじゃないんですけど、杏果先輩の守りがすごく硬くって…時間がかかっちゃいましたけどギリギリでなんとか勝てました』
『なんとかじゃないよ美月ちゃん。これは完封したって言うんだよ』
『でもこのゲームって出来るだけ早く自分の石だけにするゲームじゃないんですか?勝敗が決まらない時は石の多さで競うのは分かったんですけど…』
その場にいる全員が凍りつく。
どうやら完封することが前提で今まで戦っていたらしい。
『あ〜…杏果ちゃん、大丈夫かい?』
『うわぁ〜冬馬〜仇取ってよ〜』
『ま、無理ですよ!』
先輩2人の心を見事に砕いた美月ちゃんに勝てる自信がまるでない。
『でも次の試合は冬馬くんと美月ちゃんだからね…なんというか…頑張って』
目を合わせずに応援された。結果が見えてるんだろう。
『あの…美月ちゃん…手加減してね?』
『やり方がわかんないけど…とりあえず頑張るね!』
『じゃあ、試合開始〜』
開始の合図とともに冬馬は自分の石(黒)を置く。
大丈夫、自己流必勝法で粘ってせめて完封だけにならないように立ち回れれば…!
そんな意気込みで戦った数分後、盤面は綺麗に真っ白になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます