第2話オセロ対戦①

放課後、いつものように部室に向かう冬馬。

『あ、美月ちゃん』

部室の入り口近くで美月ちゃんの後ろ姿を見かけ声をかける。

『冬馬くん、お疲れ様です。冬馬くんも今からなんですね』

『うん、今日も依頼来てるかな』

扉に手をかけ、ガラガラと扉を開ける。

部室では杏果さんと部長が机に向かって何やらボードゲームらしきものをやっていた。

『この俺が…この俺が…負ける!?』

部長がワナワナしながら呟いている。

近づいてみると、

『オセロ…ですか?』

盤面を見ると圧倒的に黒が劣勢だった。どうやら黒が部長らしい。

『実は今日依頼箱に依頼は入ってなくてね、それで部屋を整理してるとオセロを見つけてね、せっかくだったらご褒美をかけて勝負しようってなったみたいなんだよ』

そう言いながら優斗先輩は2人分の紅茶を用意してくれた。

『せっかくだから2人も参加してみるといいよ。参加賞もあるから負けても損はしないよ』

『ちなみに今日のご褒美ってなんでしょうか?』

美月ちゃんが聞きたいことを聞いてくれた。

『1位の人から順にこの中から好きなものを選んでもらいます。』

そう言うと優斗先輩は冷蔵庫から箱を取り出し中身を見せてくれた。

箱の中には、大きな栗が乗ったモンブラン、綺麗な苺のタルト、おそらくぶどうを使ってるであろうムースのケーキの3種類が入っていた。

『最下位の人にはこれです』

そう言うと小さな袋に入ったクッキーを見せてくれた。

よく見るとクッキーの真ん中だけ色が変わったキラキラしたものになっている。

まるでガラス細工のような

『そのクッキーとっても綺麗です。もしかしてスタンドグラスクッキーですか?』

『美月ちゃんよく知ってるね。その通り。ちなみに参加賞もこのステンドグラスクッキーだからみんな貰えるからね』

にっこり微笑みながら優斗先輩はステンドグラスクッキーが入った小袋を冬馬達に配った。

どうやら参加は必須のようだ。

『じゃあ2人とも頑張って優勝目指してね』

せっかく参加するなら1位を目指したい。

狙うはご褒美の中のモンブランだと冬馬は心に誓った。

『ま…負けた…』

どうやら一回戦の部長対杏果さんの試合が終わったようだ。

結果は白(杏果さん)42黒(部長)22と大差をつけて杏果さんが勝っていた。

『ご褒美がかかってるんだ、こんなところで負けるわけにはいかないのさ。私は勝って苺のタルトをいただくんだ!』

どうやら杏果さんのお目当ては苺のタルトのようだ。

『屈辱…この俺がよりにもよって杏果なんかに…』

『部長いつになく悔しそうですね』

『元々この勝負は琢磨くんが杏果ちゃんに仕掛けたからね。杏果ちゃんを本気にさせる為とはいえご褒美がかかった杏果ちゃんは強かったよ』

いつの間にかホワイトボードに書かれていた総当たり表に優斗先輩が今回の結果を書いていた。

優斗先輩も案外乗り気らしい。

『じゃあ次は冬馬くんと琢磨くんの対決といこうか!』

オセロなら少しだけ腕に覚えがある。幸いにもこの勝負一番な敵になりうる杏果さんの狙いは冬馬とは別のもの。最悪2位になれてもモンブランは確実。

椅子につき盤面の真ん中に石を置き準備をする。

『冬馬くん…悪いが後輩に負けるわけにはいかないんだ。全力でいかせてもらう!』

『すみません部長。今回の勝負僕も負けたくないんです』

『冬馬!がんばれよー!』

『冬馬くん、部長さん、どっちも頑張ってください!』

『じゃあ2人とも、勝負開始だ!』

今ご褒美をかけた戦いの火蓋が切って落とされた。

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