第3話オセロ対戦②
冬馬対部長のオセロ勝負が始まり数十分後。
『か…勝てた〜』
冬馬は椅子からずりずりと崩れた。
結果は白(冬馬)36黒(部長)28で冬馬の勝利だった。
『途中まで勝てていたんだがな〜。最後の一手で持っていかれたか…』
自己流ながらも必勝法を使ってこのギリギリの勝負。と言うかレベル高くない?部長に大差で勝った杏果さんに勝てる気がしないんだけど…
『じゃあ次は美月ちゃんと琢磨くんの勝負だね』
ホワイトボードに結果を書き終えた優斗先輩が次の対戦カードを発表する。
『や、やったことないですけど…がんばります!』
『美月ちゃん初めてなの!?』
『はい!でも冬馬くんと部長さんの勝負を見て大体のルールは理解したので!』
『琢磨〜手加減してやんなさいよ〜』
『残念だけど初心者だろうと容赦はしないよ美月ちゃん。俺も久しぶりに優斗のケーキを食べたいからね』
部長は美月ちゃん相手にも手を抜かないつもりのようだ。流石にルールを理解しても美月ちゃんが勝つのは難しいんじゃなかろうか…
『じゃあ試合開始〜』
しかし、試合は予想だにしない結果になった。
試合が始まると初めの一手を美月ちゃん(黒)が置いた後、部長(白)が置いたのとほぼ同時に美月ちゃんが次の石を置いていた。まるで部長がそこに置くことを予知していたかのように。
そんな感じで試合が進んだと思ったらいつの間にか盤面は黒の石だけになっていた。
この試合、時間にすると5分もかかっていなかった。
黒(美月ちゃん)13白(部長)0
まさかのストレート勝ち。
『これはこれは…』
『えっぐいわね…』
『ねぇ美月ちゃん…本当にオセロ初めて?』
『はい、初めてですよ?』
キョトンとした顔で振り向いてくる美月ちゃん。
『部長が置いたのとほぼ同時に置いてたけどあれは…どう言うこと?』
『あれは冬馬くんと部長さんの試合を見て参考にしたからできたんですよ。次部長さんならこう置くんだろうな〜って。それで最終的にこの形に持っていくためにどんな置き方をすれば良いか考えて置いてたんですよ』
えへへと照れながら微笑んでいる美月ちゃん。
どうやら試合が始まる前から勝負は決まっていたみたいだ。
と言うか美月ちゃんってもしかして天才?と言うか化け物でしょこれ…これで初めてなの?
チラッと杏果さんの方に顔をやる。
そこには口元をひくつかせながら苦笑を浮かべている杏果さんがいた。
『部長…大丈夫…ですか?』
恐る恐る聞いてみる。
『あぁ…冬馬くん…置いたそばからすぐ置かれてね…気がついたら試合が終わっていたよ…何を言ってるかわからないだろ?…俺もね何をされたかわからないんだ…生きたまま捌かれる魚になった気分さ』
ふふふっと虚な表情で笑っている。
見事に心が折れて、いや、砕け散っている。
冬馬にできることは合掌しかなかった。
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